仕事力~働くを考えるコラム

就職活動

「真っ当な目的のチームを作ろう」
西條 剛央が語る仕事―3

就職活動

なぜ真っ当にできないのか

仕事とは、社会における機能

本来、組織というものは何らかの目的を達成するために作られますが、日本には組織維持そのものが目的となった組織があふれています。後に日本最大級の組織となった「ふんばろう東日本支援プロジェクト」では、そうならないよう最初に同プロジェクトは「市民意志機能」であると宣言しました。つまり、機能することが本質なんだという当たり前のことを忘れないようにしたのです。

この観点からすれば、お金を稼ぐ「ジョブ」ではなく、社会において機能すること、つまり「ワーク」こそが仕事の本質ということになります。我々の活動を担った何千人というボランティアは、一銭の給料ももらってはいませんが、社会のためになることや、ニーズに応える働きによって社会的な機能を果たしたわけです。

最も多かったのは、僕も含め、他に生業を持って自身の暮らしに必要なお金は確保しながら、空いた時間や夜にボランティアをするパターンです。そういう人も、その人を支える家族も社会に役立つ仕事をしているわけですね。そもそも家庭を総合的にマネジメントする「家事」も、未来の人材を育てる「子育て」も、社会において立派に機能しているのですから仕事(ワーク)なわけです。実際、僕らの世代以降では、仕事と家庭を両立することはもはや常識になっていることからも、この仕事観が共感を得る時代になっていると思います。

「もったいない」が意思決定をゆがめる

ですから、一人ひとりの行動が社会に役立つものとなっていれば、組織(チーム)になることでさらに社会を良くできるはずです。しかし、2020年東京五輪の新国立競技場の問題や原発の再稼働など、外部の人間からするとなぜそのような意思決定がなされてしまうのだろうと思えることは世の中にあふれています。ではなぜ組織は真っ当なことを真っ当にできなくなってしまうのか?

例えば原発を廃炉にすると方向転換したら、長年つぎ込んできた資金や労力が百%埋没してしまう。だから、たとえ数%でも何十年かは事故が起こらないという可能性に賭けて、まずは再稼働させようという意思決定がまかり通っていく。これは今まで掛けてきたコストが埋没してしまうという「埋没コスト」を基軸とした意思決定なのです。一個人のことなら状況が変わったからやっぱりこうしようで済むのですが、全体の空気で決まると言われる日本の組織では特に、多くの人が関わり多くのコストを掛けるほど、「ここまできたらやめるわけにはいかない」という情緒に引きずられます。この点では、原爆を落とされるまで降伏できなかった時の日本と本質的には何も変わっていないのです。

ではどうすれば良いか? ここで鍵になるのが構造構成主義の「方法の原理」です。これは「状況と目的に応じて方法の有効性は変わる」というものです。シンプルですが、これは「現在の状況」と「目的というありたい未来」に基づいて行われる意思決定であり、「埋没コスト」という過去にとらわれた意思決定とは真逆になります。真っ当なことを真っ当にできるチームを作るためには、こうした考え方を個々人がインストールし、正しい意思決定ができるようになるしかないと思っています。(談)

さいじょう・たけお ●早稲田大学大学院客員准教授。1974年宮城県生まれ。早稲田大学大学院で博士号取得、MBA専任講師などを経て現職。独自のメタ理論「構造構成主義」を創唱。それを用いて東日本大震災直後の2011年4月に「ふんばろう東日本支援プロジェクト」を立ち上げ、ボランティア未経験ながら日本最大級の支援プロジェクトに成長させ、14年に世界的な賞アルスエレクトロニカ(デジタルコミュニティー部門)で国内では初となる最優秀賞を受賞。著書『人を助けるすんごい仕組み』『チームの力』ほか。
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