あの人とこんな話

就職活動

(株)アイビーレコード 代表取締役社長
酒井 善貴さん

就職活動

常識や定説に惑わされず、自分の得意技で勝負する

CDが売れないと言われて久しい中、過去のヒット曲を集めたコンピレーションCD(コンピ)を数々制作し、約530万枚という驚異的なセールスを記録。更に、TSUTAYA限定で買える999円のアーティストベスト盤CD企画を仕掛けてミリオンヒットさせるなど、常に音楽市場に新風を送り続けている。

そんな酒井さんだが、大学卒業後はOA機器やアパレルのメーカーで営業に携わっていたという。「その仕事を通して、商品力と数字を分析した上で練ったマーケティング戦略が、モノを売る上でいかに大事かを学びました。それが今の僕の基礎になっています」

やがて、もともと好きだった音楽の仕事に関わりたくて27歳でレコード会社へ転職。入社希望者が多く難関だったが、「前職をやり遂げたという達成感があったので、面接でも自信を持って自分の言葉で話せ、その結果、採用となりました」。

この会社で、コンピを次々とヒットさせていく。「会社の都合に惑わされず、とにかくお客さんを喜ばせるものを作ることに徹しました。それと、僕は常識や定説をまず疑う。例えば邦楽のコンピも絶対ヒットしないと言われていた。でも、それに縛られずに商品コンセプトを練り上げ、ターゲットを明確にした販売戦略なら絶対売れると信じて取り組みました」

結果、ミリオンセラーに。邦楽コンピがヒットした前例がないからやらないではなく、それならその前例を作ってやろう。そんな風に物事を逆から捉え、考え抜くと成功につながると思うと語る。

そしてまた、違和感があると絶対にダメだと考える。確信がないまま勝負しようとしても前に進まないし、うまくいかないからだという。「横綱相撲っていうのがありますが、あれは圧倒的な強さを見せつけて勝つというより、自分の得意技を武器にして勝つことだと思う。上手投げが得意なら、どうすればその技の態勢にするかを考えるわけです。僕も同じ。得意技で勝負するから負けない(笑)」

現在は自ら立ち上げたレコード会社でCD付きマガジンを企画、その販売に力を注ぐ。「ベテランアーティストと、究極とも言えるベストアルバムを制作し、書店でのCD販売に挑みます。間違いなくお客さんに喜んでもらえるはず。期待してほしいです」

(井上理江=文 南條良明=写真)

さかい・よしき ●1963年山口県生まれ。駒澤大学卒業。(株)ワーナーミュージック・ジャパンで、ヒットCD「R35」を含むコンピレーションアルバムを約530万枚売り上げる。2009年カルチュア・コンビニエンス・クラブ(株)(CCC)へ。レンタルショップ「TSUTAYA」のプライベートブランドCD「ザ・ベストバリュー999」を仕掛けてヒット。11年にCCCグループ内でレコード会社を立ち上げ現職に就く。3月25日(金)にCD付きマガジン「究極のベスト~日本のレジェンドアーティスト~」を発売予定。第1弾は、かぐや姫、風、イルカ。
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