「日本ファンを増やし続ける」
谷川 じゅんじが語る仕事―4
文化を磁石に人を呼ぼう
感動は人から人へつながっていく
集客産業の一つに観光・コンベンション領域があります。最近「MICE(マイス)」という言葉がよく使われるようになりましたが、これは企業などの会議や、報奨・研修旅行、また国際機関・団体・学会などが行う国際会議、展示会・見本市・イベントのことです。ビジネスに起点を置いた集客ですね。
一方、人気の芸術祭や祭り、テーマパークの存在も重要です。街で開催されるファッションイベント、アートイベント、フードイベントも大きな意味でコンベンションです。実際に人を集めて感動させ、自分たちの伝えたい価値をリアルに体験して頂く。感動を記憶として持ち帰り、周りの人々に伝えて頂く。これがコンベンションの核であり力です。世界の国々がその価値に気づき、様々な方法で「集客すること」でしのぎを削っています。
では日本はどうか。様々なコンベンションプロジェクトが施行されていますが、そのスタイルや思考は自国のマーケットへ向けたものが多く、海外からの集客を戦略的に考え、プログラムを組み立てて運営されているものはまだまだ少ないと思います。そこには、真に発信力があり影響力のあるインフルエンサー、オピニオンリーダーの来場はどのくらいあったでしょうか。
自分たちの仕掛けが本当に機能し影響を与えているかは、身近な評判で分かることではないし、それは本当の評価ではありません。僕はプロジェクトを行う時にOGSMフレームワークで思考します。「目的」を考え、「ゴール」を設定し、「戦略」を組み立て、その成功を何で「評価」するか。これによって、感動という魅力的でチャーミングな価値を現実的なプログラムに変換するのです。体験によって生まれた感動が人々の言葉を通じて広がっていく。体験が本当に重要なキーワードになってきたと感じています。
人間は感情で行動する
楽しそうだと思えば世界のどこへでも、地球を半周してでも移動する。それが人の本質だと僕は思います。心からリラックスできたり、ドキドキするシチュエーションがあったり、新しい価値を見つけられたりするなら、そこに身を置いてみたい。それが豊かに生きることだし、その豊かさを提供することこそ、僕らが未来へ向かって取り組むべき仕事でしょう。
僕は「和体験創造相関図~ニッポンマンダラ」というチャートを作りました。喜びを創り上げるためのクリエーティブテンプレートです。コンテンツを「美・知・地・遊・健・食・住・衣」に分類し、「間」という日本独自の美意識でつなぎます。このテンプレートを使うと誰でもワクワクするような企画が生み出せるんです。
日本には歴史や文化、自然、食など世界に誇れる資産・財産がたっぷりとあります。また、最先端のデジタルカルチャーやマンガ、アニメもそうですし、都市の安全や清潔も、ある意味コンテンツです。新旧が混在するポジティブで美しいカオス、それも日本なのです。 もっともっと国際社会に日本のファンを増やし、海外の人がインターネットで見るのではなくこの場に飛んできてくれるようにしたい。「いつか日本へ行ってみたい」が世界の合言葉になる、そんな心積もりで自分の仕事を手掛けてみてください。(談)