林先生の知のアラカルト 〜かしこく生きるコツ〜

Vol.4 時代を生き抜くコツ

予備校講師として東大受験生から絶大な支持を得る一方、その博識ぶりでテレビでも活躍中の林修先生。そんな知の巨人の“かしこく生きるコツ”を探る連載の最終回、テーマは「時代を生き抜くコツ」です。
インターネットを介して瞬時に世界がつながる今、社会の変化は目まぐるしく、価値観もあっという間に変わります。私たちはそれらをどう取り入れ、どう生き抜いていけばよいのか。若き日の失敗があって今があると語る林先生にお聞きします。

林先生流 時代を生き抜くコツ

新しい価値観を取り入れる

写真 林修

僕の世代が生まれ育った時代と今では、大きく環境が変わりました。日本の状況を考えてみてください。2019年、生まれた子供が約86万人だったのに対し、死亡数は約137万人。人口はこの1年で51万人以上減ったと推計されています。 少子高齢化が進み、多くの格差が生まれ、AIの台頭で人の仕事が減っていくともいわれる時代がくるわけです。古い価値観に縛られていたらどうなりますか?

一昔前なら、職人は父親と同じ技術を身につければ一生暮らしていけましたが、激しい変化の中にある今、そのやり方では厳しい。ではいい大学に進んで大きな企業に勤めれば安泰かというと、そのような時代でもなくなりました。日本を代表する大企業のトップが終身雇用は危うくなったと言い、広範囲にわたる知識を持つゼネラリストの集まりといわれていた銀行がゼネラリストを必要としなくなっているのです。

写真 林修

ビジネスチャンスをつかめれば、莫大な創業者利益を得ることも夢ではありません。とはいえ、一度築いたシステムがあっという間に崩れる可能性も否定できない。要は、常に新しいことを学び続けていかないといけない時代になったということだと思います。

若くて優秀な人たちは皆、考え方が柔軟なように思えます。今を生き抜くには、新しい価値観を取り入れることが必要不可欠だと知っているからです。自分の興味の有無にかかわらず多様な情報が得られる新聞を読むことで、常に新しい価値観に触れること。まずそこから始めてみてはどうでしょう。

失敗を恐れず行動する

写真 林修

僕は若い頃、自分に向いていない金融投資に関わり、大きな損失を出しました。ただ、今では自分の負け方を知ることができた、貴重な財産だと思っています。そののち、予備校の講師となって順調にキャリアを積み、7年前からはテレビにも出演するようになりましたが、その間、余計な副業や投資に手を出したりすることなく無事に過ごせているのは、この若き日の苦い経験があるからです。

若いうちはどんどん失敗すればいい。変化の激しい時代だからこそ、一度失敗してもなんとかなると大胆に動く人はチャンスをつかむ。その一方で、保守的な人も多い。大学受験までは、どの方向にどれだけ頑張れば、どれだけリターンがあるかが明確なので問題なく進める。けれどその後は、不確実性が増え勇気をもって進むことができなくなる。

写真 林修

失敗を恐れず何かに挑戦するには、情報が必要です。なかでも歴史に学ぶことは非常に有意義です。「歴史は繰り返す」という言葉がありますが、本当のところ、歴史は繰り返しません。さまざまなファクターが入り組み、同じ状況は絶対に起きない。でも、情報を収集・分析して実行したプロセスを見れば、歴史上の人や国がなぜ成功したのか失敗したのかはよくわかります。特に、失敗した例は参考になる。ビジネスにおける失敗も、経過をよく調べれば、そこにあるのは敗因の山ですから、なぜ負けたかわかるのです。

新聞にはさまざまな記事が載っていますよね。前回同様、身近なスーパーマーケットに例えると、1面や総合面、社会面が最新の時事問題の並ぶ生鮮コーナーだとすれば、真ん中あたりの文化面やオピニオン面はお菓子やデザートのコーナー。そこには過去や未来に思いを巡らすときに興味をそそる知恵や教訓が必ずあるはずです。新聞はニュースを読むものと固く考えず、気軽に「ちょい読み」することから始めてみたら良いと思います。

林先生流 時代を生き抜くコツ おさらい

新しい価値観を取り入れる

失敗を恐れず行動する