提出者の86%が『根拠なし自己PR』(400人中345人)
朝日新聞社主催・就職フェア(2013/6/29)でおこなった『ESコンテスト』の講評です。毎回、10~15程度の自己PRに改善アドバイスを致します。今回は第2回で、『根拠なし自己PR』に対する改善アドバイスです。
第2回:提出者の86%が『根拠なし自己PR』(400人中345人)
今回は『根拠なし自己PR』。つまり、アピールポイントを証明する、客観的な根拠(事実・具体例・データ)が書かれていない自己PRについて詳しく解説します。自己PRコンテストの提出者400人中345人、86%もの就活生が『根拠なし自己PR』でした。
根拠のない自己PRは評価ゼロ
自己PRに説得力を持たせるためには根拠(事実・具体例・データ)が必要不可欠で、最も重要なのはデータ(数値)です。以下、3段階の例を挙げて説明します。1と2が『根拠なし自己PR』。3が根拠のある自己PRです。
●1.「私は体力に自信があります」
体力があることがわかる根拠が全く書かれていません。本当に体力があるかどうか判断がつかないので、評価はゼロ。高評価は得られません。
●2.「私は体力に自信があります。スポーツに打ち込みました」
スポーツに打ち込んだと書かれていますが、何のスポーツなのか、遊び程度なのか、熱心に打ち込んだのか、習熟レベルが不明なので説得力はゼロ。高評価は得られません。
●3.「私は体力に自信があります。水泳に6年間打ち込みました。クロールで2000メートル泳げます」
水泳に6年間、クロールで2000メートルと、データを盛り込むことによってアピール内容の説得力が高くなりました。高評価を得るには、自己PRを裏付ける客観的なデータを盛り込むことが重要です。
■面接官になったつもりで、12人分の自己PRを読んでみてください!
以下の12人分の『根拠なし自己PR』と各解説(面接官の見方、改善方法)を読んで下さい。行動特性、スポーツ、アルバイト、勉学、サークル活動など、様々なジャンルの『根拠なし自己PR』を取り上げました。自己PRを書く場合の注意点がよくわかります。
●根拠なし自己PR 1人目
【面接官の見方】
自己PRを証明する客観的な根拠(事実・具体例・データ)が全く書かれていない。したがって、本当に自己PR内容(リーダーシップ・協調性)が発揮でいていたのか疑わしい。よって、高評価はできない。後半2行に関しても、実際に高いレベルでできていたかは(客観的な成果が書かれていないので)疑わしい。中途半端な書き方の自己PRをあれこれ盛り込んで書くのではなく、一つの自己PRをキチンと書いてほしい。
【改善方法】
自己PRを証明する客観的な根拠を書けば高評価が得られる。たとえば、アルバイトや勉強、ゼミ活動、サークル活動、スポーツなどで、具体的に何を行ったのか。その結果、どんな成果が得られたかを数字を交えて書くとよい。5行程度の枠の場合は、あれこれ書くよりも、1つのアピールポイントについて、根拠をきっちり掘り下げて書くべき。後半2行の内容は割愛したほうがよい。
●根拠なし自己PR 2人目
【面接官の見方】
どんな勉強をどの程度したのか。どんな運動をどの程度したのか。どんな成果が得られたのか。努力したことの客観的な根拠(事実・具体例・データ)が全く書かれていないので、努力家だと評価することはできない。後半の文章も抽象的で、客観的な根拠が書かれていない。
【改善方法】
アドバイスは、上記一人目と同様。※自己PRには必ず根拠が必要。抽象論ではなく、客観的な根拠(事実・具体例・データ)を軸にした内容にすること。
●根拠なし自己PR 3人目
【面接官の見方】
人とのコミュニケーションを大事にすることは、普通の人ならば行っていることなので、この記述だけで他の受験者よりも高評価をすることはできない。要するに、他の受験者よりもレベルが高いコミュニケーション力があることが判断できる、客観的な根拠(事実・具体例・データ)が書かれていなければ、高評価を与えることはできない。
【改善方法】
アドバイスは、上記一人目と同様。※自己PRには必ず根拠が必要。抽象論ではなく、客観的な根拠(事実・具体例・データ)を軸にした内容にすること。
●根拠なし自己PR 4人目
→アドバイスは上記3人目と同じです。(3人目と4人目、5人目は、同類の自己PR内容)
●根拠なし自己PR 5人目
→アドバイスは上記3人目と同じです。(3人目と4人目、5人目は、同類の自己PR内容)
●根拠なし自己PR 6人目
【面接官の見方】
どんな生徒会活動したのか。どんな話をしたのか。きちんと伝わったのか。その結果、どんな成果を得たのか。客観的な根拠(事実・具体例・データ)が全く書かれていないので、高評価を与えることはできない。
【改善方法】
アドバイスは、上記一人目と同様。※自己PRには必ず根拠が必要。抽象論ではなく、客観的な根拠(事実・具体例・データ)を軸にした内容にすること。
●根拠なし自己PR 7人目
【面接官の見方】
「察する力」が本当にあるのかが判断できる、客観的な根拠(事実・具体例・データ)が全く書かれていないので、高評価を与えることはできない。
【改善方法】
「察する力」を発揮した結果、どんな成果が得られたかを書くべき。たとえば、売上や客単価、客数の向上や顧客アンケートでの高評価などを書くと高評価が得られる。
●根拠なし自己PR 8人目
→アドバイスは上記6人目と同じです。(7人目と8人目は、同類の自己PR内容)
●根拠なし自己PR 9人目
【面接官の見方】
高い行動力・協調性があることが判断できる、客観的な根拠(事実・具体例・データ)が全く書かれていないので、高評価を与えることはできない。
【改善方法】
自己PRを証明する客観的な根拠を書けば高評価が得られる。たとえば、アルバイトや勉強、ゼミ活動、サークル活動、スポーツなどで、具体的に何を行ったのか。その結果、どんな成果が得られたかを数字を交えて書くとよい。5行程度の枠の場合は、あれこれ書くよりも、1つのアピールポイントについて、根拠をきっちり掘り下げて書くべき。行動力と協調性の2つをアピールするよりも、どちらかに絞ったほうがよい。
●根拠なし自己PR 10人目
→アドバイスは上記9人目と同様。(9人目と10人目は、同類の自己PR内容)。協調性、前向きに物事に取り組む…など、(漠然とした書き方で)あれこれ盛り込んでいてわかりにくい。1つのアピールポイントについて、根拠をきっちり掘り下げて書くべき。
●根拠なし自己PR 11人目
【面接官の見方】
サークル運営がうまくできていたと判断できる、客観的な根拠(事実・具体例・データ)が全く書かれていないので、高評価を与えることはできない。サークルの状況を客観的に見られていたか、意義ある活動にできていたか、根拠を提示できなければ単なる自己満足に感じられる。
【改善方法】
自己PRを証明する客観的な根拠を書けば高評価が得られる。たとえば、新入部員の増加、部員の活動参加回数、他大学との交流回数の増加、コンサートへの来場者数の増加、OBとの交流回数など。
●根拠なし自己PR 12人目
【面接官の見方】
何事にもチャレンジすることを自己PRポイントにするからには、実例は、多方面の多くの内容を挙げてほしい。ランニングだけでは「何事も…」という言葉が大げさに感じる。しかも、ランニングについても、曖昧な書き方なので、評価の対象にならない。
【改善方法】
「何事も…」という言葉は、単なる誇張(もしくは嘘)に思われてしまうリスクがある。よって、できるだけ使わないほうがよい。むしろ、1つのことをきっちり説明したほうが好印象。
ランニングについて、何キロ走るのか、何時間走るのか、どのくらい継続しているのか、マラソン大会に出場したかなど、努力のレベルが判断できる、客観的な根拠(事実・具体例・データ)が書くと高評価が得られる。
■まとめ
以上、12名の自己PRを読んで、どんな気持ちになりましたか? 6人目くらいになると、読む気が失せてきたのではないでしょうか。『根拠なし自己PR』は、面接官の印象がとても悪いです。理由は、仕事においても、説得力のない話し方をして、上司や顧客の信頼を無くす社員になりそうな懸念を感じるからです。気を付けてください。
今回、マイナスのコメントを書かれてショックを受けている方がいるかもしれません。でも、安心してください。ポイントをおさえて書けば、見違えるような「受かる自己PR」に早変わりします。これから順次、良い自己PRの実例や改善アドバイスを紹介していきますので、ぜひ読んで参考にしてください。
キャリアデザイン研究所代表。大学非常勤講師(就職指導担当)。ES本・面接本とも売上1位。(有名書店・大学生協・売上ランキング)。全国の大学等で就職講座の講師を務める(実績:東京大学・京都大学・千葉大学・岡山大学・早稲田大学・慶應義塾大学・立教大学・法政大学・日本大学など62大学)。●大学時代に就職支援ボランティアをしたことがきっかけで、将来、就職コンサルタントになることを志し、証券、広告、新聞、教育業界で勤務後、独立。●著書68冊。『内定者はこう書いた! エントリーシート・履歴書・志望動機・自己PR 完全版』・『内定者はこう話した! 面接・自己PR・志望動機 完全版』(高橋書店)、『何をPRしたらいいかわからない人の受かる!自己PR作成術』(日本実業出版社)など。●ツイッターで毎日指導(@SakamotoNaofumi)。