政治にもっと「巻き込む力」を

米良はるかさん×原田謙介さん 対談

[ 更新日:2016.07.07 ]

プロジェクトに共感した不特定多数の個人からインターネットで資金を集めるクラウドファンディングを提供する「READYFOR」代表の米良はるかさん(28)と、若者と政治をつなぐ活動を続ける「YouthCreate」代表の原田謙介さん(30)が対談しました。社会をよくするために、私に、私たちにできることとは――。

原田謙介 クラウドファンディングと政治って、社会をよくするという点では似てると思うんですけど、どういう経緯で始めたんですか?

米良はるか 大学時代に、たまたまパラリンピックのスキーチームの監督から「お金がなくて」という話を聞いて、インターネットで「投げ銭」を募るサイトを作ったら、お金が集まったんです。こうして、思いのある人を、思いに共感した人たちが応援するような仕組みをつくりたいと思ったんです。

原田 それがいまでは、いろんな世代のいろんなプロジェクトに広がっていますよね。

米良 日本の社会だと、新しいことにチャレンジする一歩目って、すごいハードルが高くて。私自身も起業して3年は、まわりの友だちに自分のやってることを言ったことなかったんですよ。なんか、「っぽく語る」っていうのは怖いじゃないですか。

一歩踏み出す支えがあれば

原田 いわゆる意識高い系、みたいな。

米良 そうそう。自分がやりたいことを見つけたからそれをやりたいって思っているだけなんだけど、「なにそれ? なんで、そんなに頑張っちゃうの?」みたいに思われるのがすごく怖かったんです。だから、そう思っている人はすごくたくさんいるんじゃないかな、と思っていて。思いを持っている人、やりたいことが見つかっている、あるいは見つかりそうだけど怖くて一歩を踏み出せない、という人をしっかり支えられるような態勢をつくりたいと思って。私たちの会社では、キュレーターという担当者が一個一個のプロジェクトをしっかりとサポートして、実行してもらうようにしています。

原田 その結果、共感も増えていく?

米良 はい。お金を集めるプラットフォームというだけじゃなくて、チャレンジを生み出し、形にする場でありたいと思っているんです。

原田 自分のやりたいと思うプロジェクトを、まわりの人を巻き込んで共感を集めながら進めていくというのは、政治も同じだけど、なぜ政治はそこまで浸透しないのだと思いますか?

政治家は言うことが抽象的すぎて

米良 この人が、これをやりたいというアクションが明確じゃない。こういう世界を作ります、と言われても抽象度が高すぎて、あなたが動かせる気がしないって思ってしまう。なんかいいこと言ってるっぽいからこの人か、みたいに選んでも、「っぽいから」で選んだから、それほど一票に責任を感じていないというか、自分が応援している感じがしない。だから、その後のこともあまり関心がなくて……。選ぶ方が、何に対して賭けていいのかわからない、というのがあるんじゃないでしょうか。

原田 この人を応援したいな、と思わせるコミュニケーションをどう取ったらいいのでしょう?

米良 たとえば、子育てに力を入れたいなら、子育てに悩んでいる人たちをターゲットにしてコミュニケーションしていく。みんなに向けて話すと逆にピントが外れているように聞こえるので、具体的に解決したい問題を抱えている当事者に向けて訴えるのがいいと思います。誰に向けての政策なのかをはっきりさせることで、まわりを巻き込んでいく。

孫がおじいちゃん、おばあちゃんを説得すれば

原田 シルバー民主主義という言葉が生まれ、世代間の格差が言われています。ただ、僕は世代間で対立をあおるのは嫌なんです。おそらく、高齢者も若者も、それぞれジレンマを抱えている。うまく世代を越えて一緒に動く秘訣みたいなものはありますか。

米良 高齢者だって、孫にも元気に生きてほしいと思っているけど、日本の負債をゼロにするために社会保障費が全額自己負担になるってところまで舵は切れないですよね。だれもが幸せに生きたいし、自分の身も守らなきゃならないから。ただ、世代間の交流があれば、若い人たちの将来を考えることにもつながるかもしれない。

原田 政治家が説得するよりも、孫が話をしたほうがおじいちゃん、おばあちゃんはわかってくれるんじゃないかな。

米良 だから、異なる世代がつながることはとても大事だと思います。

原田 そうすれば、お互いのことをちょっとでも想像できるようになりますよね。でも、どうやったらいいのか。たとえば、近所の立ち飲みやで会うとか……。

米良 いま地方なんかはコミュニティが壊れてきているから、過疎化が進みすぎているところほど再生プロジェクトが生まれたりしている。きっと、危機感がある場所のほうが動きやすい。やばいっていうところからの人間の馬力ってすごいと思うし。

原田 でも、選挙だと、「大変だけど、何とかなるっしょー」的な公約が多いんですよ。政治家は言いづらいかもしれないけど、「これからの10年間はヤバいけど、15年後によくするために――」とか訴えたらいいのに。

米良 若い人が自分の力で世の中を変化させることができるんだっていうことを信じられる社会をつくってあげたいですよね。

原田 ところで、前回の都知事選では選挙資金をクラウドファンディングで集めた候補者が出たのが画期的でしたね。

お金を集めて、意識を変える仕組み

米良 クラウドファンディングはもともと、ジャーナリズムやNPOのプロジェクトがたくさんあって、政治に限らず、世の中を変革するためのアイデイアを広めて、共感する人を可視化するツールとして使われていると思います。少し前だと、地方再生とか、LGBTのプロジェクトがすごく多かったんです。

原田 クラウドファンディングから次の世の中が見えてくるって、面白いですね。クラウドファンディングはお金を集めることと、考えを広げることを一緒にできちゃうのもすごい。政治家には昔ながらの後援会システムがあるけど、クラウドファンディングのように、1千円から始めて、興味を持って応援できれば次のステップに、というように少しずつ関わりを深めていくようなシステムを真似したらいいのに。そして、政治ももっと未来を先取りしないといけないですよね。

米良 政治の世界にも、思いのある人にどんどん中に入っていってほしいです。そうしたら、きっと世の中変わるから。

原田 社会を変えるって、政治だけがするかのように切り離されているのがおかしいですよね。私たちだれもが日常から変えられる。政治というのはあくまで、そのひとつの方法にすぎないのです。 (構成・諸永裕司)

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