「ちょい読み」するなら日曜日。
雑談の小ネタに、書評のススメ。

クリエイティブディレクター/嶋浩一郎さん

    PROFILE

    1968年、東京都生まれ。1993年博報堂入社。
    コーポレート・コミュニケーション局で企業のPR活動に携わる。01年朝日新聞社に出向。
    スターバックスコーヒーなどで販売された若者向け新聞「SEVEN」編集ディレクター。
    02年から04年に博報堂刊「広告」編集長を務める。2004年「本屋大賞」立ち上げに参画。
    現在NPO本屋大賞実行委員会理事。06年既存の手法にとらわれないコミュニケーションを実施する「博報堂ケトル」を設立。
    カルチャー誌「ケトル」の編集長、エリアニュースサイト「赤坂経済新聞」編集長などメディアコンテンツ制作にも積極的に関わる。
    2012年東京下北沢に内沼晋太郎との共同事業として本屋B&Bを開業。

    写真 嶋浩一郎

    書店の平積み本コーナーと新聞の書評は似ている

    新聞って全部読む必要なんてないんですよ。気に入った記事をいくつかピックアップして読むだけでいい。本もそう。だから「ちょい読み」は大賛成。

    「ちょい読み」におすすめしたいのは、日曜日の書評。自分自身が本屋の経営者だからかもしれませんが、書評は書店の平積み台を眺めるのに似ている。平積み本のコーナーからは、世間の人が今求めている情報の暗黙知が読み取れる気がするんです。大型の書店なら平積みの回転率が良いので、自然科学から小説まで多種多様な本が連日ものすごい勢いで入れ替わって、まるで世の中を映す鏡のよう。新聞の書評はそれと同じような感覚があります。

    日々刻々と変化していくストレートなニュース記事ももちろん大事だけど、それとは別のちょっと引いた視点からでしか見えない問題や関心もある。それが書評には色濃く出ると思う。

    写真 嶋浩一郎

    普段とは違った視座・視点で世の中を見られるようになる

    先日の書評では作家のトーマス・マンがナチスドイツに迫害され、亡命中に書いた日記本が紹介されていました。昨今のヨーロッパでナショナリズムやポピュリズムが台頭しているという事象に対し、ストレートニュースとは違った座標軸から「あ、そうなんだ」と思わせる視座・視点を与えてくれる内容でした。

    「スナック研究序説」の書評も面白かった。飲み歩くのが好きな僕が最近感じていたのは、飲み屋は今後、スナックのようなキャラ立ちのする個人の店の時代になっていくだろうということ。書評を通じてタイミングよくスナックを学術的に論じた本に出会って「あ、やっぱりそうか」と妙に納得してしまいました。こんな風に書評は硬軟取り混ぜて世の中の動きを、全然違うところから見せてくれ、新しい気づきがある。

    ところで、皆さん。書評って本を読むためのガイドみたいなものだと思っていませんか? でもそれは誤解。僕は書評だけで終わってもいいと思っているし、知ったかぶりをするために読んでもいい。正直に「書評に書いてあったんですけどね」と切り出したら、逆に「勉強してるなぁ」って感心されるかもしれないし(笑)。雑談の小ネタを仕入れるのにももってこいです。

    お笑い芸人で学者でもあるサンキュータツオさんが紹介していた「歯痛の文化史」なんか、古代はぐらつく歯をおさえるために顎にカエルをくくりつけたり、真っ赤に焼けた鉄で虫歯を治療していたなど、驚愕(きょうがく)と爆笑の小ネタが満載でした。今この時代になぜこの本なのか全くもって意味不明ですが、きっと現代が抱える何かとつながっているはずです(笑)。