仕事力~働くを考えるコラム

就職活動

「独自を求め、我が声を聞こう」
皆川 明が語る仕事―3

就職活動

時を超える服でありたい

流行に関わらない決心

自分の服作りが独自なものであり続けるために、生地からオリジナルで作り、デザインしていこう。そして、長く大切に着てもらえる服を作りたい。それが20代で私の選んだ方向でした。

当初、生地工場で教わりながらオリジナルの生地を作るうち、産業の苦しい内情が見え、このままでは立ち行かなくなるという危機感を抱きました。

ファッション業界は、およそ半年ごとに新作を送り出し、シーズンの終わりにはバーゲンセールで安く売り切っていくのが慣例です。しかし、セールでも収益を確保できるように、アパレルメーカーや小売りは製造現場の労働価値を低く見てコストを抑える。私は、このヒエラルキーは製造業を危うくし、やがてメーカーも小売業も衰退して、全体が緩やかに死んでしまうと感じました。まず、製造業がきちんと元気なら、自然にメーカーは作る製品の可能性を広げられ、商品価値が高くなって小売業も売れる。そういう発想に変えていかなくては、と生地作りから始めました。

服作りをやりたい。でも、私とファッション業界の価値観は違う。生産を早く回転させ、結果、低い付加価値商品を大量に作ると、受け取る使い手は常に低いものにしか触れられなくなり、洋服への関心が減っていくのではないでしょうか。私はあまのじゃくかも知れませんが、ファッション業界のサイクルには足を踏み入れません。

洋服は10年、20年と持つものがほとんどです。そんな中にあって、大切に着たい服があるのに、それを1シーズンで変えなければ感度が悪いなどというのはおかしな物差しで、その人本来の感情ではなくそのように演出された社会の尺度でしょう。ブランドメーカーは毎シーズン最善の商品を出していると思いますが、次のシーズンにはそれに価値がなくなりますと言ってしまうことに賛成できないのです。

日本の技術を失いたくない

アトリエを持った初期の頃から、私は多くの職人さんや工場の方に支えられてきました。柄のイメージをデザインに起こしますが、仕上がりは私の頭の中にしかなく、独自を求める初めての注文ばかり(笑)。それを現実の品にするのは本当に大変な技術と創造力です。でも必ずやり遂げてくださる。

そういう信頼関係は一瞬で築くのは難しく、「信じて」と言葉にしても信じられるものでもなく、気の遠くなるようなやり取りを越えて生まれてきました。だから、本当にお世話になった生地工場さんには、1シーズンには必ず仕事をお願いするとか、工場が空いていないかとか、気にしながら先方の仕事量を確認しています。技術の高い製造業が立ち行かなくなったら、もう、日本のその素晴らしい技術は取り戻せないのではないでしょうか。

ファッション業界では、今新しい兆しも見えていますが、流行を作るという過去の商習慣をそのまま苦戦しながら続けている状態です。私は北欧が好きでよく訪れますが、長く用いてきた家具や服など、いい物が持つ目に見えない価値を誇りに思っているんだなと感じます。自分にとって心地良いから、好きだからそれを選んで、ずっと一緒にいる。世の中の流行とは関係なく、自分の眼を信じることが物作りを守っていくのだと思います。(談)

みながわ・あきら ●デザイナー、(株)ミナ代表。1967年東京都生まれ、文化服装学院卒業。95年服飾ブランド「ミナ」設立、2000年直営店オープン。03年ブランド名を「ミナ ペルホネン」と改名。06年毎日ファッション大賞の大賞受賞。オリジナル生地から創作する服やインテリアプロダクトは高い評価を得ている。また、デンマークのクヴァドラ社など海外テキスタイルメーカーにもデザインを提供。著書に『ミナを着て旅に出よう』など。
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