スペシャルインタビュー

家庭学習
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その日一日を生きる子どもたちのために、新聞の情報を日々しっかり活用しよう!

すべての子どもたちが自分らしくありのままに学び合う学校を描いた、話題のドキュメンタリー映画「みんなの学校」のモデルとなった大阪市立大空小学校では、すべての教職員が一丸となって子どもたちに寄り添っています。そして、子どもの前に立つ大人たちは、子どもたちに関わる社会の動きに敏感であるようにと考えていた初代校長の木村泰子先生は、関連する新聞記事を職員室で共有していたのだとか。そこで、今回は木村先生に学校現場での新聞の活用についてお伺いしました。

子どもに関わる大人は、子どもが生きる社会について知ることが大切

大空小学校では、毎週月曜日の一時間目、全校児童が体育館に集まり、「全校道徳」という授業を行っています。この授業は、校長の一方的な話に終始しがちな全校集会を、子ども同士が主体的に学び合える時間にしたいと知恵を絞った結果生まれた学びの時間です。

全国道徳では「正解のないテーマ」を毎週決めて、1年生から6年生がまぜこぜのグループとなり、テーマについて自分の意見を出し合います。その後、今度はグループで話し合ったことをリーダーである6年生が自分たちの言葉で発表するのです。こうしてさまざまな意見を聞くことで子どもたちは、自分たちの周りにいる「みんな」を意識できます。いろいろな友達がいて、いろいろな発想をする。そしてそれを互いに認め合うことで、子どもたちは大きく成長できるのです。

この全校道徳ではしばしば新聞で報じられた出来事をテーマにしています。そのため私たち教職員は、子どもたちに何を問うべきかを日々考え、さらにはそのテーマについて、子どもたちの言葉をしっかりと受け取るため、新聞記事に目を通すのが日課でした。私が校長を務めていた時は、毎朝出勤するとまずは、子どもに関わる新聞記事を中心に目を通し、教職員全体で共有すべき記事があれば、すぐにコピーして全教職員に配っていました。

新聞の良いところは、気になったらすぐに共有できるところです。インターネットにもたくさんの情報がありますが、紙の新聞であれば、日付やコメントなどをその場でさっと書いて、すぐに共有できます。共有というのはデジタルの方が得意と思われがちですが、すべての人が同じタイミングで共有するのは学校の現場では実は難しいのです。手元に記事があれば、あとで読みかえすこともできます。インターネットの記事は次々に更新され、流れて行ってしまいます。

さらに在職中は、子どもに関わることは、地域全体で共有したいという想いがあり、スクールレターやHPでの情報発信の際に、新聞記事を活用していました。そうしていると、今度は地域の人たちが、「校長先生、今朝の○○の記事読んだ? 学校行ったら読んどき」と教えてくれるようになり、子どもたちの問題を地域がしっかりと共有する空気ができあがりました。

すべての子どもたちは自分の言葉で語るチカラをもっている

子どもたちはその日一日を大切に生きています。そのため、毎日子どもたちの前に立っている私たち大人は、その日に情報をその日のうちに有効活用しなければなりません。毎朝、新聞などから得られる情報を共有していなければ子どもの前には立てません。子どもたちは教職員から情報を得ることで、視野が広がります。そして、そうした話題を家庭に持ち帰り、家族に問いかけます。そうしたことが家族のコミュニケーションのきっかけになることもあるでしょう。そのため、子どもに関わる大人は、子どもたちが生きている社会の情報をリアルタイムで共有することが重要だと思います。

新聞を読むことは知識を身に付けることとは少し違います。学力を向上するためでもないと思っています。子どもたちは、知識があるから発言するのではありません。どんなに拙かろうが、自分の意見を言ってもいいという空気がそこにあるかが大切です。すべての子どもたちはきちんと自分の言葉を持っています。大空小学校が目指しているのは、まさに一人ひとりの子どもたちが自分で考え、自分の言葉で発言できること。「わかりません」という言葉だって、それは立派な意見です。それを否定する雰囲気があるから子どもは口を閉ざすのです。

私たち大人が「子どもたちが生きる社会」という目線で新聞を読むことで、さまざまな問題に目を向けることができるようになるでしょう。新聞では、子どもに関わるさまざまな事件や事故、そして政策などが毎日のように報道されています。そうした出来事を日々知ることで、子どもたちのために大人は何をすべきかを改めて問うべきではないでしょうか。

忙しい毎日の中で、たくさんある記事の中からいま自分に必要なテーマを意識することも大切です。毎日配達される新聞に目を通すことで、自分と自分が関わる社会との共通の話題を見つけ、それを周りの人にも共有し、時には対話してみる。そうした積み重ねが、「社会の中で生きる」ということではないでしょうか。

木村 泰子(きむら・やすこ)
大阪市出身。武庫川学院女子短期大学(現武庫川女子大学短期大学部)卒業。「みんながつくる みんなの学校」を合言葉に、子ども、保護者、地域住民、教職員一人ひとりがつくる大阪市立大空小学校の初代校長を9年間務めた。「すべての子どもの学習権を保障する学校」として、その取り組みを描いたドキュメンタリー映画「みんなの学校」が話題となった。2015年春に退職し、現在は全国各地での講演活動、教員研修、執筆などで多忙な日々を送る。著書に『不登校ゼロ、モンスターペアレンツゼロの小学校が育てる 21世紀を生きる力』(水王舎)などがある。
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