小学館週刊ビッグコミックスピリッツ編集部デスク
『二月の勝者-絶対合格の教室-』担当
編集者インタビュー

中学受験塾を舞台とした「二月の勝者」(高瀬志帆作 小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中)が話題を呼んでいます。担当編集者の加納由樹さんにお話をうかがいました。

「大学入試改革」について黒木先生が語る場面はインパクトがありました

第8話「三月の転機」ですね。高瀬先生と私も改革の内容を知った時は大変驚きました。改革の対象世代のお子様が中学受験するご家庭にとっても、決して避けられない大きなトピックだと認識したので、黒木が、「2020年、大学受験が大きく変わります」と語る場面や実際の入試問題例に大きなスペースを割いて、「あらゆる家庭に関わる目前の問題」であることを際立たせる工夫を凝らしました。実際に予想以上の反響があって、注目度の高さを実感しました。

漫画のテーマとして「中学受験」を選んだ理由を教えてください。

高瀬先生から提案を受けました。実際に私の周囲でも、自分の学生時代とちがって中学受験をするご家庭の割合がずいぶん高いと感じていたところでしたので、非常に現代性のある面白い企画だと感じました。また、大学受験を舞台とした漫画は数多くありますが、中学受験を描いた漫画はまだ少なく、手垢のついていない題材へのチャレンジでもありました。構想から連載が始まるまで1年以上かけて、塾講師の方や教育専門家に取材を重ねました。

小学校受験は「親ががんばる受験」、高校受験は「子ががんばる受験」、中学受験は「親と子の受験」とも言われていて、作品内でも中学受験に挑戦する親子のリアルな姿を描いています。黒木という強烈なキャラクターの塾講師が主人公ですが、登場する様々な親子の群像劇になっていると思います。作品を通じて、中学受験の良い面、悪い面を余すところなく伝えたいというのが、高瀬先生と共通して持っているテーマです。

2017年12月から連載がはじまりましたが、反響は?

「ビッグコミックスピリッツ」は青年誌なのですが、ソーシャルメディアなどでの反響は女性からの声も多いです。塾講師の方からの「ものすごくリアルだ」という声は嬉しいですね。登場する親子のエピソードで「泣いた」という感想や「同じ悩みが描かれていてうちだけではないんだとホッとした」という声も届いています。「こんな先生がいたらいいな」という声も多く、黒木の直言=嘘のないキャラクターを痛快に思って頂けているようです。
題材は中学受験ですが、人間ドラマとしては子供の成長や家族など普遍的なものを描いているので、中学受験の経験がなくても読んで面白い作品になっていると思います。

朝日新聞とのコラボレーションについて

取材した塾講師の方は「親子で新聞を読む習慣は効果的です」と言っておられました。活きたニュースに触れることがポイントだそうです。実際に中学受験では時事問題が出題されることがありますし、それだけでなく、これからの学びは情報を自分で咀嚼してアウトプットする力が問われる、ということでした。そのツールとして「天声人語」をお子さんと一緒に読んで、親子でそれについて会話をするとか、面白そうですね。

最後にこれからの展開について教えてください

現在(※2018年10月)、連載では受験の天王山とも言われる「夏期講習」を迎えています。取材する中でも「まさかそんなことが」と思うような、想定外の出来事が多発する時期でもあり、それに如何にして塾と、親子が立ち向かうかを描いていきます。二月の受験本番に向けて、生徒たちがそれぞれどのように成長してゆくのか、主人公黒木の「謎」についても次第に明らかになっていきますのでご期待ください。