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(インタビューに答える講談社の山崎英文・人事部副部長)

みなさん、こんにちは! マグロ部編集部です。

大学3年生の就活シーズンが近づいてきましたね。準備を進めだすと気になるのが、「採用担当者って学生に何を求めているんだろう?」ということではないでしょうか。講談社の人事部副部長、山崎英文さんにホンネを聞きました。出版業界を目指す方はもちろん、そうでない方にも役立つ考え方が盛りだくさんだったので、前編、後編の2回に分けてお届けします。

ジャッジの基準は。「作家の前に連れて行けるか」

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(画像はイメージです)

――本日はよろしくお願いします。「求める人材」「学生のどこを見ているか」をテーマにお話をお聞きできたらと思います。まず、講談社にとっての優秀な人材ってどんな人なんでしょうか?

正直言って、講談社の求める人材像って一つじゃないんです。これだけたくさんの本や雑誌をつくっていると、編集部、出版部など、それぞれが一個の会社みたいなもんなんですよね。だからファッション誌の現場で求めている人間像と、マンガの編集で求めている人間像、新書とかジャーナリズムの現場で求めている人間像って全然違うんですよね。

――志望者が多いジャンルで言うと、たとえばどんな人材が求められますか。

文芸、コミックの志望が多いのですが、どちらも作家さんと一緒に仕事することになるジャンルです。面接官をつとめる社員には「自分が担当する作家さんのところに連れていってもいいなと思う学生を次の面接に進めてください」と伝えています。

判断のポイントは場合によってはかわいげだったり、座持ちの良さだったり、知識が豊富とか、雑談力があるとか、なんでもいいんですが、ジャッジするところはサブの担当、後任の担当としてつれていけるか。人として一緒に仕事したいと思えるような誠実さ、かわいげ、ひたむきさみたいなところになってきます。

――てっきり「クリエイティビティ」とか言われるかと思っていました。

いや、あくまでクリエイトの本体は作家さんであって、我々編集者がそんなにとんがる必要はないんです。つくった側がいくらこの作品がすごいんだ、クリエイティビティが高いんだって言っても、その価値を決めるのは読者の皆さん。だから編集者っていうのは読者の目線に近い方がいいんじゃないかって思います。読者の代表として、完成前の作品に対して意見を作家さんに述べていく。それを受けて作家さんがさらにブラッシュアップしていくという形なので。あくまで才能を持っているのは作家さんであって、我々編集者はその才能をみがくのが仕事です。

皆さんが思ってるほどセンスとか創造力が問われているわけじゃない。まあ、ある程度の文章は書けないと困りますが、編集者が作家としてデビューできるすごい原稿をかけるわけでもないですから。

――ファッション誌だといかがでしょう?

ファッション誌だと作家さんではなくて色んなスタッフの方をとりまとめていく必要があります。カメラマンさん、ヘアメイクさん、スタイリストさん、モデルさん、フリーランスのライターさん。そういう人たちをコントロールしながら、「自分がつくりたいページはこういうものなので、力を貸して下さい」というお願いをしなくてはいけない。

新入社員の時は当然、一緒に仕事をする人たちは自分なんかよりも経験が上の人ですよね。そういう人に対して、「こういう写真を撮って下さい」とか「こういう服を集めて下さい」とか「こういうメイクをして下さい」っていうふうに、自分がつくりたいものを意識してディレクションしていかないといけないので、人を動かす力とか、この人のためだったら頑張ろうと思ってもらえるところがすごく大事になるのかなと思います。まずは一緒に働く人に対して心地よい人であるかどうかです。

編集者の気質。「ピコ太郎の動画で喜べる人が向いている」

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日本外国特派員協会で会見するピコ太郎さん=出典:朝日新聞デジタル

――どちらもコミュニケーション力が大事ということですね。

そうですね。また、本や雑誌、漫画を仕事として捉えることができているかどうかも重視しています。最近はドラマ化やアニメ化、映画化などの多面展開をしないと本が売れない時代です。今は「逃げるは恥だが役に立つ」がドラマ化されていますし、男性が読んでいた「進撃の巨人」は、アニメ化して女性ファンがつきました。「永遠の0」も男性向けでしたが、映画が岡田准一さん主演で女性向けにつくられていたことで、女性にもリーチを広げた。潜在的な読者を掘り起こそうと思ったら、このように、出版をビジネスに置き換えて考えようとしていることが大事ですね。

あとは忙しい仕事であるのは当たり前なので、出版社で働くことへの腹が据わっているかどうか。

――やはり忙しいですか。

作家さんとずっと仕事するということは、目の前の作家さんに対して自分の全てをささげるぐらいの覚悟がないとできないです。自分のことは二の次三の次で、作家さんのため作品のために力を捧げられるか、時間を割けるか。打ち合わせで、いいものができるまでとことんつき合うのか、早く帰ってテレビをみたいからと妥協しちゃうか。

これは私見ですが、そのためには惚れっぽくないとダメだと思うんですよね。惚れっぽくて他人のために尽くすのが苦にならなくて、あとはミーハー。そういう人のほうが編集者に向いていると思います。世の中で盛り上がっているものに対して自分もそれ面白いね、いいよねって言える人間じゃないとブームは作れないし、マスの喜びに共感できない人間が、発火点になるのは難しいんじゃないかなと思います。世の中でうけているものに対して「あれは別に面白くないよ」と斜に構えて評論家的に話している人は編集者向きではないと思うんです。ピコ太郎の動画をみて喜べる人のほうが向いていると思うんです。シンプルに楽しめるかどうかですね。

――仕事への腹が据わってるかどうかって、どうやってわかるんですか。

出版社はあこがれでエントリーしてくる学生さんがわりといます。「どうせ働かなきゃいけないなら、好きなことを仕事にしたい」という考え方です。そういう気持ちでとどまっているだけの人たちは働くことへの覚悟ができてないって思うんですね。好きなことを仕事にしても嫌なことは山ほどありますし、土日も仕事することも当然あるので。そういう人たちはエントリーシート(ES)でだいぶあぶりだせちゃいます。

――書き方で分かるものですか。

一つの設問に対して、「自分が会社に何を与えるか」という目線で書けている人はそういう覚悟ができていると思うんですが、「自分が会社にこういうことを求めている」という書き方をする人は覚悟ができてないなと思っちゃいますね。たとえば講談社に入りたい理由で、つくりたいもの、やりたいことが明確にあって、それにどういう価値があるのかを答えられる人は前者。そうではなくて、好きな雑誌があるから入りたいとか、好きな漫画が一番多いのが講談社だから入りたいという人は後者。志望動機に表れると思います。

良い学生とは。「攻めの面接でないと評価はあがらない」

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(画像はイメージです)

――良いと思う学生、困る学生の共通点ってありますか?

表裏一体になりますが、良いと思える学生さんって自分の言葉で伝えようとしますよね。ESにしても面接にしても。自分の頭で考えて、自分なりに必死になって自分の言葉で語ろうとする。困ったな、というかもったいないなって思う学生さんは、普段の自分を押し殺して、マニュアルトークで必死に自分をガードして、失点を防ごうとするESを書いたり面接をする人です。マニュアルを武器にすると他の人と差別化ができないので。

――マニュアル学生の特徴は?

話を聞いていると、「これ自分の言葉でしゃべってないよね」って分かるんですよね。完全にセリフを覚えてしゃべってますという感じになる。あとESの記述で、安易にその年の採用ホームページのキャッチフレーズを使っちゃったりとか。会社のホームページのいちばん目につくところにある単語をもってきちゃったりとか。それで内容が深ければいいですけど、そうでもなかったら「それって本当に真剣に考えてないでしょう」って感じます。

2017年春に卒業する学生の採用のときにESを読んでいたら、やたらと「ワクワクを伝えたい」「ドキドキを作りたい」っていうフレーズが多くて、これ最近流行っているのかなって思ったんですが、僕が採用ホームページに書いたメッセージでした。自分が書いていながら忘れてたんですけど。

すごく心ひかれて共感を受けたというならともかく、わりと安易に乗っかってるという印象を受けたんですよね。そうじゃなくて、「ワクワク」とか「ドキドキ」を自分のフレーズに落とし込んだらどういう言葉になってくるんだろう、と考えて欲しいんです。一回、自分というフィルターを通してアウトプットしたらまた違う形になると思います。

我々っていわば言葉を商売の道具にするというか、言葉を世の中に売っていく仕事をするわけです。それを志そうという人たちが、自分の人生の大一番に安易に人の言葉を借りたり、マニュアルに頼ったりするのは姿勢として違うんじゃないかなと思います。

――面接のなかで、「こういう学生は入社してから伸びそうだ」と感じることはありますか。

これも似たような答えになりますが、失敗をおそれないかどうかですね。攻めの面接、というか、失敗を恐れずに自分の言葉で自信を持って言ってくる人は基本は失敗をおそれていない。そうでなくて、マニュアルトークでがちがちにまとめて失点をできるだけ防ごうという人は失敗をおそれていると思います。

会社にはいってどちらが伸びるかというと前者だと思うんですよ。失敗をおそれない人間はどんどん打席に立って、三振したり凡打の山を築くんだけど、だんだんそこで自分のフォームを固めていく。失点をおそれている人間はせっかくの機会にも手をあげないで、遠くから打席に立っている人を見守るだけになっちゃう。そしたらいつまでたっても、失敗はしないけど成功もできないと思うんですね。最初は新入社員だから、若手だからというので目立った仕事ができなくても多少は許されるんだけど、気づいたらあっという間に30歳になっていて、いま自分になにができるのかとなったときに、何の経験も人脈もないとなっちゃう。

もちろん、講談社の採用試験は年に1回しか受けられないので、失敗したくないという気持ちはわかるんですけど、面接は減点方式ではなくて加点方式なので、点数をとりにいかないと評価はあがっていかないです。

(後編は、山崎さんのキャリアや仕事観、そして今学生がすべきことについてお聞きします

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