様々な体験のかけらは結びついて力になる
タンゴダンサーの傍ら、間々田さんは今、顔のリフトアップを目指す「顔ヨガ」の講師として活躍している。
幼い頃からダンスが好きだった。でも若い頃はプロになるほどの腕前ではなく、学校卒業後は住宅メーカーに就職。ところが通っていたダンススクールから、豪華客船のエンターテインメントスタッフをしてみないかという話が入る。
「1週間だけ試しに乗船してみたら、いきなり中国のお化けに変装しろと言われ、何それ楽しいと(笑)」。乗客にダンスや手芸を教えたり、夜のショーの司会をしたりする仕事で、人の喜ぶ顔を見るのが好きな間々田さんは自分にぴったりとすぐに転職した。
「お客様をどうやって楽しませようかなって毎日考え、オフの時も参考になる講座があれば勉強に行っていました」
そして4年後に退職。メキシコに移住し、スペイン語を学んでガイドになった。帰国後は憧れだったアルゼンチンタンゴを習い夢中に。30代で世界選手権を目指し、ダンススタジオに転職して努力を重ね、40歳前に優勝を果たした。
本来はそこからダンスの仕事が活発になるはずが、不運にもパートナーが故郷に戻り、予定も心も真っ白に。「気づいたら、ダンスに打ち込み過ぎて心身共にぼろぼろになっていました。顔を見たらひどい状態で、何とかしなきゃと。こうして出会ったのが顔ヨガの講座でした」
訓練すると、驚くほど若い顔を取り戻した。これも人に喜んでもらえること。やがて間々田さんは顔ヨガを教える講師となり、ダンスとの相乗効果で活動は広がっていった。
「今講師ができているのも客船時代にいろいろなことを学んだからですし、タンゴダンサーになれたのもスペイン語の習得で外国人講師とスムーズにコ ミュニケーションを取れたから。後先考えずに行動する自分だったけれど、そのつど懸命に取り組んでいれば次のステップに生かされていくんですね」
様々な体験のかけらたちは、結びついて力となり実となる。
(3月9日掲載、文:田中亜紀子・写真:南條良明)
出典:2015年3月9日 朝日新聞東京本社セット版 求人案内面