どんな時もフルスイング。挑戦しないと進化はない
大手IT企業の子会社で、スマートフォン向けの広告事業を展開するベンチャー企業。その社長の山内さんは「スマホ市場は変化が速いだけに顧客ニーズ をどこよりも先んじてキャッチし、顕在化して、最速で商品とサービスを提供していく」というスタンスで同社を急成長させてきた。
新卒で入社し、3年間で子会社3社の設立に携わり今のポジションに。29歳の時には最年少で本社の取締役に抜擢(ばってき)された。その成功要因は「最終的には『気合』です」と笑う。
「同期入社が101人。その内定懇親会では、学生時代に既にコピーライター賞を取ったとか、バイリンガルだとか、優秀に思える人ばかりで圧倒さ れた。では自分は何で勝てるか。やる気しかない。たとえ失敗してもいいから何でもチャレンジしていこうと決め、実践したのが良かった」
だが現在の会社を設立後2年間は厳しかった。ガラケー全盛で業績が伸びず、資本金も尽きて倒産しかけたという。
責任ある仕事を任せてくれた上司と、信頼してくれる社員に申し訳なくて自己嫌悪の日々。考え抜いた末、いつしか守りに入っていた自分に気づき、こ こは一つ初心に帰りベンチャーらしく勝負してみようと気持ちを切り替えた。事業内容を百八十度転換し、黎明(れいめい)期のスマホに特化。その大胆さが吉 と出て一気に業績は伸び、危機を逃れた。
「母子家庭で育ち、僕の場合は心に居場所のない感覚、虚無感があるんです。でもそれが自分の原動力になっていると思う。以前『才能は天性や運で与 えられるものではなく、欠如を埋めるための努力が才能なんだ』と話してくれた人がいたのですが、僕はその欠如=虚無感を埋めたいから頑張れる」
将来どうありたいかという答えは正直まだ模索中だ。ただ、脱皮しない蛇は死ぬという例えがあるように、挑戦しないと進化はないと思う。だから何が あってもフルスイングで挑戦し続ける。そこを外さなければおのずと良い方向へ向かうと、31歳の辣腕(らつわん)は確信している。
(2月2日掲載、文:井上理江・写真:南條良明)
出典:2015年2月2日 朝日新聞東京本社セット版 求人案内面