仕事力~働くを考えるコラム

就職活動

「どんな体験もギフトに違いない」
福岡 元啓が語る仕事--2

就職活動

本気なら粘りを手放すな

思いも寄らない事件記者に

色々な人に会えて、様々な世界を見ることができる。そしてそれを自分がどう感じたかを伝えられる。そんな憧れを抱いて就職活動をマスコミに絞り、一通り受けて全て不採用。その後、毎日放送の2次募集で採用されました。配属は深夜のバラエティーラジオ番組のディレクター。慣れない仕事に悪戦苦闘しながらも、ある上司からは前掛けをしろと指示されるなど、僕の殻を破ろうという意図かなと思うような、むちゃぶりの激励を面白く感じて真面目に応える日々でした。
 そうしてラジオ番組を4年間担当した後、テレビ報道局に記者として異動となりましたが、初めての取材企画はびっくりするほど低視聴率。ただ局内にはとにかくスクープを取った人間が1番という空気があったので、僕は半ば自主的に危険な事件取材をやり始め、上司の許可も取らずに出張や張り込み取材を行っていました。そうした取材がきっかけで、街角の偽募金が詐欺罪にあたるという最高裁判例事件となった「追跡!謎の募金集団」特集などが、評価されるに至りました。追い込まれてからこそ、人は動き出せるのかも知れません。
 ほどなくして大阪府警記者クラブに配属され、刑事部の捜査1課、2課、4課担当に。殺人などの強行事件や汚職事件、そして暴力団関係などについて担当するいわゆる事件記者です。僕にとってはまたゼロからのスタートですが、記者は夜討ち朝駆けで警察官の自宅などへ通い、情報を探らなくてはなりません。もちろん警察官が話してくれるはずもなく、たとえ寒さに震えても玄関前で待ち続け、スクープとなるネタを探り続けました。
 これはひたすら根比べです。どれだけ通えば情報取得の可能性があるのかは分かりません。僕にできることは愚直に、連日、長時間、ただ立ち続けることだけでした。でも「こいつは本気だな」と信頼されると、守秘義務に触れない範囲なら少ししぐさで分からせてくれたものです。例えば、玄関先で警察官が「吸い終わるまでは時間を作る」というようにたばこに火をつける。僕は手短に質問し、相手の遠回りな答えから状況を解釈していく。そこからスクープをものにする手応えをつかんでいきました。

「自分が知らない自分」の発見

汚職などの知能犯事件や、強行犯罪者への取材では脅迫まがいのことや車で追われるような身の危険を感じる事態もあり、事件記者は想像していたよりもずっと過酷な仕事でした。そもそも全く希望していなかったし、24時間いつ電話が鳴るかも分からない緊迫した毎日で休みもほとんど取れませんでした。
 しかし、やってみたらハマってしまった。大阪府警配属前に挑戦した自主的な取材番組によって、追求していく面白さに気づき、僕自身の知らなかったもう一人の自分がそこにいたという感覚でした。それが事件記者として踏ん張れた理由の一つかも知れません。東京への異動を打診された時に「もうちょっと大阪府警にいたい、1年待ってもらえますか」と願い出たほどです。
 放り込まれた状況によって違う自分を新たに知る。これは誰にでも起こりうることだし組織で働く恩恵でもあります。まだまだ耕されていない仕事力は潜んでいますよ。(談)

ふくおか・もとひろ ●(株)ジンプク代表取締役CEO。プロデューサー。1974年東京都生まれ。早稲田大学法学部卒業、98年(株)毎日放送入社。ラジオ局ディレクター、報道局にて大阪府警サブキャップなどを担当。東京支社にて2010〜17年テレビ番組「情熱大陸」プロデューサーとして365本を手がける。ギャラクシー賞ほか受賞多数。20年映像制作を通じて企業の課題を解決する会社「ジンプク」を毎日放送から出資を受け設立し独立。早稲田大学大学院経営管理研究科修了。著書に『情熱の伝え方』がある。
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