都内の大学生Aさんは今年5月、ある企業の最終面接に臨んだ。待合室に入る際、社員が持つ受付簿をちらっとのぞくと、10数人の名前が載っていた。例年、採用数は1けた。最後の最後に半分ほどの人数に絞られる計算だ。「何としてでもクリアしたい」。気持ちはいやがうえにも高ぶってきた。
受付で、数字を書いたネームプレートを渡された。「○番」。筆記と1次面接は1けたの番号だった。2次面接は1けた代。そして今度は、また違う1けたの番号だ。「ほかの会社だと、最初から最後まで同じ番号のはずなんだけどなあ」。なぜ、くるくる変わるのか不思議に思いながら、順番を待った。
緊張の中、30分待って受けた面接では肩透かしを食らった。役員も含め、ずらりと並んだ面接官の口から出てきた質問は「職種へのこだわりは?」など、答えやすい質問ばかりだった。「今、話題になっている君の大学のOB、OGってだれかな?」といった雑談のような問いかけも。なごやかな雰囲気で終わってしまった。
「えっ、こんなのでいいのかな?」。戸惑いは隠せなかったが、無事、内定の知らせが数日後に届いた。その後、内定者同士の会合などで情報をかき集めると、驚きの事実が分かった。最終面接の結果、受かったのはネームプレートの1番から×番までの全員。その間にAさんの番号もあった。逆に、×番からあとの番号を割り当てられた就活生は全員、落ちていた。
これって偶然なのか、それともあらかじめ、最終面接の前に内定者が決まっていたのか。Aさんには、後者のように思える。なぜなら、落ちた中には知り合いが一人いた。その人に最終面接の様子を聞いたところ、厳しい質問が浴びせられたという。正反対だった。振り返ると、Aさんは2次面接が最もきつかった。一方的に決めつけるようなモノの見方に対して、「社内にはもっといろいろな考え方の人がいると知っておいた方がいい」と諭されたり、「なぜ、社内見学に来なかったの?」と聞かれ、返答に詰まったり。正直、次に進めるか不安だったぐらいだ。
ネームプレートの番号が面接のたびに違うのは、数字の順番が会社の評価の表れなのだろう。それにしても、なんで最終面接をする必要があったのだろうか。心の中で、繰り返しわき起こる疑問だが、それは入社するまでは黙っておこうと思う。
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