働く人に会えば、企業の本当の姿が見えてくる。
どんな仕事でも姿勢ひとつで必ずおもしろくなる
中学から高校までをタイで過ごした私は、現地のインターナショナルスクールに通っていました。インターナショナルスクールでは英語で授業が行われるため、基本的な英語力はその間でかなり身に付いたと思います。卒業後は、海外の大学も視野に入れて考えたのですが、最終的に日本で福祉を学びたいという思いが勝り、上智大学の総合人間科学部、社会福祉学科へ。物心ついた頃から「障害を持つ人々が普通の暮らしをするのがどうして難しいのだろう」と考える機会が多々あり、福祉を学んで人の役に立つことが私の夢だったからです。
上智大学は授業をはじめ、学習環境が非常に充実した大学なので、勉強面では何の不安もなく、やる気十分でスタートしました。ただその頃の私には一点、悩みがありました。それが“日本語”。海外生活で英語力に自信がついた半面、日本語の表現力に少し不安があったのです。そこで私は入学してすぐ、放送研究会に入部。真剣にアナウンスの勉強を始めました。おかげで話すことに自信がつき、卒業時には人に教えられるまでに成長できたのです。たかがサークルと思われがちですが、取り組み方ひとつで、自分をレベルアップさせられることを、ぜひ知っていただきたいですね。
放送研究会の活動と同時にアルバイトにも力を入れました。倉庫の棚卸しから飲食店まで、短期のものも含めると20種類ほどの仕事を経験したのではないでしょうか。自分にはどんな仕事が向いているのか、アルバイトを通して徹底的に考えたかったのです。結局、私が出した答えは「どんな仕事もおもしろい」。大切なのは仕事内容ではなく、あくまで姿勢。単純作業でも、さらなる効率化を目指し、改善点を見つけて工夫することでおもしろくなるんです。たくさんのアルバイトのおかげで「私はどんな仕事でも楽しめる」と肝が据わり、就活が怖くなくなりました。
企業研究と同時にやっておくべき“働く人”研究
就活で重きを置いたのは、仕事とプライベートをきっちり分けた働き方。入学時には福祉の道に進むと決めていたものの、就活をスタートする頃には心境が変化していました。というのもインターンシップで厚生労働省や民間の福祉の企業でお世話になったのですが、内部を垣間見るうちに、「福祉を仕事にするより、別の仕事をしながらプライベートで福祉に関わる方が自分には合っている」と気づいたのです。福祉以外の企業を考えたとき、もっとも活用したのが新聞でした。インターネットよりも見ていたのではないでしょうか。企業のホームページにも事業内容は書いてありますが、直近の動向を知るにはやっぱり新聞が一番。情報が信頼できますし、企業研究には欠かせませんでした。企業研究に加えて私が時間を割いたのが、OB訪問による“働く人”研究。一つの企業で一人ではなく、多いときで三人、なるべく男女共に会っていただきました。外からでは見えない部分が必ずありますし、人と話すことで「もしこの企業で自分が働いたら」というイメージが湧きやすい。入社後、抱いていた理想とのギャップに悩まないためにも、OB訪問はやっておくべきだと思います。
私なりにがんばっていた就活ですが、第一志望だったアナウンサー試験の最終面接で落ちる、という出来事もありました。放送研究会で培った技術を生かしたくて、福祉のことを人々に伝えることに憧れて、最初はアナウンサーを目指していたのです。当然ショックは大きかったのですが、就活用に自分を取り繕って入社したところで、きっといつかダメになっていた。だからこのタイミングで、縁が切れて良かったと考え、頭を切り替えました。そこからは語学力を生かせる商社やメーカーを中心に就職活動をしました。商社の場合、いわゆる5大商社すべてでOB訪問を行いました。なかでも丸紅の先輩は本当に仕事が楽しそうで、働くことに希望が湧いたのを覚えています。その先輩たちに出会えたから、今の私があるようなものです。
たとえやりたいことが仕事でできなくても、大丈夫
丸紅には一般職で入社しました。「総合職向きだと思っていた」と友人からは言われましたが、仕事とプライベートでメリハリをつけたかった自分には、この働き方が合っています。一般職と聞くと、あまり仕事に深く関われないようなイメージがありますが、それは大きな誤解。現在は貿易事務に携わっており、契約書の発行から、船積みの手配、スケジュール管理、保険の手配など多岐にわたる仕事を海外スタッフと毎日連携して行っていて、期待以上のやりがいです。入社して意外に感じたのは、渡航経験が無い人や、英語が得意ではない人も社内にたくさんいたこと。語学研修の制度もありますし、語学は仕事を始めてから努力すれば十分に活躍できます。どうやら面接では、語学力よりもガッツを見られていたのだなと、入社してから気づきました。
そして休日などのプライベートの時間を利用して、福祉活動も行っています。社会福祉士の資格を生かし、区民委員として住んでいる区の保健福祉計画の立案に携わり、こちらはこちらですごく充実しています。よく「やりたいことを仕事にしよう」と耳にしますが、それだけが生き方ではないはず。仕事は仕事、プライベートはプライベートと分けることで生活にメリハリが生まれますし、プライベートの中で仕事のヒントが見つかるなど、いい相互作用もあります。ひとつのことを極めるのも素晴らしいですが、社会との接点をたくさん持つスタイルも、おすすめです。もちろん今後、任せてもらえる仕事は増えていくと思います。しかしそこはアルバイト時代に身に付けた“短い時間で最大の効果”を求める姿勢で取り組めば、きっと大丈夫。いまの働き方を長く続けていくことが、私の目標ですから。