就職活動

就活実話

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就活生を所属大学によって「足切り」する企業があるかと思えば、来て欲しい大学の就活生を「プレゼント漬け」する企業もある。

有名私立のA大に通うBさんはちょうど1年前、ある金融系企業の説明会に参加した。説明会といっても、オープンな集まりではない。プレエントリーを済ませたA大の学生限定。会場に入ったBさんが見渡すと、100人ほどの中にキャンパスで見知った顔がいくつもあった。「お~、あいつも来ているのか」。さすが、就職希望企業人気ランキングの常連だけのことはある。

席に着く前に、まずは好きな飲み物のサービス。そして、その企業の活動ぶりを紹介した約1500円相当の市販本が配られた。これぐらいなら、ほかにもありそうだ。

全体説明の後、営業や海外、渉外など興味ある業務の話を聞くため、各部署の社員が座るブースに散らばった就活生が再び、自らの席に戻ってきた時に待っていたのは、某人気ブランドのドーナツだった。店頭に行列ができることもあるというスイーツ。会場を歩き回って、小腹が空いたころと見計らった絶妙のタイミングに、「お~っ」と、軽いどよめきが起きた。

さらに極めつけは、はんこ付きボールペンの申し込みはがき。はがきに、自分の名前を書いて郵送すれば、ただで商品がもらえる。買えば、2千円以上はするんじゃないかなと思えるプレゼントに、会場は再び、ざわめいた。

Bさんにとって、この企業は優先順位としてそれほど高くなかった。それでも、就活が始まる前に上級生から「説明会でボールペンなどいろいろな物がもらえる」と聞き、「一度のぞいてみるのも損はないなあ」とプレエントリーする気になった。先輩に言われた通りの数々のプレゼントに、会場を出た就活生の間では「やっぱり出たね」「すごいよ、本当に」と、その話題で持ちきりだった。

Bさんには、うちの大学の学生を採用したいという企業側の熱意がひしひしと伝わってきた。これだけ丁重な扱いを受けたら、ぐらっと来る学生もいるに違いない。だが、Bさん自身はその後、エントリーすることはなかった。プレゼントとは関係なく、説明会に出た社員の姿などを見て、自分の働き場所としては「かっこよすぎる」と思ったからだ。

はんこ付きボールペンはちゃっかり手元にある。ま、いいか。

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