仕事力~働くを考えるコラム

就職活動

「デジタルは深く人を支える」
齋藤 精一が語る仕事―4

就職活動

手をつなぐ発想を始めよ

進化は技術だけじゃない

今は、時代が激変していると言われています。日々の仕事でもスピードや改善が急務であり、企業間の競争力が求められている。でも待てよ、と思います。企業が勝ち抜くためには、これからも業界市場でシェア争いをし続ける以外に方法はないのかと。

僕は1年ほど前から、機会を捉えて「プロトコルの必要性」という話をしていますが、それは共通言語で話し合い、共に考えませんかという提案です。例えば電気メーカーが他業種とコラボレーションをしたら、もっと新しくて豊かなサービスができるのではないか。また、自治体や行政に企業側から斬新な提案をしてはどうだろうかなど、僕のような外部の人間からはいろいろな新しいチャンスが見えます。

それで「なぜ、皆さんは一緒にやらないの?」と異なった組織の間で話すと、行動してくれる人が必ず存在します。その柔らかく動ける人を僕は「リベロ」と呼んでいます。バレーボールで、選手交代の時にも審判の許可なくコートを出入りできるポジション。つまり、現場で判断して動いていいということですね。仕事の上で何かを変えるべきだと思ったら、外から扉をたたく人と組織の内側からたたく人が、同時にたたかないと動き始めません。だから、行政でも民間でも、学校法人でもそうですが、互いにこのリベロの役割をしている人を探し当てることが、仕事力として重要だと思っています。

たぶんまだ日本では、組織にいながら業界全体の発展を考えるような立ち位置がほとんどないでしょう。だからこそ、プロデューサー的な意識を持つ人が大切になってくると思います。自分の体験からですが、一時期建築の仕事をし、その後業種を変えてフリーランスなどでいろいろな活動をしていた時に、いきなり点が線になり、わーっと面に広がった分岐点がありました。幾つかの視点を獲得したからでしょう。考えてみれば、それぞれの強みを組み合わせていくからこそ、僕らは一層パワフルな仕事ができるようになるのです。

自立が当たり前の時代へ

これからのビジネスモデル自体が、量子論化されていくと多くの人が言い、僕もそう思います。それは例えば絵本『スイミー』のように、小さい魚たちが集まって大きな魚の姿を作り、対等に大きな魚と戦う時代になってきたということです。自立してフリーランスで働ける能力を磨き、その力を幾つかのプロジェクトで活(い)かす。そして、プロジェクトの全体を見て動かしていくクリエーティブプロデューサーの役割は、ほぼ全ての仕事を体験してきた人が受け持つ。

日本ではまだ一般的な仕事の仕方ではないですが、目的を同じくする人が集まるのは楽しい働き方ですよね。僕は様々にそういう提案をしたいし、実行していきたい。2020年のオリンピック・パラリンピック大会は日本の人が心を一つにして応援し、自分のできることで力を貸したいと思う祭典です。まさに『スイミー』の世界をみんなが体感して、これからの働き方や協力の方法のバトンを次へ渡していけるのではないでしょうか。

僕が手掛けているデジタルはますます日本人の暮らしに根づいて、人々を支え、幸せにすると思います。そしてあなたにもいつか、自立する働き方を選ぶ時が来るかも知れません。(談)

さいとう・せいいち ●1975年神奈川県生まれ。(株)ライゾマティクス代表取締役。東京理科大学理工学部建築学科卒業。コロンビア大学大学院で建築デザインを学びニューヨークで活動開始。2003年の越後妻有アートトリエンナーレでアーティストに選出され、帰国後06年から現職。アート、コマーシャルの領域で立体、双方向性の作品を数多く手掛ける。国内外の広告賞多数受賞。15年ミラノエキスポ日本館シアターコンテンツディレクター。
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