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「子どもの教育にコミットしたい気持ちはある。でも、仕事が忙しく子育てに参加できない......」「子どもとどう接すればいいのか、わからなくなるときがある......」。そんな悩みを持つお父さん、いませんか。"イクメン"という言葉があるように、男性の教育や子育てへの参加は一般的になりつつありますが、まだまだ妻任せ、という方は多いはず。どうすればスマートに子育てや教育にコミットできるのか......

そこでおすすめしたいのが、「TED」の動画。TEDとは、「ideas worth spreading(広める価値のあるアイディア)」をスローガンに、様々な分野の講演を行う米国の団体。かつて故スティーブ・ジョブズも登壇したこともあるその人気講演が、インターネットに無料で配信されているのです。

ご紹介するのは子育て本の作家や、いじめの影響を訴える詩人など6人の子育て論。いずれも自身の経験から導いた考えや行動をお話しています。どれも聴衆を飽きさせない話術で、短いもので4分、長いもので18分ほど。通勤時や休憩時にさくっと聴いて、実践したり家族会議で提案してみてください。妻があなたを見る目が変わるかもしれません!

1: 「幸福は親には高すぎるハードル」 ジェニファー・シニア


再生時間:約18分

まずご紹介するのは、作家、ジェニファー・シニアさんの講演。6歳の子どもの母親でもある彼女は、書店で溢れかえる教育論や子育てに関する本を見て違和感を感じます。どれも善意で出版され素晴らしい本であるけれど、どれも「救い」ではない。ただ、子育てに苦悩している親たちの「パニックの象徴」ではないかと。

なぜ私たちは、子育てで悩むのか。その原因のひとつとして「"育児とは何か"の答えを知らないまま、育児の舵をとっている」ことだと指摘します。

子どもにどんな未来が待っているかを予測することはできません。だからどんな未来にも対応できるように「準備」させておきたい、どんなことでもしてやりたい、と親は思います。しかし、どれだけ十分に行動したとしても、本当にすべての義務を果たしたのか、つねに不安に駆られます。そんな不安を煽るように、あらゆる子育て本が本屋に溢れているというのです。

親は、誰もが子どもの幸せを願います。しかし、子どもの幸せを願うあまり、多くの親たちは誤った道徳的責任を勝手に背負ってはいないだろうか。いろいろと悩み、考えた末に、彼女は3つのキーワードにたどり着きます。

「礼儀」「勤労」「愛」

これらは子育てについて古くから伝わる教えであり、日常的な親と子の営みを通して育んでいくことができること。子育ての本質とは何か、そのひとつの回答が約18分の講演の中で表現されているのです。

正しい教育が何なのかわからない時代だからこそ、育児が上手くいかないからといって子どもや自分を責めないでほしい。「子育てに一生懸命にならなければ」と、苦しくなっているすべての親へ視聴してもらいたい一本です。

2: 「一枚一枚の写真で綴る父娘の絆」 スティーブン・アディス


再生時間:約4分

コンサルティング会社のCEOを務めるスティーブン・アディスさんは、4分という短いスピーチの中に父と娘の絆の深め方を凝縮しています。

アディスさんは、妻が撮ってくれた何気ない写真をきっかけに毎年娘と旅行に出かけ、同じ場所で写真を撮るようになります。これまで自分は娘を撮るばかりだったのが、通行人に撮影をお願いすることで自分も撮られる側になったのです。

その体験が人生を大きく変えるきっかけになりました。ある旅行で通りを歩いていると娘が凍りついたように立ち止まり、ある店の赤い日よけを指差したそうです。それは娘が幼い頃に見つけてすごく気に入った人形のお店。娘は当時の気持ちを詳細にアディスさんに話したそうです。そこでアディスさんは、作るべき最も大切なものは"思い出"だと気づかされたのです。

「写真は時間を閉じ込め、自分たちが過ごした時を思い返し、肉体面も精神面でも、年々どう変わって来たのか見直す方法でもある。なぜなら同じ写真を撮っていても、私たちの考え方や見方は変わっていくものだからです。」
「そうして私は娘の目を通して、世の中を見るようになりました。」
「そしてともに過ごすこの特別な時間を大切にし、1年中待ち望むようになりました。」

アディスさんは、そう自身の体験を語ります。共有のできる「思い出」は、親と子どもの深い絆になる。だからこそ子どもを撮るだけではなく、子どもと一緒に被写体になることをすすめます。それがたとえ特別な旅行でなくとも、と。

これを見たら、もっと子どもが愛おしくなるはず。家に帰ったらすぐに試したくなる子育て論のひとつですね。

3: 「今でもまだ」―いじめに悩む美しい君たちへ シェーン・コイザン


再生時間:約12分

もしも子どもが学校でいじめられたら......ニュースを見るたびに考えたくないけど考えてしまうテーマです。

詩人、シェーン・コイザンさんは、子どもの頃に受けたいじめの体験を語ります。ここで語るのは殴る・蹴るなどの身体的ないじめについてではありません。"ひどいあだ名"で呼ばれるいじめ。彼がつけられたあだ名は、「オタク」「デブ」「変態」「おかま」など。これらは今なお彼の心の中に深い傷となって残っています。

そんないじめに苦しむ彼に、周囲は
「何を言われても痛くもかゆくもない」
「ひどいあだ名も、骨折のようにつらくはない」
と励まします。しかしその言葉は彼を励ますことはなく、
「僕はもう誰にも愛されないと信じて育ってきた。一生一人ぼっち」
とまで思わせてしまったのです。

コイザンさんは同級生である女性と結婚し、ふたりの子どものいる父親。そんな愛する妻も幼い頃につけられた"外見を揶揄するあだ名"に、今でもまだ苦しめられていると告白します。

彼は、いじめに苦しむ人たちへ、こう訴えかけます。

「もし自分の美しいところが見当たらないのなら、良い鏡を手に入れもっと近くでじっくり見てほしい」
「傷つけられたのは事実だ。けれど、僕らの人生は、ずっとずっと続く綱渡りだ。苦しみは少なく、美しさが多い綱渡りなんだ」

もしも自分の子どもがいじめに遭ったとき、何と言えばいいのか。この講演には、いじめる人々を圧倒的な弁論で強烈に非難すると同時に、いじめに苦しむ人々に手を差し伸べるやさしさが交差します。

「彼らが間違っているんだ。でなければ、なぜ僕らがここに残っているのはなぜなんだ?」。聴衆を引き込む、詩人ならではの圧倒的な表現力と、彼の力強い問いかけに、勇気づけられるはずです。

4: 「赤ちゃんは語学の天才」 パトリシア・クール


再生時間:約10分

ワシントン大学の教授であり、音声言語病理学を研究するパトリシア・クールさんは、自身が研究する"子どもの言語習得"について語っています。グローバル化が進み、海外で活躍する機会が身近になった今、我が子に「外国語を習得させたい」というお父さんにおすすめしたい一本です。

この講演でのキーワードは「子どもは7歳までは語学の天才だが、それ以降は能力が落ちていく」とする"言語習得の臨界期"。子どもの中でも特に"赤ちゃん"が言語を習得するとき、脳内で何が起きているのかを、最新の神経科学の分野から説明しています。

彼女は赤ちゃんが"自分の言語の音を習得する時期"について実験しました。その実験の結果、6カ月の赤ちゃんはあらゆる言語の音を聞き分けられることがわかりました。

なぜ大人は同じことができないのか。それは「大人は文化に縛られ、文化外の言語は聞き分けられないからだ」とクールさんは説明します。赤ちゃんは言語を統計処理して学習しますが、大人は子どもの頃に形成された記憶の中の表現に支配されて統計処理することができないため、新しい言語(音)を学習しづらいのです。

では、子どもはいつから大人のように「文化に縛られ、音を聞く」ようになるのか。その答えは、最初の誕生日を迎える前、つまり、生後10~12カ月の時期。この臨界期内なら、赤ちゃんはひとつの言語だけでなく、複数の言語も学習する高い可能性を示したそうです。

また、こんな興味深い研究結果も発表されています。それは、「テレビなど音声だけの学習では、言語の取得はできない」というもの。赤ちゃんが言語を習得するには、「音声と共に人間が話している姿を見ることが大切だ」と、彼女はいいます。

"赤ちゃんの頃に勉強しておけば、バイリンガルになれたかもしれないのか!"。思わずそう思ってしまうクールさんの講演からは、子育てに関する多くのヒントを得ることができます。多国語が話せれば、将来、さまざまな可能性を見出せるはず。もしも生まれたばかりのお子さまがいるなら、ぜひ外国語の"音"に触れ、人が話している姿を見せる機会をつくってみてはいかがでしょうか。

5: 「子どもたちに "I can" と教える」 キラン・ビア・セイシ


再生時間:約10分

革新的な教育法で注目されるインドのリバーサイドスクール インディアの創業者、キラン・ビア・セイシさんの講演は、「伝染という良い言葉があります」というスピーチから始まります。テーマは、子どもに"できる"と思わせるにはどうすればいいのか。"I can"の精神の伝染方法です。

学校で実践しているのは「実社会の中で子どもに学ばせる」こと。そうすることで

・「気づき」違いを学ぶ
・「できる」自分が変わる
・「自信」変革をみちびく

の3つの学びを子どもたちは得られるといいます。労働体験などを通じて、大人と対等に向き合う機会を作る。その経験の中で子どもは自ら学びを得る。そのことが、子どもに「しっかりとした信念」を持たせるというのです。

学校の貴重な授業の時間を労働体験に割くなんて、算数や理科、英語など本来、子どもたちが学ぶべき学業がおろそかになるのではないか。そう思われるかもしれません。しかしセイシさんは、「子どもが自信を持つことは、学業への取り組みにも発揮される」といいます。実際に同校の子どもは、インド国内でもトップクラスの成績を収めたそうです。

この講演の中で、彼女はこう繰り返します。
「大人には、子どもの"秘めた可能性"や"気持ち"、そして"意識"に気づいてほしい」
「大人が子どもたちを信頼して、"You can"と言えば、子どもたちは成し遂げられる」
と。

大切な子どもを守りたい。子どものうちは学業を頑張ってほしい。どれも親心です。しかし、時には「大人が子どもを信頼」し、「大人と同じように接する」こともひとつの教育。大切なのは、子どもに"できる"精神を伝え、引き出すこと。子どもの可能性を広めたいお父さんは、ぜひ見てください。

6: 「我が子を成功させる、やりすぎない子育て」 ジュリー・リスコット=ヘイムス


再生時間:約14分

"過保護"という言葉を聞いて、ドキリとするお父さんはいませんか。

最後にご紹介するのは、スタンフォード大学の元学生部長で現在は作家として活動するジュリー・リスコット=ヘイムスさんの講演。テーマは過保護。 "過度な保護"が子どもの成長にどんな影響を及ぼすのか、教えてくれます。

リスコット=ヘイムスさんは、子どもを過度に手助けすることは、"子どもの自己効力感"を奪うリスクがあると指摘します。"子どもの自己効力感"は親の努力が生むものではなく、子ども自身の行動が結果に結びついて初めて生まれるものだと。

"過度な保護"の一例として、親が管理して「有名大学」に入学させることを挙げています。子どもの幸せな将来を思っての行動かもしれませんが、その行動が親の顔色を伺う子どもにさせたり、「大学に進学するための成績が自分の価値」と思わせ、「"親の"思い描く進学ができなければ、自分に未来はない」と子どもに感じさせてしまう。そんなケースが多いそうです。

彼女は「子どもの進路に親が首をつっこむ必要はない」と言っているのではありません。彼女が伝えたいことは、子どもの成功の定義を、子どもの自意識を犠牲に決めてはならない、ということ。"親の願う進学"や"親の期待する成績"を子どもに押し付けるのではなく、子どもの"熱意"や"自主性"を信じて自分で自分の道を選ばせることが大切だと。

講演の最後に、子どもの自主性を育む具体的な接し方について、ふたつの方法を提案しています。ひとつは、「家事を手伝わせる」こと。「イヤな仕事だけど、誰かがやらなきゃ。それなら自分がやろう」「全体の向上のために自分が頑張ろう」と、将来働く上で糧となる精神を養ってくれます。

そしてもうひとつは、「今日はどんな1日だった? 今日よかったことは何?」と、毎日、聞くことです。そのささやかな会話を通して親は子に愛情を示し、子どもが自分を愛する心を育むことが子どもの成功につながるのだそうです。

子どもの成功は必ずしも"有名大学に進学"し、"優秀な職業に就くこと"ではない。大学や職業は本人が決めること。そして親は「子どもが自ら輝くことをサポートする」ことが役目だと、彼女は繰り返し主張します。

子どもの幸せ、成功とは何か。子どもの将来を考え、受験を控えているお父さんは、彼女の講演を聞いてみてください。今後の子どもとの接し方や教育の指針ができるかもしれません。

子育てに不安を感じるのは当たり前。子どもを信じることが大切だ

「そうは言ってもまだ判断もできない子どもだ」。そう思われるお父さんもいるかもしれません。しかし子どもは思うよりいろいろなことを考えるもの。それは今回ご紹介したプレゼンターがそろって口にしていることです。

子育てに不安を感じても大丈夫。大切なのは過保護にならず、子どもの意思や自主性を信じて教育すること。ぜひそのことを頭の中におきつつ、子どもと接する機会を作ってください。

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