読者の方たち同士の交流が生まれることだってあるんです。

担当記者に聞く、「ちょい読み」/ひととき

読めない日があっていい。
「ちょい読み」でもっと気軽に新聞を。

記者/山本奈朱香

PROFILE

2006年入社。東京本社特別報道部を経て文化くらし報道部へ。生活(衣食住)全般を担当しつつ、これまで追いかけてきた「多様な人が生きやすい社会」をテーマにした取材も続けている。毎週金曜掲載の「ごはんラボ」では、掲載前には実際に料理を作って確認する。プロの調理風景を間近で見られるのが一番の楽しみ。

「ひととき」とは?

60年以上の歴史を持つ、女性読者からの投稿を掲載するコーナー。朝刊生活面に月曜から土曜まで掲載。投稿の内容は日常生活の出来事から、時には社会への疑問まで幅広い。日曜には男性の投稿欄「男のひといき」がある。

写真 山本奈朱香

ふと立ち止まって考える、そんなひとときを

「ひととき」は1951年に始まりました。どの投稿も世の女性が「生きていて感じること」を読めるのが特徴です。

東京本社では文化くらし報道部生活グループの記者十数人が月替りで担当しています。私が担当した2018年7月には東京本社に300通ほどの投稿を手紙やメール、FAXなどでいただき、毎日その中から掲載するお便りを選んでいました。最新の情報や出来事の記事が載っている新聞紙面の中で、ふと立ち止まって考える「ひととき」のきっかけにしていただければと思っています。

投稿者の年齢層は50代から70代の方が中心。20代や30代の方からの投稿はあまり多くはありませんが、もっと幅広く投稿していただけるようになりたいですね。

写真 山本奈朱香

読者同士の交流も生まれる

投稿内容に決まりは特にありませんが、タイトル通り投稿者の方の「ひととき」が思い浮かぶものを掲載することが多いです。

「幸せの『傘』バトン」という投稿は、子どもの頃に見知らぬ人に傘を貸してもらった投稿者が、大人になって女の子に傘を貸して「幸せのバトン」を渡した、というお話でした。傘を貸した情景が浮かんで、この投稿を読んだ人がいつか同じようにバトンを渡してくれたらすてきだなと思って選びました。

掲載する投稿を選ぶ時は、楽しい話から考えさせられる話までいろいろな話をご紹介するようにしています。お遍路でまわったことのある四国で豪雨の災害が続き、被災地に思いを寄せる方、命を終えようとしている飼い犬への思いを語ってくださる方……と内容は多岐にわたります。投稿を読んだ読者の方が「共感したので投稿者の方にお手紙を出したい」とお便りを送ってくださる時もあれば、「別の視点からぜひアドバイスをしたいので連絡をとってみたい」という方もいらっしゃって、読者同士の交流が生まれることもあります。また、そうした反応がたくさん集まった場合はそのお便りだけで紙面を作ることもあります。

写真 山本奈朱香

読めない日があってもいいと思うんです

新聞って読めない日があってもいいんじゃないかと思います。私だって、1日で読めても30~40分くらいしか時間は取れません。旅行に行って1週間留守にしたら、戻ってきてから1週間分読むのはしんどいですよね。

もっと気軽に、その日の気分で読むページを変えたり「天声人語」だけ読んだり、パラパラめくって目についた面白そうなところだけを読んだりしていいと思います。そして、新聞はそれぞれの面によって持ち味が違うので、好きな面を見つけるのも良いのではないでしょうか。

生活面は主婦の方に向けた面というイメージがありますが、社会が多様化してきている現在、多くの方の生活に関係する、共感していただける記事を出していきたいと思っています。

早いスピードで進んでいく日々の生活に疲れた時には、「ひととき」を読んで、一呼吸おいてみてください。