「迷っているなら、動く時です」
仲 暁子が語る仕事―4
「私が正しい」から脱皮しよう
仕事力とは人を活(い)かすチカラ
2010年に会社登記をして、私は26歳で今の会社を立ち上げました。
正直に言えば、企画や仕組み作りには自信があったし、営業も苦手ではないし、結構自分はハイパフォーマーだと思っていました。集中力を駆使して、必ず結果は出せると。だから一緒に仕事をする人がそのレベルに達しないと「何でできないの?」と口に出してしまうタイプです。仲間がうまくやれないなら、私がやるしかないといっそう突き進んでしまう。
人間は、一人ひとりが違っているから価値があるんだと頭では分かっている。でも組織を運営する立場になると、ついて来られない人を責めてしまう。矛盾しています。
それは学生時代にもつらい経験をして、気づいていました。自分で企画したミスコンテストをグイグイと引っ張っていき、結果的にミスコン実行委員会が空中分解してしまった。チームをまとめる力や、リーダーの素質がないからなのだろうか。数日はベッドから起き上がれないほど落ち込みましたが、では、一体どうすればいいのか、何を学べばいいのか、苦しみながらも答えを見つけることはできないままでした。
そんな私が「人を活かし、チームとして結果を出す」ということを学んだのは会社のメンバーからです。
それまではチームよりも一人で仕事をする方が楽だし結果も出ると思っていましたが、今の会社の初期メンバーは皆自立していて、仕事の能力もすごく高く、それぞれが他のメンバーには絶対負けないという領域がありました。そういう戦闘値の高いメンバーが集まると、一人でやるよりも圧倒的にパフォーマンスが出る。そのパフォーマンスはユーザー数などの数値にも結果として表れ、チームでやることのすさまじい威力を実感しました。
決断と失敗を貯金する
「こうするべきだ」「私の考えは正しい」と若い時期は思いがちです。仕事に一生懸命な人ほどそれが強く、あるところまでは成果が出ます。だから「これが正しい」と思うなら、自分で決断してやってしまいましょう。うまくいっても失敗しても、人からやれと言われたことじゃない、という点が大事です。
我を通し、失敗し、自分で痛みを感じる。それによって多くを学ぶことができ、成長できるのです。多くの失敗をするうちに、不思議と人の仕事もよく見えるようになる。いわゆる「ふところが深い」と言われる人って、自分自身の失敗経験をかなり持っていて、でも、失敗は負けではなく糧だということを知っているのだと思います。
インターネットでいくら人の体験を検索しても、膨大な情報を集めても、そこにあるのはあなた以外の誰かの体験や知識だけ。「こうやったら仕事が成功した」と語る人が何万人いようと、それはあなたではない。どう考えてもつまらないですよね。だから、自分に経験の贈り物をするには、いろいろな人と仕事をやってみることだと思います。時には鼻っ柱もへし折ってもらいましょう(笑)。
迷ったら、メリットとデメリットを紙に山ほど書き出して、とにかく自分で決断してみる。そうやって、次へ行きませんか。(談)
出典:2015年2月22日 朝日新聞東京本社セット版 求人案内面