就職活動

就活実話

「あっ、すみません」

今年2月、都内のホテルで開かれた、とある商社の入社説明会。会場に遅れて入ってきた首都圏の女子大生Aさんは、前方の空いている席に着くため、左右にパイプイスがずらっと並んだ狭い通路を通り抜けようとして、座っていた見知らぬ女子の肩にあやまってぶつかってしまった。

反射的に、謝罪の言葉が口をついて出た。ところが、相手は少し振り返って目を合わせただけで、何も言わずにすぐに顔をそむけた。確かに通路をうまく通れなかった自分も悪い。それでも他の業界の説明会だったら、お互いに相手への気遣いがあったと思う。

「邪魔をしないでよ」。そう言わんばかりの態度に、Aさんは背筋が寒くなるのを覚えた。

就活解禁を前にした昨年のちょうど今ごろは「将来、商社マンと結婚するのも悪くないなあ」などと、のんきに考えていた。世界をまたにかけてバリバリ働く商社マンの男性を支え、人に感謝されるような一般職の仕事が自分には向いていると思った。その延長線上に恋が芽生えるかもしれない。実際に就活が始まると、内定をもらえないと困るから、業界を絞らず手広くエントリーシートを書いたが、商社は第一志望の一つだった。

しかし、説明会に来てみて、ツンとした女子大生の多いことに圧倒された。「自分が大切、自分が一番」。そんなオーラが会場を覆っていた。「こういう人たちと一緒に働けるだろうか。いや……」。商社の一般職は「顔採用」とも揶揄されることもある。リクルートスーツに身を包んだ彼女たちの姿は一見、どこの説明会でも見かける光景だったが、メークは濃かった。

商社とはまったく関係のない企業に内定したAさん。心残りは、まったくない。

バックナンバー
関連記事

ご購読申し込み

試し読み申し込み

学割申し込み

朝日新聞デジタル

お引越しされる方

あさがくナビ

朝日新聞採用

PAGE TOP