仕事力~働くを考えるコラム

就職活動

「自分にケンカを売ろう」
大友 啓史が語る仕事―4

就職活動

己のための履歴書を作る

「お前はそれでいいのか」

映画監督として独立を決めた時に頂いた企画が、漫画『るろうに剣心』の映画化でした。主人公は世界に知られたサムライだし、同作の漫画やアニメには世界中に熱狂的なファンが点在している。これなら世界市場に通用するかも知れないと思いました。

僕は題材を選ぶ際、「このパズルのピースは今の時代に必要なのか」を考えます。同作は明治維新後の廃刀令が出た世の中で、腕が立つ元人斬りが「二度と人は殺さない」と誓い、斬れない剣を腰に差し身を隠してさすらう物語です。考えてみると「るろうに(流浪人)」の生き方はフリーターに近い。定職に就かない道を選んだ若者たちは、世間の評価とは別に自分の好きな分野で腕を磨き、いざという時に取り出せる剣を磨いているのではないか。そう考えると「るろうに」という言葉もこの原作も、今に届く題材だと思えたのです。

その後も幅広いジャンルの作品を手掛けていますが、自分の中では「今の時代に必要なピース」であることを常に意識しているつもりです。企画によって映画会社も制作プロダクションも変わり、初めて仕事する人とその都度信頼関係を作るのは大変ですが、それも腕試しだと思ってやっています。どこに行っても誰とでも、自分の仕事ができるというのはNHKを辞める時の大きな理想でしたからね。

僕も含めて人間は怠け者ですから、自分で考えたり決めたりすることは苦しいので、やがて慣れに自分を委ね始めます。でもいい仕事をするためには、ちょっと突っ張って「お前はそれでいいのか」と自分にケンカを売って追い込んでいくことが必要だと思います。映画制作の現場でも、関わるスタッフが、ハンコをもらえばいいという姿勢になったらいいものはできない。一人ひとりが「こういうアイデアの方が面白い」と自分の考えをぶつけてきてくれると、仕事はがぜん面白くなる。だから僕は挑発したり、背中を押したりしてそういう「熱」を作り出したい。仕事場は、誰にとっても本気を探す所ですよ。

細かい仕事を記録せよ

この6年間、必死で映画を作ってきたし、作品の選択も公開中の『3月のライオン』まで、かなり意図的にやってきました。『3月のライオン』は「いわゆる読後感の良い、普遍性のある青春映画を」と考えて作ったもので、公開後のリアクションを見ながら次のステップを考えようと思っています。

振り返って、僕が今日までやってこられたのは、雑多な仕事を積み重ねてきたからとも言えます。基本的な礼儀なども含めて「石の上にも三年」、職人技なら10年かかると思う。それは若い人へはっきりと伝えたい。退屈で辛抱が必要な細かいルーチンワークでも、そのインプットがなければアウトプットの力は決してついてこない。

NHKで働いている時から、僕はずっと、自分のために毎年履歴書を書いてきました。大きくて誇れる仕事だけでなく、どんな細かい仕事でも記録しておくと気づきがある。その仕事が、今の自分の血肉になっていることを実感できます。そこから自分が何を望んでいるのかを知ることも少なくない。

人からどう見えるかより、自分の今のキャリアの実際をつかんでおくこと。それがどっしりとした仕事の足場になる気がしますね。(談)

おおとも・けいし ●映画監督。1966年岩手県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。NHK入局後、97年から2年間米ハリウッドで脚本、映像演出などを学ぶ。帰国後、ドラマ「ハゲタカ」「龍馬伝」などの演出、映画『ハゲタカ』の監督を務める。2011年NHK退局、(株)大友啓史事務所設立、映画『るろうに剣心』などを手がける。監督最新作『3月のライオン』の前編が3月18日に公開され、後編は4月22日(土)に公開予定。
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