仕事力~働くを考えるコラム

就職活動

「自分から変化していくしかない」
北川 達夫が語る仕事--4

就職活動

宇宙飛行士に学ぶ協働力

学力以外の能力も育てる

日本では「言わなくても分かる」という歴史が長かったため、良くも悪くも国際的なコミュニケーションが今でも苦手なようです。僕はそれを変える手立ては教育にあると考え、国際的な教材開発を仕事としてきました。現在取り組んでいるのは、宇宙飛行士の訓練を学校教育や企業教育に活用するプログラム「DiscoveRe Method(ディスカバリーメソッド)」の開発です。
 国際宇宙ステーションで活躍する宇宙飛行士は世界中からえりすぐられた人々ですが、厳しい環境で言語や文化の壁を乗り越えて協働します。これこそ究極の「異質の社会集団」ですね。世界の縮図でもあります。一般に日本人は日本人同士なら絶大な団結力を発揮しますが、異質な社会集団に組み込まれると「個」として活躍するのが苦手とされる。この一般的傾向を、宇宙飛行士の訓練方法を活用して改善できるのではないかと考えたのです。
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の協力を得て、Space BDとZ会グループの二つの企業の主導によりプログラム開発が進められています。世界中の誰とでも、共通のゴールを目指して協働できるような能力を育むためのプログラムです。先生が教え込むのではなく、自分で自分を変えていく方法というのが特長です。
 例えば社会人でも「あの人は学歴は立派だが仕事では精彩に欠ける」と言われることは少なくありません。そう言われてしまうのは、自分の真価を社会で発揮する能力が乏しいから。自分の思考や行動を振り返り、自分で自分を変えることができていないからだと僕は考えます。
 この、自分の真価を社会で発揮する能力のことを「非認知能力」と言います。意欲、忍耐、協調、共感などですが、長らく「見えない力」とされてきました。今開発しているのは、この能力を見えるようにして、自分の思考や行動を振り返り、自分で自分を変えていくプログラムです。これにより、国際社会の異質な集団に組み込まれても活躍できる、そんな人になって欲しいと願っています。

日本人の強みってなんだろう

際的なコミュニケーション力と言うと、ロジカルでドライなイメージがあるかも知れません。しかし、現実にはけっこう情緒的なものです。宇宙飛行士の採用選考では、受験者に対して「一緒に宇宙に行きたい人は誰か」を答えさせるそうです。結局は人と人との関係なんですね。自分の知識や能力を伸ばすだけではなく、人を引きつける要素、信頼される人格も必要ということなのでしょう。
 これまで国際宇宙ステーションの船長には、若田光一さんと星出彰彦さんの2人の日本人が選ばれています。2人が傑出しているのはもちろんですが、日本人の調和と協働を大切にする傾向も関係しているのではないでしょうか。それを日本人同士で発揮するだけではなく、異質な集団でも発揮することができれば、世界中の人から信頼されるリーダーになれるということです。
 このように、日本人の弱みは同時に強みにもなり得ます。自分の弱みが強みかも知れず、まだ知らない力もあるかも知れない。それを将来にどう活(い)かすか、機会を得て知り、成長したいものです。(談)

きたがわ・たつお ●Space BD株式会社シニアアドバイザー、星槎大学客員教授。1966年東京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、外務省入省。在フィンランド日本国大使館在勤(1991~98年)。帰国後に退官。国際的な教材開発技術者として、日本を含む各国の教科書・教材を開発。現在は宇宙飛行士の訓練法を学校・成人教育に応用する方法を開発中。著書『苦手なあの人と対話する技術』ほか多数。
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