明日は今日よりもう少し。一歩ずつ成長していこう
7月1日、SOMPOホールディングスグループ内にあった介護事業4社が合併し、新会社SOMPOケアが設立。その社長に遠藤さんが就任した。
「それまでバラバラだった在宅、施設介護といったサービスを一体化させることができました。地域本部制による地域ごとの状況変化への迅速な対応に加え、人材流動によってフレキシブルな人材活用も可能となります。お客様の利便性は格段に向上するでしょう。『介護の未来をSOMPOが変える』というキャッチフレーズ通り、これからも業界の先駆者として新機軸をどんどん打ち立てていきたいですね」
遠藤さんは40年近くずっと保険畑を歩み、介護事業の経営を任されたのは2015年のことだ。「介護の世界は全く知りませんでした。だからまずは現場を見ようと半年で全国の約120カ所の事業所を一つひとつ実際に訪問し、職員らにヒアリングを行いました」
その中で要望されたことの大半が教育の充実だった。当時は介護主任が自己流で新人を指導していた。「人を育てない会社に良質な人材が来るわけがない」と、遠藤さんは就任後わずか4カ月で大規模な研修センターをつくる。介護付きホームの部屋や浴室を再現し、現場と同じ環境で学べる施設だ。
この対応の早さに驚いたのが職員たち。「意見を言えば実現するんだという機運が生まれました。本社と現場との距離が少し縮まったのがうれしかったですね」
遠藤さんは1976年、実力主義の社風に引かれて大手損保会社へ新卒で入社。自身の現場主義はその当時からだ。最前線で働く保険代理店の人たちとのコミュニケーションを大事にしてきた。
そんな遠藤さんも、若い頃は会社を辞めようと思うような大失敗を何度か経験したという。でもその都度、上司への報告はすぐにした。「ボヤのうちに相談すれば大事に至らずに済むんです。こういった経験を通して私が学んだのは、自分に正直に、誠意を持って人に接すれば、どんなことでも必ず解決できるということです」
毎年、新入社員に伝えていることがある。「手帳を1冊用意し、先輩から聞いたこと、研修や本などから感じたことを毎日メモして欲しい。その時の気づきを日々書き留めることが、一歩一歩成長していくことにつながりますから」
好きな言葉は「明日は今日よりもう少し」。少しずつでも成長していけたらいい。自らもいまだ、これを指針にしている。
(井上理江=文 南條良明=写真)