都内の企業にこの春就職したAさんは、昨年の就活のまっただ中、携帯に、見覚えのある人から電話がかかってきた。
「君は、明日のうちの一次試験受けるんだっけ?」「はい、受けます。よろしくお願いします」「わかった、ありがとう」。
電話の主は、Aさんが所属する部活でおつきあいのあった会社の担当者Bさんだった。2~3年生のころは、他大学の同じ部活の学生とともに一緒に飲んでざっくばらんに話をする間柄。自分の名前と顔は知ってもらっていたとは思う。
そんな関係だから、Bさんらを通してその会社の仕事の内容や社風などはよく伝わってきた。自由そうな雰囲気などに好感が持て、Aさん以外にも部内や他大学の同じ部などでも志望する学生が結構いた。
就活が忙しくなって、部活からは縁遠くなっていたが、Aさんらがその会社を受験することは後輩が伝えていたらしい。なので、Bさんからの電話は最初、激励が目的なのかなと思った。飲んだ時には、たわいない感じで「うち(の会社)に興味ある?」「よかったら受けてみてよ」といった話もしていたからだ。
しかし、振り返って考えると、それにしては素っ気ない。ただ、受験するかどうかを「確かめただけ」のようにも感じた。
その後、部や他大学の仲間とメールや電話でやり取りをしていると、Bさんの顔見知りの学生の何人かが一時試験の前日あたりに、Bさんから同じような電話を受けていたことが分かった。「お前もか?」「何かあるんかな」。
しかも、驚いたのは、電話で声がかかった全員が一次試験を突破していたことだ。それに対して、Bさんから電話がなかった知り合いはみな落ちていた。「電話=一次突破」という図式が心にひっかかった。
Bさんは人事や採用の部署の人ではないが、社内のどこかで通じ合っているのかもしれないと勘ぐるのは、間違っているだろうか?
Bさんの知り合いというだけで、試験の点数にゲタを履かしてもらったとは思いたくない。しかし、ふだんのつきあいの中で、Bさんに学生たちがその人物像やら能力やらを見られていたとすれば、やっぱり会社って組織は抜け目がないなあ……。
ちなみにAさん、この会社とは2次面接で終わり、より自分に合っていると思った別の会社を選んだ。一方で、その会社に入社した友人もいることも、お伝えしておきます。
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