仕事力~働くを考えるコラム

就職活動

「光る目標が人を本気にする」
國中 均が語る仕事―4

就職活動

人と同じでは馬群に沈む

発想の限界は作らなくていい

私の若い時代は、何もかも自分の手で機械類を作らなければならなかったので、逆に内部構造をよく知ることができました。しかし今は、コンピューターのスイッチを入れれば自動で動く部分が大幅に増えた。それは優れた装置だけれど、ブラックボックスのため、自分の技術で工夫をする余地はほぼありません。だから研究のテーマや仕入れてくる機械がみな決まり切ってしまい、「君の研究はプラモデル作りか?」と私は言いたくなります。

きっと多くのみなさんの仕事でも、システム化やマニュアル化が進んでいることでしょう。それを使えば効率的で、失敗も少ない。そうやって仕事はルーチンワークとなる。大切なのはここからです。一通り勉強してできるようになったら、次は、自分ならこれをどう超えられるかという、アイデアを発想する癖をつけるのです。どんなにささいなことでもいい、人とは違うことを考える努力を続けてください。職場の仲間がひざを打つような、キラッとひらめく目標と方法が見つかれば賛同者が必ず現れます。

例えば研究のやり方でも、細々と周辺問題を幾つか解決しても意味がない。テレビ番組「仮面ライダー」に登場する犯罪組織ショッカーの手下の戦闘員を100人、1000人とやっつけるより、問題の真ん中にいる首領の首を狙えということです。こういう高いゴールを設定し、それを実現するためにこんな新しい方式で挑戦する、という道筋を示し理解してもらわないと仲間を募れない。

あなたが、今仕事をしている組織の中で3人の仲間ができれば社内でチームを作れます。米国などでは、いいアイデアを考えつくと個人でスピンアウトするケースも多いですが、それでは仕事の規模が小さくなりがちです。日本人の強みは、チームで協力して働くのが好きなことだと思いますし、それが国の強さでもあると感じています。組織内で人とは違う最先端を担い、貢献していけるのは相当に面白いと思いますよ。

私は、人生好きなだけ働く

2014年12月には、小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星イトカワよりもさらに遠いリュウグウに向けて出発しました。到着予定は18年夏で、およそ18カ月滞在して20年の末ごろに帰還する計画です。なぜ、私が人生を懸けて宇宙を目指すのかと言えば、「太陽系宇宙」を人類の活動領域とするための「宇宙探査」を実現させたいから。

人間一人ひとりの寿命はすぐ尽きますが、私は、次の世代にバトンを渡す努力を止めたくはない。今始めたばかりの宇宙探査は何世代も紡いで進める人類の大事業。自分で納得して選んだ仕事ですから、人生の全てを注いで働きますよ(笑)。がたいが良くて体力があるような米国人と私たち日本人が同じくらいの働きぶりでは、とても勝てやしない。日本人の得意なアイデアと工夫と仕事量を駆使すれば、きっと彼らを追い越して先陣を切っていけると思います。

またこれから、日本が開発した技術を世界に提供したいとも考えています。やっぱり私は、働くことが好きな日本人。まだまだ頭と体をフル回転し、精いっぱいの仕事で生き抜いていきたいですね。(談)

くになか・ひとし ●宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系教授。1960年愛知県生まれ。京都大学工学部を経て、東京大学大学院工学博士取得。88年に宇宙科学研究所着任。2005年から現職、東京大学大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻教授を兼任。11年に月・惑星探査プログラムグループディレクター、12年にはやぶさ2プロジェクトマネージャ就任。14年から宇宙探査イノベーションハブ長。共著に『イオンエンジンによる動力航行』がある。
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