「プレッシャーをエネルギーに」
北條 真紀子が語る仕事--3
誰よりも商品のファンに
自分が欲しくなるまで価値を追う
テレビショッピングのキャストに採用され、2週間の研修を経て60分の生放送がスタート。キャストとしての役目や番組の進め方、商品紹介に関しての指導は研修で受けましたが、セールスでどうしたら成果を上げられるかといったことについては明確な答えはもらえませんでした。
なかなか思ったようにセールスが伸びない中、自分のオンエアを見て直すべき点を探し続けました。やがて、商品の価値は自分の言葉で伝えなければお客様に届かないと気づかされ、私らしい番組にしていこうとスイッチが入ったのです。
番組にはメーカーのご担当者などがゲストとして登場してくださいます。ただ、生放送の打ち合わせが直接できるのは直前の1時間だけ。ご紹介する商品については事前に勉強していますが、加えてゲストと同じ熱意を持って商品をご紹介するために、ここが大切な魅力だという要の部分をつかむことに集中します。そして「これがあったらどんなに楽しいだろう」と、番組放送前も放送中もお客様に投げかける言葉を常に探し続けています。
例えばあるフィットネスグッズを担当した時のことです。私には必要ないかも知れないけれど、この商品に魅力を感じてくださるお客様は多くいらっしゃるはず。そうしたお客様のニーズに応えるためにはどんな情報が必要なのか、模索していくうちに「やっぱり私も買おうかな」とすっかり欲しくなってしまったのです。
本音でそう感じた瞬間から言葉はお客様の心に刺さり、セールスが驚くほど大きく伸びていきました。逆に、自分自身が欲しいと思えるまで商品の魅力を深掘りできず、セールスに反映できなかった番組では、もっと何かできたのではないかという思いが残ります。
どの商品でもそうですが、機能や品質の良さを伝えるだけではまだ足りない。お買い求め頂いたら、どんな楽しさや便利さがプラスされるのか、どんなうれしい変化が起きるのか。それをお客様が想像できるところまで、商品の一番のファンとして追求し伝えることが私の仕事だと思っています。
決して人任せにはしない
現場では何人もの番組スタッフが動いていますが、画面に映る手元のカットは60分間全てキャストの責任です。だから私は人任せにしないことを自分に課し、不明点があれば自ら解決しようと心して仕事に臨んでいます。
担当する商品はジュエリー、洋服、化粧品、食品など多岐にわたりますが、例えば食品などは工夫がいります。きれいに味わいながら食レポをし、さらに自分の手元にある商品をおいしそうに見えるアングルに向けるなど、キャストは同時にいくつもの作業をこなしているのです。お客様は商品と共に、箸の使い方やマナー、しぐさまで見ていらっしゃる。失礼があってはいけないと、デビュー当時は緊張して食品をうまく見せられず深く反省することもありました。
60分間の生放送でたくさんのお買い物情報と最高のエンターテインメントをお送りするため、試行錯誤の日々が続きます。(談)