ando-eye-origin.JPG

多くの人は自分が上司になると、「部下に嫌われたくない」「自分はあんな上司には絶対ならない」という思いで、面倒見のいい上司になってしまいがちです。しかし、「識学」を提唱する安藤氏は、「リーダーはいいお兄ちゃんになってはいけない」と断言します。

では、どうすれば「本当に良いリーダー」になれるのでしょうか。その問いに迫るために、株式会社識学代表の安藤広大氏に、リーダーが心得るべきマネジメント術について聞きました。

安藤広大(あんどうこうだい)
早稲田大学卒業。新卒で大手通信会社へ入社、後に大手企業の主要子会社役員を務める。2013年に「識学」と出会い独立し、2015年に株式会社識学を設立。多くの企業の業績アップに寄与し、識学の導入企業を年々増やしている。著書に『伸びる会社は「これ」をやらない!』(すばる舎)がある。

業績を上げたければ、まずリーダーが変わるべき


ando1.JPG

----これまで安藤さんは「識学」で数々の経営者や管理職の組織運営における課題を解決してきたと思うのですが、そもそも「識学」とはどういった学問なんですか?

安藤:人が物事を認識して行動に移るまでの間を意識構造と言います。「識学」は、この意識構造を解明した学問です。人が物事を認識してどう行動に移るのかを解明すれば、人がどう認識や行動を誤るのかを紐解くことができます。

認識の誤りを誤解や錯覚と読んでいるのですが、要は人がどのように誤解や錯覚を起こすのかを紐解いた学問が「識学」です。組織で誤解や錯覚が生じる原因の多くはリーダーの言動にあるので、「識学」を活用してリーダーの言動を修正すれば、組織運営で生じる誤解や錯覚を解消することができるのです。

マネジメント術1:いいお兄ちゃんにならない

----具体的にリーダーの言動を修正するには、どうしたらいいのでしょうか?

安藤:よく背中で引っ張ったり、部下に寄り添ったりする人がいるのですが、リーダーは決して「いいお兄ちゃん」になってはいけません。リーダーはチームを勝利に導く責任者として、勝つためのルールを決める存在で、メンバーはそれを守る存在です。それが部下と同列になってしまうという事は、その関係が崩れるという事になってしまいます。

----「部下を褒めなさい」と書いてあるマネジメントの本をよく見かけるのですが。

安藤:簡単に褒める行為はダメです。誤解や錯覚を生み出します。部下を褒めるという行為は、リーダーが求める当たり前の基準がそれより下にあると部下が認識することになるので。たとえば、売上目標を100%達成した部下が褒められたら、当たり前の基準はそれよりも下になってしまいます。つまり、簡単に褒めるということは、部下の基準を下げ続けるということなんです。

マネジメント術2:定性的な評価をしない

ando2.JPG

----多面評価など、定性的な評価もしてはいけないのでしょうか?

安藤:それは一番やってはいけない例ですね。基準も曖昧だし、誰から評価されているかもわからないじゃないですか。誰から評価を得なければいけないのかを明確にしてあげないと部下は迷ってしまう。

たとえば、自分が評価していない部下が多面評価で表彰されたとするじゃないですか。そうすると、その表彰された部下はもう上司の言うことを聞かなくなりますよね。だって、表彰されて自分が正しいと思っているんだから。

私は前職で70名ほどの部下をマネジメントしていた時期がありました。当時は自分なりに、育成も組織運営も上手くできていたと思っていたんです。でも、実際は部下が育っていなくて、僕が抜けた途端に組織が上手くまわらなくなってしまったんです。その原因は、求める基準を明確に決めていなかったことでした。求める基準が曖昧なので、部下は僕の言われた通りに頑張っていればそれで良かったので、「どうすれば目標を達成できるかを自分で考えて遂行する」必要がなかったんです。

マネジメント術3:基準を決めて、評価する


ando3.JPG

----評価基準を決めることが重要なんですね。

安藤:その通りです。リーダーの仕事は「基準を決める」「評価する」のふたつだけと言っても過言ではありません。リーダーはチームの基準を決定して、しっかりと守れているかどうか、事実にもとづいて評価するのが仕事です。「あの人は毎日遅くまで頑張っているよね」といった、仕事に対する気持ちや姿勢による定性的な評価ではなく、「今月〇〇件の訪問目標に対して、〇〇件訪問出来た」といった、事実にもとづいた定量的な評価です。

もし、定量面の評価ではなく、定性面の評価が重視される体制だと、部下はいかに頑張っているかなどのアピールだけがうまくなってしまいます。

----目標を達成できない社員は、ずっと評価されないままになってしまいますが?

安藤:評価基準を達成できない人がいたら、次は達成できそうな基準を設定しなおせばいいんです。なぜ達成できなかったのかを考えて、その人が達成できそうな基準に再設定する。その基準を達成できたら評価してあげる。そうすれば、その人がずっと評価されない状態にはなりません。部下を評価するだけではなく、適切な基準を決めることもリーダーの大切な仕事なんです。

マネジメント術4:部下が成長を実感できる環境をつくる

----「評価なんてどうでもいい」と思っている部下がいた場合はどうしたらいいのでしょうか?

安藤:部下に「ここにいたら成長できそう」と思わせるのもリーダーの仕事です。今の社会には「競争してはいけない」とか、「他人と比較評価してはいけない」という風潮が少なからずあるので、評価されることから逃げてきた人が多いんです。評価されないと、人は成長を認識できないんです。

でも、成長を継続的に認識できれば、誰もが「次はもっとこうなりたい」と思うはず。だから、リーダーはきちんと部下が評価される環境をつくる必要があるんです。そうすれば部下は成長するし、成長を感じられる環境に身を置き続けてくれるでしょう。

マネジメント術5:部下と会社の"未来"にコミットする

ando4.JPG

----成長する環境をつくることで、会社で働き続けてくれる。リーダーとしてこれ以上嬉しいことはないですね。

安藤:そうですね。そして最後に、絶対に忘れてはいけないのが、「リーダーは会社や部下の"未来"を見る必要がある」ことです。部下が成長しなければ売上は上がりません。売上が上がらなければ従業員の給与も上がりません。なので、リーダーは常に未来を見据えた言動をとらなければならないんです。

もし、部下にとって大変な状況であっても、その状況が部下や会社の成長にとってプラスになるのであれば、リーダーはその状況を維持するべきです。たしかに、部下からすると大変だと思いますが、辛い状況を乗り越えたとき、部下と会社は圧倒的に成長できます。

部下の居心地ばかり気にしている人はリーダーをやめた方がいいでしょう。リーダーが気にするべきは現場の空気感ではなく、部下や会社の"未来"です。それを絶対に忘れてはいけません。

----リーダーのあるべき姿、しかと心得ました。本日は本当にありがとうございました。

(取材:田尻亨太、執筆:鎌田淳生)

photo by

この記事が気に入ったら

仕事もプライベートも、もっと「やり抜く」ためのメディア