「迷っているなら、動く時です」
仲 暁子が語る仕事―3
捨てきれない夢は潰そう
就職試験に落ちても良かったと考えてみる
私たちの世代は、夢を持て、やりたいことを仕事にしようと応援されているように見えるけれど、実は選択肢が多すぎて息苦しい。何をやりたいか分からないと悩み続けてしまいます。だから就職試験で不合格になったら、向いていないことを一つ教えられたと考えればいい。悔しいし、がっかりもしますが、「ここはあなたの居場所ではない」と淘汰(とうた)してもらえたのです。他人の目は、ずっと確かに自分を見てくれているものです。
例えば会社で働きながらいつかは音楽で食べていきたいと思うなら、まずは音楽業界にぶつかってみることが先です。人にどう言われようとがむしゃらに。やるだけやって自分にダメ出ししたら、そのジャンルも淘汰できます。抱いている夢には真っ先に手を付け、判断する。失敗の数は多いほど自分のことがよく分かります。面白い仕事に出会えるかどうかは、確率論です。
私がビジネスSNSを立ち上げたのも、就転職の出会いの機会を圧倒的に増やすためでした。
ある程度の社会人経験を積むと、例えば「先輩のように時間を惜しまず仕事をしてみたい」とか、「人を支える仕事がしたい」とか、自分にとっての軸となる働き方が見えてきます。そうなったら次は、いろいろな企業の「人」に気軽に会えるようにしたかった。なぜなら、今までのような人工知能システムに、膨大な会社情報と個人情報を入れてマッチングさせても、最適な会社を選べるなんてあり得ないと考えるからです。だから、実際にオフィスに足を運んでもらい、その会社のビジョンや価値観を肌で感じてもらう。それが究極のマッチングなのだと思います。
プログラミング技術が発想を仕事に変える
自分でプログラミングをしてプロダクト(製品)を作れれば、自分の思いや発想を仕事にできる。プログラミングは一見難解に思えますが、それは今、普通に学べる技術になってきました。若い人の「仕事力」の一つはプログラミング技術だと思います。
私は、プログラミング言語が、英語のように皆が使いこなせるものになるべきだと考えています。コンピューターが世界中でなくてはならない物になった以上、自動車の運転のように使いこなせることが大切です。素晴らしい仕事のアイデアを机上の空論にしない、そして社会の需要をサービスにできる。まだ、誰もやったことのない仕事をやりたいと奮い立った時、その機動力をもたらしてくれるのは、やはりプログラミングだと思うのです。
フェイスブックの10億人を超える利用者には及ばないけれど、私も自分で作ったコンテンツを人が使ってくれて、その人たちの人生を豊かにしているんだと考えると、イノベーションを起こして人類を前進させているような気持ちです。本当にワクワクします。ほんの少し前までは初期投資に多額の費用がかかりましたが、時代は全く変わり、1台のパソコンとプログラミングの技で事業ができます。
時代は動いています。自分には何が向いているか、力まず自然に経験を積んでいけば、あなたはやりたい仕事に必ずたどり着く。それは、新しい発想である可能性も高いですよね。(談)
出典:2015年2月15日 朝日新聞東京本社セット版 求人案内面