
笠巻伸二さん(51歳 医師)
3人目は、大学生と高校生の3人のお子さんがいる東京都在住の笠巻さん。お子さんたちが少しでも新聞に興味を持ってくれるように、毎日「ある作業」をしているそうです。
「トイレ新聞」作りが日課

笠巻さんは、家族に「ちょい読み」をしてもらおうと取り組んでいるんですよね。

はい。我が家の3人の子どもたちは「忙しい」と言って新聞を読みません。だから、少しでも新聞に興味を持ってもらえるように、毎日気になった記事や感心させられた記事を切り取って、トイレの壁に掛けてあるコルクボードに貼り付けているんです。毎日夕食前後に30分くらいで朝刊と夕刊を読んで、私が素直に面白いと思った記事や、「be」(週末別刷り)の堅苦しくないやつを選んでいます。それを、タイトルだけ見えるようにして重ねて貼っています。何事も強制はよくないので、さりげなく。

毎日記事を貼っているんですね!
いつからやっているんですか?


長男の中学受験で、トイレにコルクボードを設置したのがきっかけだったと思います。みんなの受験が終わった3~4年前から、だんだん新聞記事を貼るようになりました。
読んでる気配はある

お子さんの反応はいかがですか?

あんまり反応はないですね。でも、反応を示さないだけで、興味のあるものは読んでる気配はあります。だから、記事の位置がずれていたり、貼り替えられていることがあると、「読んだでしょ?」「誰があの記事をずらしたんだ!」って言います(笑)。聞いても教えてくれないんですけどね。読んでる証拠だなって思うとうれしくて。あんまり聞くと逆効果だから、最近は言わないようにしてます。

せっかく毎日記事を選んでいるのに、ちょっと寂しくないですか?


全然そんなことないですよ。反応は期待しないようにしてますから。
でも、数年前に玄関先にタヌキが現れたことがあったんですよ。僕は東京で生まれ育って50年だけど、タヌキを見たのは初めてだった。それで大騒ぎしたその数日後に、「eco活プラス 東京タヌキどこへ」っていう記事が出た。家族みんなが驚いて大反響でした。その記事はその後しばらくトイレに貼ったのでピンの穴だらけでボロボロになってしまいましたが、今でも保存してあります。
タヌキが現れなければ、「ふ~ん」で終わってた記事なんですけど、こうやっていろんな方面にアンテナを張っていれば、普段無関心でスルーしちゃうことがふっと目に留まって興味の幅が広がりますよね。
小さな変化を楽しみに地道に

お父さんの思いが伝わるといいですね。


残念ながら、子どもたちは新聞を読むようにはなっていないですけどね。でも、子どもたちには世の中のことに対して幅広い考え方ができる人間になってほしいから、きっと何か感じるものがあるはずだと信じて、地道にトイレ新聞を作り続けています。無駄ではない、と思いますよ。以前と比べると、まったく興味を示さないわけじゃないから。サッカーW杯の時は、次男がその記事だけはほしいって言うから、毎日切り抜いて全部とっておいたし、貼っておいた書評欄を読んで、その本を買ってくれって言われたこともありました。

小さくても変化はあったんですね。ちなみに、ここまで話を聞いていると、「さりげなく」と言う割には結構……(笑)。

まあ、ついつい口が出てうるさくなっちゃってるよね(笑)。「声」欄に私の投稿が何回か載ったことがあるんですけど、その記事は必ずトイレに貼っとく。それで、「新聞を読めばこれだけの力になるんだ。それくらいにならないとね、君たちも!」って自慢します。いつも子どもたちに「新聞を黙々と読んでるお父さんの後ろ姿を見たら、きっと君たちも変わるに違いない!」って言って、「はいはいはい」ってあきれられてます。

すてきなお父さんですね!
ありがとうございました。
焦らず、期待しすぎず、新聞を通じたコミュニケーションを続けることで、いい関係を築いているんですね。


WRITER PROFILE
いぐっちー
2011年、朝日新聞入社。無駄に大きなカバンを担ぎ、「ちょい読み」を求めて日本中を駆け巡る。
趣味は探検、徹底的な事実確認。
親子で一緒に「ちょい読み」!
家族に新聞を読んでほしい人に
おすすめの読者のアイディアを紹介!
- 1お弁当袋に役立ちそうな
記事の切り抜きを入れる! - 2朝ご飯を食べる子どもの横で
感想をはさみながら記事を音読! - 3毎朝、朝刊にどんな写真が載っているかをクイズ
形式にして聞いて、答えを探してもらう!
※「みんなのちょい読み募集キャンペーン」より