特派員メモ

朝刊 国際面に掲載。 ※毎日の掲載ではありません

世界各地にいる特派員によるコラム。ニュース記事では伝えきれない現場の息吹もいっしょにお届けします。

読者アンケートの声
  • ・記者の裏話的な話から世界を知ることができる。(54歳 会社員 男性)
  • ・ニュース記事だけではわからない、海外の人々の様子がよく捉えられていて身近に感じる。(31歳 自由業 女性)
  • ・あの小さなコーナーに自分の知らない世界が広がり、未知の世界を垣間見る事で、小さな世界旅行をした気分になる。(45歳 専業主婦 女性)
  • ・自分では経験できない感動がある。(57歳 自営業 女性)
  • ・諸外国の「ちょっといい話」が読めるのが楽しい。(67歳 その他 男性)

特派員メモ 文学賞、来年こそ

@スペイン・ビルバオ

86歳とは思えぬほど力強く腕を引っ張られ、恋人同士のように腕を組まされた。そうしなければ、彼は倒れていたのかもしれない。

ノーベル文学賞が発表される10月13日、スペイン北部ビルバオ。当地訪問中のシリア人の詩人、アドニスさんに同行取材した。毎年、彼は同賞候補とて名前が挙がる。

今年は大手メディアに最有力候補の1人と報じられ、例年より前評判が高かった。彼の行く先々で、欧米メディアの記者が待ち構えていた。

ところが、当地時間の正午過ぎに発表された受賞者は、米国のミュージシャン、ボブ・ディランさんだった。

午前中のイベントを終え、ホテルへ歩いて戻るアドニスさんにボブ・ディランさんの受賞を伝えると、「He deserves(彼はふさわしい)」と語り、私の右腕を引っ張った。

2人で腕を組んでしばらく歩いた。アドニスさんは一言もしゃべらない。落ち込んでいる様子が伝わってくる。

迷った末、「来年もノーベル文学賞の取材で会いに来ますね」と話しかけると、「それは楽しみだ」。この日初めて笑顔になった。(春日芳晃)

楽しみにしている記事がある。 いくつになっても、尽きない楽しみを、紙面でもデジタルでも

  • 朝日新聞
  • 朝日新聞デジタル