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今年もあっという間に2月に入り、学生の皆さんは春休みが始まった頃です。どこに遊びに行こうか、旅行を計画しながらワクワクする一方で、大学3年生はそろそろ本格的に就職活動を始める時期。

そんな就活生のために、朝日新聞朝刊の連載「カイシャの進化」の記事をもとに、働き方や企業を研究するシリーズ第2弾。今回クローズアップするのは、幻想的な空間作りや丁寧なサービスで人気の温泉旅館やホテルを運営する星野リゾートです。

第1弾はカルビー株式会社!
【新聞で企業研究】ポテチの新商品を生むのは女性課長!カルビー株式会社のダイバーシティとは

(本文中の引用は全て「朝日新聞 2016年10月31日朝刊 カイシャの進化」に掲載されているものです)

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無駄なコストを削減し、1人辺りの生産性を高める「マルチタスク」の働き方

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"フロント係はフロントだけ、清掃係は清掃だけ。そんなホテルの一般的な働き方とは違い、星野リゾートでは大半の社員が、フロント業務、客室清掃、朝夕食の調理、配膳サービスの4種目をこなす。社内で「マルチタスク」と呼ばれる取り組みだ"

今でも多くのホテルが分業制を採用しているように、かつて星野リゾートでも分業制を採用していました。しかし分業制では、担当している業務によって、何もしない空白の時間ができてしまい、従業員ごとの就労時間に差がありました。例えば、調理担当のスタッフは朝食後から夕食まで業務が無く、客室清掃担当は昼間の3時間しか業務が無いという状況だったのです。

"「1部屋30分以内が目安。無心で動いています」。この日は満室。同僚と分担し、チェックインが始まる午後3時までに全26室を清掃した。 夕方、動きやすい黒のシャツとズボン姿から接客用の制服に着替え、夕食配膳サービスについた。「ゆっくり動き、話すことを意識しています」"

旅館「界 松本」で働く4年目の社員、磯辺あやかさんは業務によってガラリと人が変わります。客の目に入らない清掃などの業務は、真剣な顔つきでテキパキと行い、接客業務では、先程の真剣な顔つきと同一人物とは思えないほど柔和で人当たりの良い笑顔で業務を行います。

ホテル利用客の行動は、朝チェックアウトし、昼過ぎにチェックイン、夜に夕食を取るというようにパターン化しているので、磯辺さんは時間帯によって異なる業務をこなします。

星野リゾートはマルチタスク制を導入することで、分業制で生まれていた空白時間による無駄なコストを削減するとともに、従業員1人辺りの生産性を高めることに成功したのです。

星野リゾート代表、星野佳路さんの地方旅館改革

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星野リゾートはのはじまりは長野県軽井沢町の地方旅館でした。1991年に星野佳路(よしはる)さんが代表に就任すると、今までの経営方針を見直し、ホテル事業として自社の不動産は持たず、不動産オーナーから依頼を受けて運営に特化する事業戦略を展開。「リゾート運営の達人」という企業ビジョンを掲げました。

その際に、今まで採用していた分業制を廃止して、マルチタスクを取り入れました。運営の実績をオーナーに認めてもらうためには、働き方を見直す必要があったのです。マルチタスク制を採用した理由として、以下のように語っています。

"技術を身につけた社員がフル回転すれば、少人数で営業でき、収益力を挙げられる。チェックイン対応や夕食、レクリエーションなど同じ客に同じ社員が接する時間が長くなり、サービスの質も上がると考えた" 

分業制に慣れたベテラン従業員からは反対の声が上がったものの、1993年から始めた新卒採用にともなって若い社員への教育に力を入れ、会社を成長軌道に乗せます。宿泊業全体で正社員率は5割と言われるなか、星野リゾートの正社員率は約8割。従業員ひとりひとりのスキルが求められた結果、しっかりと教育できる正社員が多くなり、正社員率が他の企業と比べて高くなったのです。

「ノウハウを磨くのに10年かかった」と星野さんが語るように、この路線変更により、すぐに成果が出たわけではありません。しかし、マルチタスク制をはじめ、働き方を改革し、粘り強く従業員の理解と実践を促し続けた結果、国内ではトップクラスの評判を誇る旅館やホテルを数多く手がける総合リゾート運営会社としての地位を確立したのです。

日本ホテル事業の暗黒時代から教訓を得た「マルチタスク」

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日本のホテル会社は1980年代に相次いで海外に進出し、世界的なホテルチェーンを築こうとしましたが、バブル崩壊の影響により撤退したという歴史を持っています。90年代、日本長期信用銀行から融資先の不動産会社に出向し、ニューヨークのフォーシーズンズホテルの経営に携わった沢柳知彦さんは、日本ホテル事業が海外展開を失敗した理由を以下のように分析しています。

"国内の潤沢な資金を背景に、不動産価格の高い時期に投資してしまい、運営面では実力不足で投資に見合う収益を上げられなかった"

星野リゾート代表である星野さんは、日本の大学を卒業後、1983年にアメリカのコーネル大学のホテル経営大学院に留学。その後、日本航空のホテル子会社で3年間勤務し、日本ホテル業界の衰退を目の当たりにしてきました。

この経験は、星野リゾートの社長に就任後に活かされ、「どのようにホテルを運営するのか」を考えるきっかけになりました。そして辿り着いたひとつの答えが「マルチタスク」によるコスト削減と、サービス向上だったのです。

培ってきた「日本旅館」の運営力で海外進出を狙う

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今後、星野リゾートはグローバル展開を視野に入れています。今まで培ってきた日本旅館としてのおもてなしが外国人に評価されるかどうかを試すために、星野リゾートは「星のや東京」を大手町にオープンしました。ホテルの外観は18階建ての高層ビルですが、建物内に足を一歩踏み入れると、日本風情を感じさせる内装になっていることが特徴です。

星のや東京は、フロントカウンターでチェックインし、客室内でスリッパに履き替える一般的な西洋型ホテルとは全く異なっています。星のや東京の利用客はまず玄関で靴を脱いで預けます。さらに館内や部屋、エレベーターに至るまで、多くの床が畳張りになっているなど、日本旅館らしい造りになっているのです。

こうした日本旅館の文化やおもてなしを追求する一方で、海外の宿泊客にとって快適性を損なわないために、細かいサービスにもこだわっています。純和風の部屋ながら敷布団ではなくベッドを用意したり、着物は簡単に着られるジャージー素材のものにするなど、日本らしさと快適性を両立させる工夫が凝らされています。

アメリカ北西部シアトル市近郊から、新婚旅行で日本にやってきたジェフ・カノフさんとモリー・ディアルさん夫妻は「伝統的でモダン。最高にクールだね」「日本文化にどっぷり浸ることができた」と太鼓判を押します。

東京で展開している現在の戦略について、代表の星野さんは以下のように語っています。

"「日本のホテルがなぜ米国まで来て西洋型ホテルをやるのか。まねごとでしかなく、旅館をかっこよくする以外に海外で認められるチャンスはないと思った」" "「『今日はすしを食べよう』という感覚で、世界で旅館に泊まる日が来る」"

星野リゾートは、これまでに培ってきた運営力と、旅館らしさを武器に、まずは外国人旅行客の多い東京で勝負しています。東京で成功すれば海外にも進出するとのこと。もしかしたら、数年後には海外でも本格的な日本旅館に泊まることができるようになるかもしれません。

同じ環境でも、働き方次第で「やりがい」は増す

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星野リゾートでは、マルチタスクを採用することで、コスト削減やサービス向上に繋げることができました。また、従業員としても、マルチタスク制によって多くの業務に関わることで、会社全体を見通すことができ、より会社に貢献できていることを実感しやすくなります。さらに、利用客と接する時間が多くなることで、「ありがとう」と直接声をかけられることが増えれば、満足度も上がるでしょう。

会社で働く上で、「やりがい」は仕事に愛着を持って取り組むために必要な要素です。就活生の皆さんは、これから企業研究をする上で、社員がやりがいを得られているのかどうか、働き方も含めて調べてみるといいかもしれません。働き方を調べておくことで、会社に入った後の自分の姿もイメージしやすくなるので、その会社で働きたいかどうかの判断材料にもなるはずです。

今回の記事も、朝日新聞朝刊の連載「カイシャの進化」から紹介させていただきました。新聞では毎日様々な企業の情報が掲載されています。企業研究の際には、新聞は重要な情報源になるので、ぜひ参考にしてみてください。

第1弾はカルビー株式会社!
【新聞で企業研究】ポテチの新商品を生むのは女性課長!カルビー株式会社のダイバーシティとは

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