「プレッシャーをエネルギーに」
北條 真紀子が語る仕事--4
一回ごとに全力を注いで
自分の持ち味を分析しよう
テレビショッピングのキャストとして、試行錯誤しながら私がつかんでいったのは、まず自分が商品の一番のファンでなければお客様に魅力が届かないということでした。そのためには機能や背景を徹底的に調べ、さらに、お買い求め頂いたらどんなうれしい変化が起きるかまで追求していきます。そしてお伝えしているうちに「やっぱり私も買おう」と自分自身がユーザーとして欲しくなった瞬間に、お買い上げ数が大きく動き出す経験も少なくありませんでした。
番組中は、テレビをご覧の不特定多数の視聴者の方に向けたメッセージではなく、お一人お一人に対してご説明させて頂く気持ちでいます。例えば私は、ラジオ番組でパーソナリティーとリスナーがやり取りしたり同じ感覚を共有したりしている、あの距離の近さが大好きです。そんな心地良い親しみを目指していきたいです。
キャストたちはアプローチの仕方も持ち味もそれぞれですが、私はお客様に「今日は北條さん出てるかな?」と気にかけて頂けるようになれたらうれしい。たまに電車で「あのコスメは本当にいいんですか?」と声をかけられたり、タクシーの運転手さんから「妻がいつも観(み)てますよ」と声をかけて頂いたりすることがあります。そんな時、お客様が私を身近に感じてくださっているうれしさと共に、改めて良い番組を作っていきたいと強く思います。
私たちショップチャンネルのセールスの要は、ショッピングを楽しんで頂くためのサポートであると感じています。お客様がまだ気づいていない疑問点までこちらが先に感じ取り、情報をお伝えしていく。「ああ、それなら欲しいわ」と納得し、心が躍る瞬間をお届けしたいのです。
工夫を重ねキャリアを築く
この仕事を始めてから21年が経ちました。連日、セールスでホームランを打ってきなさいと言われる世界です。最初の頃は役割が苦しくて離れたいと思った日々もありましたが、そのプレッシャーを今はモチベーションに変えて挑めるようになりました。驚くような人気を集める時もあれば、思うようなセールスに届かない時もあります。しかし、どんな時でもテレビの向こうにはお客様がいらっしゃる。一回一回の放送を最後まで楽しんで頂けるよう、できる限りの全力を尽くしたいと思っています。
また、休日にショッピングや旅行などに出かけても、途中で「あの商品は、こんな場面で使えるんじゃないかな」「次のオンエアでこのエピソードをご紹介しよう」と、気がつけばごく自然に頭の中に浮かんできます。特に意識していなくても仕事と私生活がリンクしてしまう。個人的な楽しい体験も番組の中についつい反映させてしまいます。
そして、キャストという仕事に関心のある方や後輩たちにも、テレビショッピングで一番大切な、観ていて楽しい番組を全力で目指して欲しい。直接お目にかかることはできなくても、どうすればお客様が「ショップチャンネルから元気をもらえる」と感じてくださるか、ワクワクして頂けるか。工夫や経験は年月を重ねて蓄えられ、長く続けていけるその人らしい仕事力になるはずです。(談)