就職活動

シューカツ見聞録

山崎さん

静岡県出身。海外旅行にグルメ、スポーツなど好奇心は人一倍旺盛で、小さな体で休む間もなくあちこちへ駆け回る「活動派」。一見、おとなしそうな感じがするため、「ギャップがある」とよく言われるという。

第7章 伝えるという仕事(下)

「好奇心と謙虚さと」

就活のエントリーシートには、自分のことを「欲張りな戦略家」と書いた。

かっこよすぎるように思われるかもしれないが、あながちウソではない。勉強でもバイトでも、やりたいことにどんどん手を伸ばした。しかも、情報のアンテナを張り巡らし、人脈を頼り、お金はかけずに。

その成果の一つが海外旅行。旅費免除の特典がついた研修プログラムを見つけて、何と3回も出かけた。高校1年の時に中国・北京にある精華大学に1週間、大学1年にはフィリピンにこれまた1週間。首都マニラの世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局を見学させてもらったり、ゴミが大量に不法投棄され、山のように積み上がっている「スモーキーマウンテン」に立ち寄ったりした。煙が立ち上ることから、そう呼ばれるのだが、金になりそうなゴミを漁りにスラム街の子どもたちがやってくる。日本ではまず、お目にかかれない光景である。

就職先が決まってからになるが、大学4年の夏にもフィンランドへ1カ月間、ホームステイしてきた。欧州から行きたい1カ国を選べる贅沢さで、教育学を専攻する者として、教育の充実しているこの国に決めた。

何でも知りたい、体験したいという好奇心が、自分をそう仕向けた。では、なぜ、そんなに好奇心が旺盛なのだろうか? それは子どものころの環境が影響していると思う。

多様な文化に触れた幼少期

通っていた保育園には、さまざまな理由で親と離れて育てられている子どもの施設が併設されており、そんな子どもの親が音楽会の時だけ訪ねてきた。すると、子どもがうれしさの余り、大泣きして、演奏自体が台無しになることがあった。でも、自分の親からは、どういう家庭環境の子どもたちなのかという話は一切聞かされなかった。だから、なぜ、そんなに泣くんだろうと不思議だったが、何の偏見もなく一緒に遊ぶなどしていた。

地元の静岡県浜松市は工場で働く外国人労働者も多い。保育園や小学校にはブラジル人とベトナム人が2~3人ずついた。ブラジル人の子どもたちはサッカーが大好きで、W杯でブラジルの試合があった次の日にはよく欠席したものだった。当時は、そんな子どもたちとぶつかることもあったが、それも今ではいい思い出だ。フェイスブックでつながっている同級生もいる。当時は疑問に思ったことも大きくなるにつれ、解消した。

そんな言葉や生活習慣が違う子どもたちに囲まれて過ごしたことが、自分とは違う文化への興味や、その文化を受け入れる素養を身につけていくことになったのではないかと思う。

両親にいろんな場所へ連れていってもらえたことも、自分の血となり肉となっている。

理科の先生でもあった両親自身が好きだったせいでもあるが、博物館や科学館を訪ねたほか、小学校の夏休みの自由研究では、父親に付き添ってもらってもらって大学に通い、フリカツメガエルの解剖をしたこともある。海外旅行にも行った。自分が学んだ教育学に基づいて言えば、子ども時代にこうした知的な施設に触れあうことが学力向上に貢献することがデータ的に証明されている。こんな幼少のころのバックグラウンドが、人よりも少しは「アイデアマン」という自負にもつながっているのだと思う。

挫折を味わった中学時代

ただ、人一倍、いろんなことを見知っていることを鼻にかけるようにはならなかった。それは、中学に入って、がーんと頭をぶん殴られるようなことが起きたせいでもある。

国立大教育学部の付属中に進学して間もない2学期のテストの点数が、平均点の半分以下だったのだ。追試を命じられ、テストを返してもらった日、泣きながら帰宅した記憶がある。両親は何も言わなかったが、小学生の時は優等生だと思っていた自分がそれほど大したことないと分かったことは、謙虚さを身につけるうえでよかった。

その反面、人の言うことに影響されやすいところがある。知識がとても豊富な人や向上心にあふれた人を前にすると、すぐ「尊敬しちゃう」と言ってしまう。好奇心が強い自分はつい、いろんなことに手を出して「広く浅く」というタイプなので、一つでも深いものを持っている人がまぶしく見えるのだ。もっと、自信を持たなくちゃと思う。

新聞社は今、新聞の部数が右肩下がりの一方、新しい媒体としてデジタル版の普及が大きな課題だ。就活では、日々の記事を読者本位で自由自在に保存・管理できるデジタルの機能やサービスを提案した。教育学を学んだ者として、「NIE(Newspaper in Education、教育に新聞を)」という学習プロジェクトをもっと展開し、新聞に詰まっている知識や情報が教育の現場に採り入れられれば、日本の子どもたちの学力向上にも新聞の普及にもつながる「ウィンウィンの関係」が築けるはずと信じている。

まだ、入社したばかり。謙虚に学び、自信を築き、アイデアをもっと磨いて、新聞社という「伝える仕事」で貢献できるよう頑張りたいと思う。

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