人の役に立てるんだって思うと、挑んでいける
日本人初の国際山岳医である大城さんは、病院勤務をしながら、登山者の安全を守る山岳医として情熱を持って様々な活動に取り組んでいる。
自身も生粋の山好き。北米最高峰のマッキンリー山をはじめ世界の名峰の登頂経験を持ち、今も空いた時間は登山トレーニングを欠かさない。
そんな大城さんが医師を目指したのは「人の役に立ちたい」という思いからだ。全身を診られる医師になりたいと、呼吸器、血液、免疫、循環器と意欲的に修業を重ね、心臓血管専門病院へ。やがて40代を前にし、やりがいを感じつつも次のステップを考えるようになる。そんな時ヒマラヤに登る機会があり、そこで初めて高山病患者を診ることになった。
「でもあまり役に立てず悔いが残りました。ぜひ山岳医療を学びたいと思い、英国で講座を見つけたのですが、受講するなら勤務は続けられない。生活のことなど気がかりはありましたが、将来の心配は何をやっていてもつきものだから、前向きに、やりたいことをやろうと決めました」
約1年かけて山岳医の資格を取得。日本では前例がなく、どう活動していいのか戸惑うこともあったが、北海道警察の救助隊を長く務める人物と知り合い、道が開けた。
「救助には医学の知識が必要だと協力を求めてくれたんです。とにかく救助隊の方は熱心でアイデアの宝庫。例えば低体温症の医学的なアドバイスをすると、体温を上げる方法を現場の状況と持ち物で応用して対応するなど、すごく勉強になっています」
現在の活動は救助隊のパトロールへの同行、訓練での指導、そして遭難時には現場に電話で指示を送る。特に注力しているのは遭難を減らすための登山者向け外来や講習だ。事前の体調チェック、低体温症や高山病の予防知識などを全国で啓蒙(けいもう)している。
「この仕事は前例がない半面、自分で新しい道を切り拓(ひら)き、挑んでいけます。人の役に立つことなら必ず正しい道につながるはず。若い頃にあれこれと学びましたが、それが今すべて生きています。好きな山を背景に、人の役に立てる仕事ができて本当に幸せです」
(7月20日掲載、文:田中亜紀子・写真:南條良明)