仕事力~働くを考えるコラム

就職活動

「それ、自分を活(い)かす選択ですか」
古市 憲寿が語る仕事―1

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日本は、エリートに甘い社会

企業に守られる人生は続くか

日本は、エリートに甘い社会だと思うんです。一度大企業や優良企業に入ったら、めったなことではクビにならない。そして、仮に同じ仕事をしても、正社員と非正規ではまるで待遇が違う。しかもデフレが続いたから、給料が大して上がらなくても同じくらいの生活水準を維持できてしまった。だから、さして上昇志向を持たなくても生きていける。社会的に恵まれているエリートほど苦労しなくてもいい、というのは不思議な社会だと思います。

でも、それが本人にとって幸せかと言うと、また違うと思うんです。一つの組織に長くいると、だんだんとそこでの価値観を疑わなくなり、社会からズレていくことがあるからです。そしてそのズレに気づく機会のないまま一生が終わっていく人もいるでしょう。

ある企業は、一つの案件を通すために稟議(りんぎ)がとにかく多い。その度に係長から課長に、課長から部長にと伝言ゲームのように説明のための会議が開かれる。一つの意思決定を行うために膨大な時間を費やすし、現場の感覚や情報がゆがんで伝えられることもある。一見すると非常に滑稽ですが、そのプロジェクトが失敗した時に誰も責任を問われないという意味では、よく考えられた仕組みでもあるわけです。

幸運にも優良企業に入社できて、その会社が、自分が定年退社して年金をもらうくらいまで存続できると信じられる人は別に構いません。自分のズレに気づかずに終わる一生も、悪くないと思います。

だけど、会社って意外と潰れるんですよね。40年前、大学生に人気だった企業の中にも、会社更生法の適用を受けたり、吸収合併したりした会社が多くある。もし自分の所属する会社に不安を感じるとか、自分が違うフィールドで活躍したいとかという気持ちがあるなら、自分の会社のルールだけではなく、別のルールで生きられるだろうかと考える必要があります。

自分に合う物差し探しを

よく「あの人は仕事ができる」「仕事ができない」という話をしますよね。でも「仕事ができる」の定義って意外と難しい。なぜなら「仕事」というのは多くの場合、地位や人脈に依存しているからです。自分で「仕事ができる」と思い込んでいる人も、社内の肩書や社内人脈の力が大きいのかも知れない。果たしてその人が会社を飛び出してもなお評価されるかというと、そうではない場合も多い。特に、大企業にいる人ほどそうかも知れませんね。独自のルールや慣習が多い歴史のある企業での常識は、世間の非常識ということがよくあります。

もし転職を考えるなら、自分の本当に得意なことを知っておく必要がありますよね。自分の得意なことというのはなかなか自分だけでは分からないけれど、特に会社外の人との交流の中では、自分の強みに気づくと思います。もしかしたら親にロングインタビューをしてもいいかも知れませんね。そしてトライ&エラーを繰り返すことも大事だと思います。自分にとって何がストレスなくできることか、何が本当に得意なことかは、他者に評価されながら現場の経験で学んでいくしかないからです。僕自身、こんなに滑舌が悪い人間がテレビやラジオに出るようになるとは思ってもいませんでした。(談)

ふるいち・のりとし ●社会学者。1985年東京都生まれ。若者の生態を的確に描出し、クールに擁護した著書『絶望の国の幸福な若者たち』などで関心を呼ぶ。「日本学術振興会 育志賞」受賞。若年起業家や、戦争博物館、保育園の在り方など現代日本の課題を掘り下げる著述活動が注目されている。著書に『だから日本はズレている』など。最新刊の『保育園義務教育化』では女性が置かれた理不尽な状況を描き、その解決策を示した。
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