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宇宙。それは常に私たちの頭上にあり、海よりも広く空よりも大きい、永遠の謎に包まれた存在です。

そんな宇宙に魅入られ、研究し続ける人々が、ここ日本にもいます。

今回は、人気漫画である「宇宙兄弟」でもおなじみ、宇宙航空研究開発機構、通称JAXA(ジャクサ)の研究員である村上豪さんにお話を伺いました。

人生のOB・OG訪問、第3弾です!

【今回の登場人物】

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村上豪 東大博士号取得の後、JAXAの研究員に。大学の非常勤講師などをしつつ、探査機の開発に関わっている。

mishima.pngミシマ R大学4年生。就活生だけれど、胡散臭い営業マンのような出で立ち。

miyagawa.pngミヤガワ F大学4年生。お金持ちのお嬢様。自宅にヨットがある。

人には見えない景色を見る。水星探査機ベピコロンボに乗せた一台のカメラ

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miyagawa.png村上さんはJAXAの研究員をされているんですよね。さっそくですけど、村上さんの研究ってどういったものなんですか? 宇宙に関する仕事って、スケールが大きすぎて、全くイメージが湧かないんですけど......

murakami.pngうん、そりゃそうだよね(笑)

JAXAには色々なプロジェクトがあって、僕がいるのは主に惑星探査をやっている部門です。

で、今メインで研究している一つは、水星探査をする「ベピコロンボ」というプロジェクト。これはJAXA単独のプロジェクトではなくて、ESA(欧州宇宙機関)と一緒にやる、壮大な国際協力プロジェクトなんだ。

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mishima.pngあ、僕知ってます!! ベピコロンボって名前、新天地に行くという意味でコロンブスから付けられてるんですよね??

murakami.pngえっとね、違うね?

ベピコロンボは、スイングバイという宇宙機の方向転換の方法などを考案した物理学者、ジュゼッペ・コロンボの愛称から付けられているんだ。

mishima.pngすみません......その探査機を作っている、ということですね。それにしても、数ある惑星の中からなぜ水星を探査しているんでしょう?

murakami.png水星って、太陽に一番近い惑星ということもあって調査が難しく、まだ全然解明されていない惑星なんだ。以前に二度探査機が送られているんだけれど、まだまだ分からないことが多い。岩石質の惑星であったり、太陽系内で固有の磁場を持っていたりと、地球と似たような性質もあるということは分かっているから、今回はそういうメカニズムを解明するための観測、ということになるかな。

僕の専門は、探査機に載せる「カメラ」。研究は大学院生の頃からやっていて、大学時代から開発に関わっているカメラが乗っている探査機が、ベピコロンボなんだ。

miyagawa.pngカメラって、やっぱり私たちが想像しているような一眼レフみたいなカメラとは違うんですよね。

murakami.pngうん、全然違うんだ(笑)

一眼レフのような、いわゆる僕らが一番想像しやすいカメラが撮っているのは、「目で見える光」。

カメラにも色々な種類があって、僕は紫外線で世界を見れるカメラを普段は開発しているんだ。ベピコロンボに載っているカメラは、目で見える光を写すカメラなんだけれど、その光の中から、さらにオレンジ色の光だけを取り出して見るっていうものなの。

miyagawa.pngへえ〜。でも、なんでオレンジ色の光なんですか?

murakami.png良い質問だね! 30年くらい前に、ベピコロンボが行く水星にはナトリウムの薄い大気が広がっているということが初めて観測されたんだ。高速道路のトンネルとかに入ると、たまにオレンジ色の明かりが点いてるでしょう? あれはナトリウムランプといって、元素が光っている光。

つまり、普通の光で見たら月のような惑星である水星も、ナトリウムが出すオレンジ色の光だけで見たら、見え方が違うということもある。実際にオレンジ光で見たら、ブワーッとナトリウムのガスで覆われているのが見えて、しかも時間によって変化したりするのが分かったんだ。その理由がまだ解明できていないから、今度はその現象だけをムービーで撮るカメラを載せて打ち上げるの。これが今僕がやっていること。

実はこのプロジェクト、すでに2000年くらいから検討が始まっていて、まだ打ち上げていないんだ。水星に到着するまでは7年半くらいかかるから...... 大掛かりなプロジェクトのひとつになるね。

miyagawa.pngとても時間がかかるんですね...... 子供を育てるような(笑) ベピコロンボは、打ち上げてからどれくらいの期間活躍するんですか?

murakami.png予定は一年。

一同 たったの一年......!?

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©池下章裕

murakami.pngそう。24年間も作って、たったの一年。

それは衛星にもよるんだけれど、それだけ水星が過酷な環境だっていうことがあるかな。太陽に一番近い惑星だから、なにせ気温が高くて。水星の昼って、430度くらいあるんだよ。夜は-270度。一応、そういう環境にも耐えられるように設計されてはいるから、2、3年は活躍してほしいけれど......

miyagawa.png探査機の観測期間が終わったら、回収して地球に戻ってくるんですよね?

murakami.pngいや、僕らの探査機の最後は水星の表面に衝突してしまうんだ。通常の人工衛星も、観測を終えたら宇宙ゴミにならないように大気圏に落として燃やすのが基本になっているんだ。

自分のカメラが大気圏に落ちたのがニュースになったのを見て、なんかちょっと感慨深い気持ちになったりする。カメラが宇宙で頑張って、最後は大気圏で燃え尽きる、と。

mishima.pngそれはちょっと寂しいですけど、ロマンあるなぁ...... !!

2本の映画が、小さな少年の未来を決めた

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miyagawa.png村上さんは、小さい頃から宇宙に関わる仕事をしよう!って思っていたんですか?

murakami.png割とそう。本当に目指したのは、小学校5年か6年の時くらいかなぁ。

mishima.pngえー、早い!!! 僕なんて、自分が何になりたいかもまだはっきりしてないのに......

murakami.png結構はっきり覚えていてね。最初のきっかけは、2本の映画だったんだ。一つは「2001年宇宙の旅」っていう、スターウォーズよりもずっと古い宇宙の映画。

で、もう一個はターミネーターなどで有名なアーノルド・シュワルツェネッガー主演の「トータルリコール」っていう、火星に人が住んでいる時代を描いたSF映画。

火星は空気があまりないから、建物の中でしか暮らせないという設定なんだ。それなのに、敵に主人公が攻撃されて、建物の外に放り出されてしまう。ピンチに陥った主人公は、結果的に昔のエイリアンが残したリアクターという動力装置を発動させて、火星の北極と南極にある大気が閉じ込められた氷を溶かす。火星全体に酸素が行き渡り、なんとか主人公は生き延びるっていう話なんだけれど......

当時マセガキだった僕は「そんなバカな!!!」と(笑)

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一同 (笑)

murakami.pngいくらSFとはいえ、やりすぎだろと思って(笑)信じてなかったの。

それで、ちょうどその時に小学校で、「何か一個テーマを取り上げて新聞を作りなさい」っていう宿題が出て。それで、「トータルリコール」のことを書こう!と。あのSF映画の嘘を暴いてやる!ってね。

mishima.png小学校5、6年で? 豪気ですね(笑)

murakami.pngでしょう。当時小学生だった僕は、自分なりに図書館の惑星図鑑とかで火星のことを調べたんだ。そうしたら、確かに本に、火星の北極と南極には氷があるのが観測されているということが写真付きで載っていた。

そして、大昔、火星には空気がたくさん存在していて、大気が氷の中に閉じ込められている可能性が十分にある、ということが図鑑に書いてあったんだ。

当時の僕はものすごくショックを受けて、「やっべ、宇宙おもしろ!!」って思ってから、ずっと宇宙一筋。だから当時の卒業アルバムとかを見てると、「火星の石持って帰って来たらちょうだい」とか、「月に行ったら手振ってね」とか寄せ書きがしてあるんだよ(笑)

頭が良くないと、宇宙に関わる仕事はできないの?

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mishima.png村上さんって、東大卒ですよね。

murakami.pngまあ、そうだね。

mishima.pngストレートですか?

murakami.pngうん、ストレート。

一同 すごい!!

murakami.png大学で宇宙の勉強をするとなったら、とりあえず「天文学専攻」っていうのがあるところに行けばいいんだろう、くらいに思っていてね。あまり真面目に調べて進路を決めるような高校生ではなかったから、全大学の専攻が載っている冊子をめくって、天文学って名の付くところ、......つまり東大とか、東北大とかを目指そうと思った。

僕の高校は駒場で、運良く東大も近く、目指す人も多かったから一緒になって勉強していたよ。

miyagawa.pngやっぱり、頭が良くないと宇宙に関する仕事はできないんでしょうか......

murakami.pngそれはまた、別の話だね。

僕の場合は研究職なので、もちろん実際その研究・開発を行うのに学力は無関係ではない。でも、JAXAって色々な職種があって、当然文系職もあるし、事務職もある。だから、JAXAで仕事するっていう意味では、必ずしも学力が必要な訳ではないと僕は思っているよ。

もちろんあるに越したことはないんだけどね。それよりも、大事なことはあると思っている。

宇宙研究の最終的なゴール。それは、世界平和。

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miyagawa.png村上さんは、今後どういった研究を進めていきたいという希望だったり、夢はありますか?

murakami.pngまず一つは、ベピコロンボをなんとしても成功させたい。僕が作ったカメラで撮影された、まず一枚目を見たいな。距離が遠いから、データが送られてくるのがすごく遅くて、写真がゆっくりしかプリントアウトされないんだけれど、とにかくその一枚目を見るのがすごく楽しみ。

それで、それが終わったら、太陽系以外の惑星の調査をしてみたい。

この前、「博士と彼女のセオリー」っていう映画のモデルにもなったスティーブン・ホーキング氏が、超小型探査機を開発して、「太陽系外の惑星や生命体を探す」っていう計画を発表したんだ。太陽系以外へ調査に出るなんて、今まででは考えられなかったことが出来る時代になってきている。だから、自分が作ったカメラで、太陽系外の惑星を観測してみるということに、今とても興味があるんだ。

どこどこの星に、「地球と瓜二つの惑星が見つかりました!」ということになると、やっぱり宇宙人はいるかも、なんて思えたりするからね。

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mishima.pngそうなると、本当に面白いですね! では最後に、宇宙の魅力を教えて頂けないでしょうか?

murakami.png過去の文献を見ても、平安時代の人も月を見てきたことは明らかだし、人類は生まれてからずっと、「綺麗だな」と思いながら空を見てきたんだと思う。要は、言葉にできない魅力が宇宙にはあるんだ。

だからもっと言うと、宇宙のことをより深く知るのに、国や人種なんかは関係ないと思っている。国際協力はもちろん必要だし、「宇宙で面白いことをやっていることが世界平和につながったらいいな」なんて、そういう野望はあるよ。

だから、全世界の人が面白い!って思えるような計画や観測で、成果を出すのが僕の夢です。

miyagawa.png宇宙を研究することが、ひいては世界平和に繋がる、と!

murakami.pngオリンピックやW杯があって、世界各国と戦わないといけないっていう時には、日本中が団結するよね。同じように、世界が一つになるためには何と戦えばいいんだと考えた時に、やっぱりそれは地球の外なんじゃないかって。

僕らの研究は、すぐに人の生活の役に立つようなものではない。高い税金を使って研究させてもらって、その結果、最終的に世界が一つになる瞬間があったら、「少しは恩返しできたかな」って、ようやく思えるんじゃないかな(笑)

一同 (笑)

murakami.pngだから、これからも面白い研究や調査ができたらいいなと考えているので、少しでも宇宙に興味を持って、見守っていてほしいな!

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