失敗してもめげない。成功の糧となるから
犬の美容専門学校を1967年に設立し、動物看護のパイオニアとして1万人以上の卒業生を世に送り出してきたヤマザキ学園。時代の変化に合わせ、建学の精神「職業人としての自立」の言葉通り、動物看護師をはじめとした職業を社会に定着させてきた。そして今年、創立50周年を迎える。
「設立当時、犬は外で飼う家庭がほとんど。でも今は多くの人が動物を家族の一員として捉え、家の中で共に暮らすようになりました。事実、ペット市場は1兆5千億円に届くと言われ、それに伴って動物に関わる職業も格段に増えています。人と動物の関係は大きく様変わりしましたね」
感慨深げに山?さんはそう語る。少子高齢化、核家族化は進み、動物の果たす役割もますます大きくなっていくと考えている。「病院や介護施設では、動物を介在させて人間の心身を癒やすアニマル・アシステッド・セラピーの研究や実践も進んでいます」
学園の創始者・山?良寿氏を引き継いで理事長となった娘の山?さんは、「動物看護を学問として確立し、動物とのより良い共生を現実のものにしたい」という良寿氏の思いを具現化すべく、20年以上奔走。その間に学校法人の認可を獲得、大学を設立した。
「動物にも看護が必要であり、そのプロを育成する必要がある。その趣旨を伝えるため、当時、文部省(現文部科学省)に何度も足を運びました。もう数え切れないぐらい」
説得は一筋縄ではいかなかった。「でも失敗しても、それは糧となり、ヒントとなって成功を導き出す。だからまたチャレンジし、成功したらうれしいから更に挑戦する。その繰り返しでここまで来ました」。情熱がそこまで駆り立てた。
「教育って良い仕事だなって誇らしく思います。入学から数年間、学生の大切な命を預かり、職業人として自立するまでの成長をサポートできますから。特に最近の学生にはとても大人びた面と子どもっぽい面があり、そのアンバランスさが魅力。彼らの意表をつく言動や発想が社会をより良い方向へ導くのではないかという可能性を感じます」
いつも傍らに愛犬がいる。思い通りにはいかないけれど、それが動物を飼う面白みでもあるという。「自分が変わらなければ、と気づかせてくれます。命あるもの同士、その触れ合いは人生を豊かにしてくれる。動物たちが教えてくれることはたくさんあります」
(井上理江=文 南條良明=写真)