「真っ当な目的のチームを作ろう」
西條 剛央が語る仕事―2
方法がなければ作ればよい
チームの理念が本質からブレないために
「ふんばろう東日本支援プロジェクト」は、東日本大震災直後の2011年4月にパソコン1台で立ち上げた「物資支援プロジェクト」から始まりました。そこでは、全国の支援者が物資を必要としている被災者に直送できる仕組みを作ることで、3千カ所以上の避難所や仮設住宅群などを継続的にサポートすることを可能にしました。
また5月に立ち上げた「家電プロジェクト」では、個人避難宅も含め約2万5千世帯に家電を届けました。その後も、仮設住宅200カ所以上のインフラを整備した「PC設置で繋(つな)がるプロジェクト」や、自立を支援する「重機免許取得プロジェクト」「布ぞうりプロジェクト」「学習支援プロジェクト」など、50以上ものプロジェクトが立ち上がり、同時並行で運営していきました。ツイッターやフェイスブックなどのSNSを活用することで、「小さな力を集めて大きな力にする方法」を作ったのです。
とは言え、数千人のボランティアが足並みをそろえるのは大変なことです。リーダーに頼らない自立的なチームを作るには、まずそのチームの目的(理念:一番大事にしていること)を明確化し、それをメンバーに常に意識させ、そこを基点にそれぞれが判断できるようにすること。
そのためには、組織の理念を注意深く明記することが必要です。僕は「被災された方々が自立した生活を取り戻すサポートをすること」としました。「被災者支援」を目的としてしまうと、過剰支援になり、自立を妨げる可能性もあります。また「支援者がいなくなったら困る」となってしまったら、それは本末転倒です。
そこで最初から、「最終的には無くなることが目的」と言うことで、ありがちな「組織維持のための組織」にならないようにしました。実際、14年9月には無事発展的な解消で解体し、それぞれの活動に引き継がれていきました。仕事をする上でも、時々は立ち止まり、「そもそも何のためにやっているのか?」「これは目的達成のために本当に必要なことなのか?」と問い直すことは、本質からブレないためにもとても大切なことです。
「人間の本質」に沿うことでミスコミュニケーションを減らす
ネット上のコミュニケーションは、簡単そうに見えてひどく難しい。対面で「バカだなあ」と言われても相手の顔が見えていれば冗談と分かりますが、文章だけだとそれは百倍きつく見えるものです。そのため僕は、SNS上のトラブルを減らすために「建設的なやり取りをするための方法」を作って共有しました。詳細は本に著しましたが、要は「全ての人間は肯定されたい」という「人間の本質」に沿って、「必ず肯定してから意見を述べる」ということをルールとして共有したのです。感情的な問題は、ほとんどの場合、否定されたと感じることによって生じますから。
真っ当な論理が真っ当に通じるチームにするためには、感情のもつれが起きにくくする必要があり、そのためには肯定的なコミュニケーションをベースにしていくことが大事になります。(談)