「目の前の壁に逃げずに向き合え」
玉塚 元一が語る仕事―4
仕事で社会の課題に挑む
社会の変化に目を凝らせ
私がローソンに入社した一番の理由は、企業理念である「私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします。」に共感したからです。
仕事はお客様の負を解決するもの。つまりマチ、社会に貢献するものでなければならない。「企業は社会の公器であれ」とよく言われますが、企業で働く者は、社会から求められているものを具現化することでお客様のご支持を得ることができるのです。
例えば、子育てをしながら働く女性が増えています。お母さんたちの一日は時間との闘いで、仕事の責任を果たしつつ、子どもや家族の食事、家事、健康の管理まで担うのは大変です。そこでコンビニでは、夕食に使える出来立ての惣菜(そうざい)やカット野菜など、その負担を少しでも軽くする商品を開発し提供しています。
国の借金が1千兆円を超える中で、公共サービスのコストをどう削減していくかも大きな社会的課題です。コンビニのマルチメディア端末を使えば、住民票などの発行業務を代行することが可能で、公的機関や市町村の窓口業務にかかる経費を削減することができるでしょう。
また、高齢化社会では介護や健康に関する課題もたくさんあります。そのため当社では、薬の販売を行う店舗を増やして、介護の不安や悩みを少しでも解決するお手伝いをできないだろうかと考え、ケア(介護)拠点併設型店舗を今年オープンさせました。
そしてコンビニは、24時間365日明かりがついています。当社で言えば全国に約1万2千店舗。緊急時に助けを求めてこられる方の「セーフティステーション」の役割も担っているのです。地震などの災害時でもできる限り営業を継続し、お客様に生活必需品をご提供し続けます。
このように、コンビニは社会の生活基盤、インフラを支える機能を備えていると思います。社会の変化を常に感じ、求められているものは何か、できることは何かということについて、仮説を立て、スピードを上げて実行し、検証して改善し続けることです。
一人ひとりが経営視点を持つ
こんな風にお客様のご支持を得て、成長し続けていくためには、あなた自身が経営者のように考えて実行する、という視点が欠かせないと思います。
組織は硬直化しやすく、現場の情報がタイムリーに上がってこないとか、コミュニケーションが上からの一方通行になりがちだとかといったことがありますが、強いトップダウンと強いボトムアップの強烈なぶつかり合いが必要なのです。それが、お客様のためでもあります。
社会の変化は、店舗で直接お客様と接している現場が一番よく分かっています。だからこそ、その気づきや提案をきちんと伝え切り、一人ひとりがつかんだ現場の改善を徹底して考えることが必要だと思います。
組織のリーダーには、それを全体に照らし合わせた上で、何をすべきか、どういう方向にかじを切るべきかということについてビジョンを明示する役割があります。働く一人ひとりが「やらねばならぬこと」をつかみ、提案するという経営視点を持ち始めれば、それがやがてその人の確かな仕事力になっていくと思います。(談)
出典:2015年9月27日 朝日新聞東京本社セット版 求人案内面