複数手掛ける『複業』で自分の能力を開拓しよう
エバンジェリスト。それは製品や技術、サービスの魅力を伝えるプレゼンテーションのプロのこと。西脇さんはIT業界の中でその先駆者的存在だ。
エンジニアだった20代。自分で作ったシステムを人前で説明したところ、うまいかもと自身でも思え、実際、反応も悪くなかったという。
このスキルをもっと磨きたい、できれば当時黎明(れいめい)期にあったインターネット分野で力を発揮したいと考え、外資系企業へ転職。そこで数多くのイベントやセミナーを経験したことが、エバンジェリストとしての素地となった。
「仕様ではなく、体験を説明する。つまり、聞いた人が疑似体験した感覚になり、ワクワクして自分が買うだけでなく誰か他の人にも薦めたくなるようなプレゼンが理想。そのためには情報を整理し、情熱と愛情を持って伝えることが大切だとここで学びました」
6年前から現在の会社へ。社長室エバンジェリストという肩書はおそらく日本で初めてだろうと西脇さんは語る。「単体の製品ではなく、会社全体の魅力を多くの人に伝えられる職種が必要ではないかと社長に提案し、新たに作ってもらったポジションです」
組織の中で、どこなら自分は頑張れるのか、力を発揮できるのかを考える。「すると必然的に活躍すべき場がわかるでしょう。今は職種に固執せず、それぞれがキャリアパスを創出する時代であっていいと思う」
そこまでの見極めが難しい若手には、複数の業務を掛け持ちする「複業」を勧める。「垣根を飛び越えてあれこれ挑戦することで、案外大きな力を与えてもらえることがあります。その相乗効果で、基軸となる仕事のスキルも強度を増すはず」
ただ、西脇さんでも時折嫌な仕事が巡ってきて憂鬱(ゆううつ)になることがあるという。しかしそんな時こそ一生懸命やる。やれば人が喜んでくれ、結果にもつながる。「だからまた夢中になり、求めてしまう。仕事にはそんな不思議な魔力がありますね」
(3月2日掲載、文:井上理江・写真:南條良明)
出典:2015年3月2日 朝日新聞東京本社セット版 求人案内面