オトナになった女子たちへ

金曜日 朝刊 生活面に掲載。

漫画家の伊藤理佐さん、イラストレーターの益田ミリさんが交互に執筆。オトナ女子ならではの視点で日常を切り取ったエッセイ。

読者アンケートの声
  • ・わかる!わかる!わかる!ってずっと笑って読んでます。 (45歳 主婦)
  • ・同世代として、自分では上手く表現出来ないことを表現してくれている。(42歳 会社員 女性)
  • ・自分に照らし合わせて読む楽しみがある。(64歳 主婦 女性)
  • ・仕事で疲れると女を捨てているのでそういう時に読むとホッとする。(29歳 会社員 女性)
  • ・異性の心理を理解するための参考になる。(59歳 経営者・役員 男性)

若い人にはわかるまい - 伊藤理佐

今、自分の中で「今やらなくてもいい、ちょっとしたことをやっておく」

が、はやっている。少し先の自分が、ちょっとだけラクをするのが楽しくてしょうがない。大きなラクじゃなくて小さなラク。たとえば、「履いていく靴を出しておく」みたいなことだ。出しておくだけで磨かないのがわたしの流儀(と、いうことにしとこう)。

加湿器の水をいっぱいにしとく。二階のトイレ用タオルを、二階に上るついでに持っていくように階段に置いとく。ムスメの上履きを金曜日の夜にバケツにつけとく。あしたの紙ゴミを今日まとめとく(紙ヒモでくくって出すのはヨシダサン)。洗濯物をとりこんで居間においとく。たたむのはあとだけど、たたみたい時に近くにある幸せ。

ムスメが朝学校に行く前に豆ひいといて、淹れるだけにしとく仕事用珈琲。洗剤の詰め替えをしとく。そういう小さいラクでいっぱいにするのだ。

たま〜に、大きく出る。タご飯のカレーを朝、作った。カレーがあることが心の支えになり「夜には味がしみて、なお、おいしくなるであろう」という武将みたいな気持ちも加わって、なんだか一日、堂々とした仕事ぶりだった。

呑み会の時はもうすこし念入りだ。着てく服を前の日に決めとく。行き先の駅の出口、A5とかB3とかまで調べとく。行きに「帰りのタクシーの中で一本飲めば二日酔いにならない」と思っているポカリを買ってカバンに入れとく。

もう、寝坊してトーストくわえて走るなんて、できない。そんなことしたことないけど、今、そんな体力も気力もない。疲れたくない。そうなのだ、気付いていたけど、これって「おばさん」なのだ。

わたしは昔、履く靴も決めないで、早朝、海外にでかけて靴ずれしていた。若いってすごい。でも、そんな頃に戻りたくない。若い人には信じてもらえないと思うけど、若い頃になんか、お金つまれても戻らない。わたしはちゃんとしたおばさんになったのだ。
(漫画家)

またまた始めました - 益田ミリ

ピアノ。習い始めて7年になるけれど、鍵盤に触れるときは、いつもわくわくする。

触れていいの?という緊張感もある。学校の音楽室にあったピアノには鍵がかかっていた。そのせいか、大人になっても、ちょっと悪いことをしているみたいな感覚になるのだった。

新しい曲を決めるときには、先生がわたしのレベルに合ったものをお手本でいくつか弾いてくれる。

先生が弾くピアノには強弱がある。わたしのピアノには強しかない。必死すぎて、すべての曲がフォルテシモ。隣でそれを聴かされている先生を思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいに……。

習い事といえば、英会話。

習っては挫折、習っては挫折の繰り返しである。

はじめての英会話教室は、20代前半、会社員をしていた頃だった。振り分けられて入った初級クラス。少し年上の3人のお姉さんたちと仲良くなり、授業のあと、よくご飯を食べに行ったものだった。休日には、バーベキューもやった。みんなで恋の話もしたっけなぁ。しかし、楽しい時間はいつまでもつづかず、お姉さんたちはどんどん上のクラスに進級していった。

上京後も、何度か新しい英会話教室に通ったが、基礎ができていないから、伸びないのである。

というわけで、基礎がわかる漫画を自分で描けばいいんでないか?と思い立ち描いたことも。できた本の宣伝文旬には、「英語入門の前に読む入門書」とあった。遠い道のり……であるが、基礎の基礎がわかってホッとした。

そして、最近、またまた始めた英会話。

レッスンの最初に、

「週末は何してたの?」

という先生からの質問がある。むろん、こちらも英語で答えるわけだが、英語どうこうより、自分が週末、何をしていたのか、なかなか思い出せない。

あれ?なにしてたっけ?

先生をお待たせするのもどうかと、「映画館で映画を観た」ことにする場合が多い。実際、映画館にはよく行くけれど、どうだろう、たぶん、それ以上に、映画好きの生徒と思われているはずである。
(イラストレーター)

楽しみにしている記事がある。 いくつになっても、尽きない楽しみを、紙面でもデジタルでも

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