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個人間でのやりとり(貸し借りをする、売り買いをする、提供するなど)を通して形成される新しい経済のカタチ「シェアリングエコノミー」。

「個人間でのやりとりなので、トラブルに巻き込まれそう」と消極的な人もいる一方で、「もしかしたらお小遣い稼ぎができるかも」と積極的な人もいるでしょう。

でも、「エコノミーというけれど、みんなでモノを共有していたら経済は成長しないのでは?」という素朴な疑問が......そもそもシェアリングエコノミーってなんだろう?

そう考えたRE:GRIT編集部では、シェアガールこと石山アンジュさんの元へ、わかっているようで実はよくわからない、シェアリングエコノミーのお話を聞きに行ってきました。シェアリングエコノミーは、私たちの生活をどう変えてくれるのでしょうか?

石山アンジュ
1989年生まれ。内閣官房シェアリングエコノミー伝道師。一般社団法人シェアリングエコノミー協会事務局 渉外部長、クラウドワークス経営企画の傍ら、世界各国のシェアサービスを体験し「シェアガール」の肩書で海外・日本でメディア連載を持ちながら、シェアリングエコノミーを通じた新しいライフスタイルを提案するシェアリングエコノミー伝道師。

シェアリングエコノミーのある生活

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ー本日はよろしくお願いします。石山さんは「シェアガール」として活動されているようですが、そもそもシェアガールって何をされているのでしょうか?

石山アンジュ(以下、石山):シェアガールって私が勝手に名乗っているのですが(笑)、「シェアリングエコノミー」という難しい経済概念を、生活者目線でわかりやすく伝えることを活動の軸としています。

具体的には、シェアリングエコノミーによる、新しいライフスタイルをメディア連載や講演活動を通して世の中に提案。一方で、シェアリングエコノミー協会では、シェアリングエコノミー業界全体の法律的な課題や利用者の安全性に対するルール整備など、国全体で健全にシェアリングエコノミーが広まるよう、取り組みを行っています。

今年の3月には、政府(内閣官房)より伝道師として任命をいただきました。

ー『内閣官房シェアリングエコノミー伝道師』ですよね! 
ところで、シェアリングエコノミーを通じたライフスタイルとは、なんでしょう。

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石山:日本は、人口減少やグローバル競争が進んでいます。その中で、今までの大量生産・大量消費から経済的豊かさを追い求めることは、今後難しくなっていくと予測できるでしょう。

そこで、私はモノやお金の所有量で測るような経済的豊かさだけでなく、人と人との本質的な繋がりや経験を通じた「誰もが心から豊かだと思える社会の実現」が大事と思い、人生のミッションとして掲げています。

シェアリングエコノミーを通じて個人が他の個人へモノや体験を提供するような動きが広がっていくことで、生活者(消費者)と生産者の境界をなくし、生産・消費に対する価値観を個々人が見直すきっかけになるのではと考えています。

人と人との信頼関係が成り立つ上で行われる個人主体の経済社会、ともに助け合う共助の社会をつくっていく必要がある。そのために、発信・啓蒙活動をしているんですね。

世界各国のさまざまなシェアサービスを体験し、研究している私だからこそ、シェアリングエコノミーが浸透した生活やライフスタイルはどれだけ魅力的なのか伝えるべきだと思いました。

シェアサービスは民泊・ライドシェア以外にもサービスが存在?!

ーシェアサービスって、たとえばAirbnbやUberのようなサービスは最近耳にしますが、それ以外にも存在するのでしょうか......? カーシェアリングなどもシェアリングエコノミーと呼べるのですか?

石山:もちろん存在します。シェアサービスは主に「空間」「モノ」「移動」「スキル」「お金」の5つに分けられます。

個人間でサービスを享受し合うCtoCモデルと、カーシェアリングなど企業が複数の個人にモノを提供するBtoCモデルのどちらもシェアリングエコノミーに該当します。サービスの形態も多様で、直接対面するオフライン型、ネット上でやり取りが完結するオンライン完結型のサービスに分けられます。

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石山:たとえば料理のシェアリングサービスであるミールシェア(Tadaku)。「日本に住んでいる外国人のご自宅で料理を習いながら交流を楽しむシェアサービス」です。ホストの自宅にお邪魔して、料理を一緒につくったり、その国ならではの調理器具に触れたり。つくった料理を食べながら、文化について話したりすることで、まるで海外にホームステイするような体験ができます。

ほかにも、長距離の移動を予定している個人と相乗りした個人を結び、交通費(ガソリン代や高速費)の実費をコストシェアする相乗り型シェアサービス(Notteco)や、自宅のワンちゃんを旅行時などに地域の愛犬家に預けることのできるペットの預かりあいシェアサービス(Doghuggy)など、さまざまなサービスが日本発のスタートアップで生まれています。

モノを貸し借りするだけのサービスもありますが、この事例のように、個人間同士でコミュニケーションを取れるサービスがあることもシェアリングエコノミーの特徴でしょう。

シェアリングエコノミーは日本の社会課題を解決することができる

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ーシェアサービスにはいろんな種類があるんですね......! プロジェクト単位でお金を募るクラウドファンディングや、家事、ベビーシッターのようなサービスもシェアリングエコノミーに含まれるんですね。
素朴な疑問ですが、こんなに何でもかんでも「共有」する社会になってしまうと、日本は経済成長できないんじゃないですか。それって、日本にとって良いことなのでしょうか。

石山:シェアリングエコノミーは、今日本が抱えているさまざまな社会課題を解決する可能性があります。

先ほど申したように、日本はこれから人口減少が加速していきます。

そのため政府は、人口が減少していく中での生産性の向上や、あらゆる個人が社会参画できる一億総活躍社会をつくっていく必要があると言われています。シェアリングエコノミーが普及することによって、たとえば個人が自分の経験や知識、所有しているモノやスペースを活用し、これまでとは別の形の経済活動、社会参画が可能になるでしょう。

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石山:リタイア後のシニア層や、フルタイムでは働けない主婦の方々が社会参画できる機会へ。

そして、企業で働かれている方も、副業や兼業といった2枚目の名刺の選択肢となり、さらに活躍の場を広げることができます。

また、地方創生という文脈でも可能性があります。人口流出に伴う税収減で財源に困っている自治体が増えてきていますが、何でも行政が地域をつくる「公助」の仕組ではなく、個人間でともに助け合うことのできる「共助」の地域創生が期待できます。

ー個人間で助け合う仕組みですか。すでに実績などありますか?

石山:たとえば、UberやNottecoはすでに路線の廃線など公共交通が減少している過疎地域で地域の人がドライバーとなり地域間で移動を助け合うモデルの実証実験を開始しています。

地域の子どもの預かりあいのシェアサービス(Asmama) は、待機児童の問題の解決や、女性の社会参画の促進にも繋がりますね。

その他にも、遊休資産、資源の有効活用により、空き家問題や環境問題の解決、過剰に生産・消費を繰り返してきた文化に代わる、ゆるやかな消費文化の創出、そして個人がサービスの提供者になることによる、新たな体験やイノベーションの広がりが期待できるでしょう。

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ーなるほど、ここまでさまざまな社会を変えうる可能性があるのですね。一方で生活者にとって、シェアリングエコノミーが広がるメリットはなんだと思いますか。

石山:シェアサービスを活用することによって、モノが安く買えたり、自分にないモノを使えるなど、コスト的メリットが生活において生じることが考えられます。しかし、それよりも私が注目したいのは、個人間でのサービスが広がることによって、人との繋がりも広がること。そしてそうした交流を通して新しい体験が得られ、新たな豊かさをも感じられる機会が増えることです。

たとえば、海外に行くたびに個人の自宅に泊めてもらう民泊を利用することで、世界中に友達が増えていったり、子どもの預かりあいのシェアサービスが広がることによって地域で顔がわかるお隣さんが増えたり。シェアサービスが浸透することで、今よりも新たな豊かさを感じられるライフスタイルを送れるかもしれません。

ーシェアサービスを使うことで「人と人とが繋がっていく」ということですね!

シェアリングエコノミーで、新たな心の豊かさを

「新たな豊かさを得ることができる」

シェアガール・石山アンジュさんは、経済成長率が停滞していても、人々の生活の質は確実によくなると言い切ります。

今から約50年前は、固定電話普及率は100人に7.5人(参照:公益財団法人 日本科学技術振興財団・科学技術館)。「何軒かで1台の電話を共有」することが当たり前の環境でした。

物価は高く、親子3世代が同じ場所に住んでいて、引っ越しをすることも少なかった時代。「近所でお醤油を貸し借りする」ような助け合いが当たり前の生活です。そんな"古き良き日本"の新時代バージョンが、シェアリングエコノミーによって、新たに形成される日も遠くないかもしれません。

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