「直感を掘り下げよう」
横川 正紀が語る仕事--4
ピンチは次の視点をくれる
体験した全てが自分を支える
建築学科を出てインテリア販売の企業に就職。約3年後、その会社の経営が行き詰まり、僕はビジネスパートナーを得てインテリア事業を始め、やがて暮らしには「食」が必要だとカフェを併設。その後、ニューヨークの食材品店「ディーン&デルーカ」を日本でやらないかと思わぬ話を受け、2003年に苦労してオープンにこぎつけました。売り上げが伸び悩んだ時には、創業者から「人々の暮らしに根差した食を」と本質を教えられ、立ち直って現在に至ります。
本質を追求するには、「何があってもこの理由の部分だけは動かさない」という軸を持ち続ける重要さに加えて、今、人々に宿っている気持ちを探り当てるということも欠かせません。それはただリサーチする、データを集めるといった調査などではなく、自分の中で感覚的に答えを見つけ出していくプロセスなんですね。例えば新しいサービスを思いついた時、周囲の意見を聞いて歩く。直感を確かめ、掘り下げ、育てていくわけです。
キャリアを積むために、無理なことを実践しなければならないとは必ずしも思いません。だけど僕は、自分の体験から、うちのメンバーに「やったことがないことでも、できるかも知れないよ」と言います。初めから自分の可能性を限定せず、単純に道を決め過ぎない方がいい。時に遠回りしても、できるだけ実りのある果実を手にし、その経験を仕事や人生の厚みにしていって欲しいのです。
ただ、そうやって様々な経験をしながらも、自分で選択して全ては自分の責任だと知る歩みが大切ではないでしょうか。人に笑われようが失敗しようがうまくいかないのは悔しいけれど、そこにはたっぷりと学びがあります。もっと言えば、自分が諦めるまで負けにはなりません。自分で「終わり」と言わなければ、たとえ別の選択をしてもただ方向転換しただけですから(笑)。必ず成功するという確実なものや、頭で計画を立ててそれを守ることに一生懸命になるのではなく、柔軟に感じて行動すれば、人生の収穫は増えていくと思います。
仕事を作り出していこう
今もコロナの影響で私たちが想像もしなかった暮らしが続いています。その中であなたは、そしてあなたのお客さんはどんなことを感じているでしょうか。リモートワークが定着し、これからは東京一極集中ではないだろうし、社会のデジタル環境ももっと進むでしょう。
変化していく暮らしの中で何が淘汰(とうた)され、それによって変わる新しい豊かさとは何か。逆に変わらないものは何か。今まで皆が不便だったことはどう変えられるだろうか。こうした変化の時、固定観念を持たない若い人たちこそ、新しい可能性に気づくことも多いでしょう。「やってみたい」という気持ちを人に話すことで、共感を集めながら前に進み確信に変わっていくこともあるはずです。
僕もずっとそうやって、応援してくださる人に話をぶつけてきました。これは大人になった今でも変わりませんし、相談される立場になるとうれしくもあります。「また来たのか」と言われても物おじしないで、胸を借りるつもりで、世代を超えてとことんぶつかってみてください。(談)