仕事力~働くを考えるコラム

就職活動

「それ、自分を活(い)かす選択ですか」
古市 憲寿が語る仕事―2

就職活動

「就活」で迷走する仕事選び

将来への不安は、誰も拭えない

若い人のおよそ8割は、今の暮らしに満足しているというデータがあります。「今日よりも明日が良くなるとは思えない」という諦めが、若者の生活満足度を上げているのかも知れません。しかし、いくら未来を諦めているとは言っても、生きるためには仕事をしていく必要があります。多くの人は「就活」の時期に、人生の決断を迫られることになります。社会のことをまだよく知らない時期に、これは簡単ではない選択です。

今は一見すると、働き方の選択肢がとても多い時代です。少し前にはやった「ノマド」という言葉のように、会社に縛られずに自由に働いてもいい。友人とアプリを開発して起業してもいい。でも、実際に起業して成功する人はほんの一握り。しかも、社会人経験なしにいきなり起業したところで、経営を続けるのは大変です。会社法が変わってから、法人を設立することだけなら本当に簡単になりました。しかし、会社を維持させようと思ったら別です。会社を経営するというのは社会とつき合うことに他ならないからです。ノマドや起業が「自由」な働き方というのは大間違いです。取引先の納期に合わせたり、むちゃな要望に応えたりと、誰かに「使われる」仕事であることに変わりはありません。

ただ、僕自身は就活で一般企業に入るという選択をしませんでした。友人と会社を持ちながら、大学院にも通い、最近ではこうしてメディアに出たり、本を書いたりしています。一つだけの道を選択することが怖かったんです。大企業に入れば安定している分、窮屈かも知れない。友人とのベンチャーだけではリスクもある。一方で、専業の研究者になるつもりもありませんでした。少子化の時代です。大学の数はこれからどんどん減っていくでしょう。当然、大学所属の研究者の数も減っていくし、待遇も悪くなっていく。そんな世界に魅力を感じませんでした。だから、自分が後悔しない範囲で、最大限リスクヘッジになるような進路を選びました。自分が納得した選択をすることが一番大事だと思います。

高度成長期の幸運は終わった

日本は成熟した社会になりました。成熟社会の特徴は、若者ではなく高齢者が力を持つところ。急激に変化する社会なら、それに追いつける若者が力を持つことがありますが、今の日本は、昔のやり方を続ける「おじさん」や「おじいちゃん」がいまだ権力を握る社会です。だとしたら、彼らを味方につけるしかありません。

僕の友人は、ほとんどの企業で内定をもらえたそうです。友人の面接必勝法は、「その会社の現状を嘆きつつ、ちょっと前の時代を褒めること」。1次面接では10年ぐらい前の社風を褒める。最終面接では数十年前の昔話を役員と熱く語る。その上で最近の会社の方針に若干の疑問を呈しつつ、「私はあの頃のような雰囲気を取り戻したいんです」と話すそうです。すると決まって「我が社では君のような人材を待っていたんだよ」と絶賛されたと言います。このやり方がどこまで一般化できるかは分かりません。ただ、大企業に入るにしても起業するにしても、日本で仕事をする以上は、「おじさん」や「おじいちゃん」と仲間になって仕事をしていくのが正解だと思います。(談)

ふるいち・のりとし ●社会学者。1985年東京都生まれ。若者の生態を的確に描出し、クールに擁護した著書『絶望の国の幸福な若者たち』などで関心を呼ぶ。「日本学術振興会 育志賞」受賞。若年起業家や、戦争博物館、保育園の在り方など現代日本の課題を掘り下げる著述活動が注目されている。著書に『だから日本はズレている』など。最新刊の『保育園義務教育化』では女性が置かれた理不尽な状況を描き、その解決策を示した。
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