挑戦を重ねることで、行く道が開かれていく
地球上の様々な世界一を収集している「ギネス世界記録」。その調査や認定、情報発信を行う、英国に本社を置く会社の日本支社で、小川さんは代表を務めている。
世界を股にかけた仕事にふさわしく、小川さんは中学生になるまで欧米の各地で育った。ただ、言葉や文化が目まぐるしく変わり、周囲との違和感からアイデンティティーの喪失に陥ることもあったという。5歳の時には人種差別的な経験もしたそうだ。
「その時、大人になったら日本と日本人のすばらしさを世界に広めたいと強く思い、バネにしてきました。帰国後も人と異なることで悩みましたが、『誰にでも輝ける場所がある』と学校で教えられ、頑張ればきっと自分の道は見つかると心の支えにしたのです」
多様とも言える自らの背景を活かせる仕事がしたい。そう考え、百貨店やメーカー、広告会社、翻訳業、海外ブランドの輸入業など様々な職業を経験。ど んな環境でもそれなりに仕事はこなせたが、そこが自分にふさわしい職場なのか常に迷いがあったという。そして30代で現在の会社を紹介される。
「多様な個性に光を当ててヒーローにするという理念は、まさに私が求めていたもの。もやっとしていた自分の心に響き、ダイヤの原石を見つけたような気持ちになりました」
英国本社の認定員として各地を回り、日本支社の立ち上げに参画。その翌年、東日本大震災が起こった。日本を元気づけたいとの思いで、町おこしに「世界一」を利用してもらえるよう、埋もれていた地域の風習や文化の発掘にも力を入れている。
「挑戦者は本当に努力家です。ギネス世界記録は1度で認定されないことも多いですが、頑張った体験は忘れられるものではないし、絶対次の歩みへとつ ながるはずです。失敗を恐れず何度でも挑戦することにこそ価値がある。私自身、仕事を模索していた時期に挑戦を重ねたからこそ今があると思っています」
挑み続ける熱意が、財産となり、行く道を開いていく。
(4月6日掲載、文:田中亜紀子・写真:南條良明)
出典:2015年4月6日 朝日新聞東京本社セット版 求人案内面