仕事力~働くを考えるコラム

就職活動

「手渡されたチャンスを糧に」
齊藤 太一が語る仕事--2

就職活動

新しい職種の予感がした

まだ先達がいないと感じる

岩手県の自然豊かな地で育ち、15歳ごろから園芸店のアルバイトで植物の育成や造園に夢中になりました。ついに高校は1年生で留年。このままではまずいと学業と仕事の両立を覚悟し、指導者もいない環境で植物学や造園技術などに独学で挑み始めました。そんな日々の中、米国の建築家フランク・ロイド・ライトの写真集で彼が造った「落水荘」に衝撃を受けたのが16歳。自然の滝と融合した作品を見て、「家があって庭がある」という形しか頭になかった自分の無知をはっきりと自覚しました。

その時、「建築」という分野に強い憧れを抱いたんですね。自然まで取り込んで計算し尽くし、美しく強い建物や広大な公園などを造る。スケールも構想も桁違いじゃないかと。それからは大きな書店に行って世界的な建築家の写真集や本をむさぼるように読みました。書店には建築ジャンルの堂々としたコーナーがあって圧倒されるほどだったのです。もっともっと勉強して建築家を目指せないかという願いもありました。

でも待てよ、と僕は冷静になりました。建築の世界には、これほどすごい人がもう数多くいる。建築家ライトは、既に存在する大自然があったから「落水荘」を造れたと思う。しかし、建築の構想に必要なネイチャー環境を本格的に造形できる人の本はない。その頃、園芸分野としては草花やバラのイングリッシュガーデンについてなどわずかな本しかなかったのです。どうやら、建築と自然を大きく融合させる、今で言うランドスケープというジャンルはまだ確立していないようだと直感しました。いくら調べても該当する職種がないなら、僕がその新しいジャンルのガーデナーになろう。そんな目標がくっきりと見えてから、高校の勉強に加え、あらゆる知識を吸収したいと本気になり、かなりいい成績で高校卒業を果たしました。

異次元の都会パワーにのまれて

こうして植物や造園を学んだ僕は、東京で「生花」と「プランツ」の店を経営する会社に就職し、仕事人生がスタートしました。ベンツやフェラーリが普通に店の前を走り、クライアントからは、とにかく華やかにカッコいいアレンジメントをという注文。これまで自分が扱っていた園芸や造園の世界とはかけ離れた、草花の美しさをパワーに変える仕事であり、これはこれでまた魅力的ではありました。

でもその間も、僕は植物の専門家としてオールジャンルのプロになるべく学び続けていました。生け花、フラワーアレンジメント、和風・洋風の庭園造り、イングリッシュガーデン、コニファー(針葉樹)の庭、観葉植物の全て。そして週末は2年間建築の学校に通いました。各分野ごとに専門家はいますが、トータルで一輪の花を生けることから、広大な建築のためのガーデニング構築、管理までできるプロにまだ出会ったことがなく、「日本では、それは僕だ」と言えることが目標でした。

ところが、ふと僕は花やプランツを華やかな商材として扱っている自分に気づきました。カッコいい都会ならではのアレンジばかりだと。これがやりたかったことか。いつか迷いが生まれていました。(談)

さいとう・たいち ●(株)DAISHIZEN代表取締役、造園家、グリーンコーディネーター。1983年岩手県生まれ。高校在学中の15歳から園芸店での植物販売や造園を始め、さらに独学で植物学や庭造りなど多くを学ぶ。19歳で上京、南青山の生花販売会社に勤務。インドアグリーンやランドスケープデザインまで手掛けるプロとなる。2011年に会社設立。都心に広がる“緑の商業スペース”「SOLSO PARK」を始め、教育、農業、都市デザインなど多彩な分野のプロジェクトを手掛ける。
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