「誰にでも、光る役割がある」
akaneが語る仕事--3
百人なら百の得意を探す
ダンスチームは社会の縮図
振付師はダンスの作品を創作する仕事です。頭の中ではストーリーや体の動き、音楽、見せ場、衣装など、考えることが果てしなくあります。そしてダンスの指導も、練習の段階から本番に迫る厳しさです。群舞ともなれば、50人以上のダンサーが舞台に上がりますから。
ただ、ダンス公演では実際に踊るダンサーと振付師だけが仕事をするわけではありません。誰にでも、そのチームでダンス以外に何かできる役割が必ずあります。衣装を縫うのがうまい人を始め、得意なものが音楽編集だったり、パソコン操作だったり、メイクアップが抜群にうまい人だったりと様々なんです。
例えば数字に強い人って、全ダンサーの動きを全て読めてしまう。先日も83人で一つの作品を作りましたが、彼女はすぐに人数を把握し、ダンサーを名前ではなく番号で頭に入れ、「23番はもっとこっちへ」「23番、24番、25番、同じ振りをして」と全体への指示をやってくれました。
その他にも、お金に関しての管理や配分が巧みだったり、パンフレット作りが好きだったり、お客さんに必要な情報を知らせる気配りが抜きん出ていたり。「これって社会に存在する仕事の縮図だ」と驚いてしまいます。どんなチームでも、得意なパーツを持ち寄って実現を目指し、人と一緒に仕事をするってどれほど楽しいことでしょうか。
今の世の中って、カテゴリーで分けられた職種名とか役割とかに自分を合わせようと努力しがちですね。でもそれで、本当に自分らしくやっていけるのかなと疑問に思います。だから私は、ダンスチームで共に活動する仲間に「自分をプレゼンして」といつも言っているんです。
ありのままをアピールしようよ
こんなことが得意なんです、と本人の口から言うのは恥ずかしいことだと思うかも知れません。それでも、資格もキャリアも関係のない、あなたのありのままというものを知っておいてもらう。例えば「声が大きいのが自慢です」って、ムードメーカーになりそうでいいなと思いませんか。「歌が得意」「字がうまい」「描くのが上手」「走りが速い」「重いものを持てる」「ものまねが好き」など、私も今までいろいろな得意技にどれだけ助けられたか分かりません。
打ち上げの会やミーティングの後でも、この自己プレゼンを私は「芸出し」と名づけ、いきなり披露してもらいます。「何もないから言いたくありません」という拒絶もOK。それも自分を表現したことだから。でもきっと、その人は得意なものを自分に問い続けますよね。それがいつか役に立つと私は信じています。
なぜなら、世の中で言う「個性」というものを勘違いして欲しくないからです。人と違って目立つことが個性だと思って、それを自分の中に探して見つけられなかったら、無い物ねだりで苦しむだけではないですか。それよりも、ずっと好きだったり、得意だったりしたことを丁寧に探してみましょう。
私自身は、自分が舞台に立つダンサーよりも振付師の道を選びました。もちろん踊ることは何より好きでしたが、ダンスの楽しさを人に伝えるのが得意だと気づいたからです。(談)