首都圏のように全国各地から学生が集まってくると、在籍する大学はいざ知らず、高校までの学歴から人物を推し量るのは、簡単ではない。しかし、地方だと、名門とされる公立高校出身者がもてはやされ、それだけで信頼度が増すなど、事情が変わってくる。しかもそれが、就活でのいわゆる「フィルター」ということになると、話はあまり穏やかではないが……。
都内の大学生Aさんは、昨年のはじめ、どんな企業にエントリーしようかと思い巡らすなかで、Uターン就職も選択肢に加えた。首都圏の企業を中心に受ける計画だが、もし、どこも相手にしてもらえなければ、高校時代まで過ごし、気の合う仲間も多くいる地元に帰るのも悪くないと思っていた。そこで、B社に白羽の矢を立てた。
B社では会社説明会のあと、エントリーシートを直接、人事担当者が受け取っていた。その後、リクルーターと言われる社員らが会社外の喫茶店などに就活生を非公式に呼び、第一印象や性格、簡単な質問に対する受け答えをみたうえで、採用基準に合った学生に本番の面接に臨んでもらう方式を採っているらしい。Aさんもエントリーシートには、しっかりとB社が第一志望で、地元に帰って地域貢献をしたいなどと志望動機も書き込んで、リクルーターから連絡が来る日を待った。
ところが、他の企業の面接日程が次々と入るのに、待てども待てども電話がかかってこない。何かまずいことでも書いたかなと、あれやこれや考えるうち、はたと気づいた。
実はAさん、公立高校の受験に失敗し、受け皿となる私立高校へと進学した。その高校はどちらかというと大学進学率もさほど高くなく、周囲からはいわゆる勉強の出来る生徒が通っているとは思われていなかったと、Aさんはいう。
別の地方出身でUターン就職を考えている友人の場合、勉学面で地域で1、2を争うような高校出身だったが、地元企業がわずか1~2回、面接しただけで、「青田買い」をささやかれることがあったらしい。一方、B社では、Aさんの大学と同じレベルとみられる大学の就活生で、偏差値の高い公立高校出身者はOBのリクルーターから次々と声がかかっていたようだ。それに対し、Aさんの高校出身のリクルーターがB社にいるかどうかも定かではない。
いわゆる「大学フィルター」ではなさそうだ。恐らく「高校フィルター」なのだろう。結果的に首都圏で就職が決まったAさん。あまちゃんが「地元に帰ろう」と簡単に言うほど、地方も甘くないなと実感している。
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